Datachainがミドルウェア「LCP」発表
Datachain(データチェーン)が、ブロックチェーンのインターオペラビリティ(相互運用性)やクロスチェーンブリッジの現状課題解決のためのミドルウェア「LCP(Light Client Proxy)」を7月29日発表した。
「LCP」は、クロスチェーンブリッジにおいて最も安全なクロスチェーン手法とされる「Light Client方式」の課題である「拡張性の低さと検証コストの高さ」をTEE(Trusted Execution Environment)を用いたProxyにより解決したソリューションとのこと。
なおTEEとは、ICカードのセキュリティ等の標準技術の策定を行う非営利組織GlobalPlatformが定める技術仕様のひとつで、プロセッサーを通常の実行環境と安全な実行環境に分割することによって、アプリケーションの安全な実行環境を物理的に確保するセキュリティ技術である。またProxyとは、対象チェーンの検証を代替する方式だ。
データチェーンによるとクロスチェーンブリッジには、トークンのアトミックスワップに特化した「HTLC方式」とチェーン外の単一もしくは複数のPartyにより検証する「External Validators方式」、そして互いのチェーンのコンセンサスを検証する「Light Client方式」の3つがあるという。
なかでも二つ目の「External Validators方式」は多くのクロスチェーンブリッジで採用されているが、双方のチェーンの他に新たなトラストを必要とする同方式は、セキュリティの穴となりやすくハッキングの対象になりやすいという。
今回の取り組みの対象となっている「Light Client方式」については、双方のチェーン以外に新たなトラストを必要としないため、最も安全なクロスチェーン手法であるという。しかし、お互いのチェーンでコンセンサスを検証し合うという性質により、新たなチェーンと接続する際には相手のチェーンに対応した「Light Client」の実装が必要となり、拡張が容易でないという課題があるとのこと。
またEVM系チェーンにおいて検証処理の実行コストの高さ(Gasコスト)がしばしば問題になるように、検証コストの高さについても課題が残っているとのことだ。
そこでデータチェーンではこの課題に対し、「LCP」の開発を進めている。「LCP」では、検証対象のチェーンに対して、Proxyが検証側チェーンの代わりに「Light Client」検証を行い、その妥当性を低コストで検証可能にするProofを生成する仕組みを取っているとのことだ。
そのため互いの相手チェーンに対応した「Light Client」を新たに実装することが不要となることで、新たなチェーンへの対応が容易となり「拡張性の問題」が解決できるという。
そして「LCP」を用いるとオンチェーンでの「Light Client検証」が不要となり、代わりにEnclave内で生成された検証結果のCommitmentに対する1つの署名の検証のみ行うため、オンチェーンでの署名検証コストの削減および検証トランザクションのサイズを削減することにより、「効率的な検証」を実現するとのことだ。
なお「LCP」を用いたクロスチェーンアプリケーション構築のためのチェーン間通信プロトコルには、Cosmos(コスモス)のIBC(Interchain FoundationおよびCosmosプロジェクトによって策定が進んでいる、ブロックチェーン同士の相互運用性を担保するための仕様標準)を採用するとのことだ。
2022年の第3四半期に、初期のブリッジを構築するターゲットネットワーク(Ethereum to X を想定)を確定させ初期設計を進めるとのこと。2022年の第4四半期には、「LCP」を用いたクロスチェーンブリッジアプリケーションをテストネットでリリース予定としている。
そして2023年第1四半期には、同アプリケーションのメインネットローンチを予定しているとのことだ。
データチェーンはブロックチェーンのインターオペラビリティ(相互運用性)について積極的に取り組む企業だ。
データチェーンが開発を主導するHyperledger Labsプロジェクト「YUI」では、様々なブロックチェーン基盤においてIBCによるインターオペラビリティを実現するために「IBC Module」などの開発や、特定の中央集権型システムに依存せずに、異なるブロックチェーンに分散したデータの参照や機能の実行を行う「Cross-chain smart contract」の開発を可能にするフレームワーク「Cross Framework」を開発している
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参考:Datachain