暗号資産レンディングは証券か? 米企業ら、利息付き商品への規制明確化を要望 

暗号資産レンディングは証券か? 米企業ら、利息付き商品への規制明確化を要望 

米国の暗号資産企業らは、いわるゆ暗号資産レンディングのような顧客が保有する暗号資産を取引する代わりにその資産の利息を得ることができる商品に関する米国規制について、依然として不明点が多いと伝えた。

不明点が多い状況は、利息付商品を提供する企業が、連邦規制当局と州政府から1億ドルの罰金を課されて数ヶ月経った後でも変わっていない。

今年2月、ニュージャージー州の暗号資産企業ブロックファイ(BlockFi)は、同社の利息付き商品が証券として適格であり、登録されるべきだったとして、米国証券取引委員会と州当局との間で1億ドルの支払いに合意し、和解を成立させた。

しかし、このような商品を提供する多くの暗号資産企業は、今月、規制が依然として不明確で、人気が高まり、多くの企業が昨年中に発売した商品をいつ規制当局に登録すべきかが分からないようだ。

そして実際に多くの企業は、SECへの登録に時間がかかり、継続的な情報開示と報告義務を伴う利息付商品を回避するために、その構造を工夫してきた。

暗号資産業界の監視を強化する同機関と、暗号資産企業は今後、衝突する可能性がある。

ブロックファイは利息付きの代替商品を提供する予定であり、その際にSECに登録すると述べている。そして同社とSECは、この取引は他の企業にとってロードマップとなるはずだと説明した。

ブロックファイの広報担当者は声明で「SECとの解決は、ブロックファイだけでなく暗号資産エコシステム全体にとって、暗号資産関連の金融サービスの長期的なマスアダプションに必要な規制の明確化を実現するための重要なステップです」と伝えている。

業界幹部は、SECは強制執行で境界線を決めるのではなく何が証券を構成するのかを明確に定義すべきだ、と伝えている。

弁護士事務所Goodwinのパートナーで、最近退任したSEC委員エラッド・ロイスマン(Elad Roisman)氏の元顧問ニコラス・ロサード(Nicholas Losurdo)氏は「特定の企業の暗号資産プロダクトのSEC登録は、企業により状況が異なるため、他企業に方向性を示すものとは限りません。より良い方法は、SECが実際に何を期待しているかという明確なメッセージを明示することでしょう」と説明している。

証券は商品などの他の資産とは異なり、厳しく規制されており、投資家に潜在的なリスクを知らせるために詳細な情報開示が必要とされている。

1933年証券法では証券の定義が示されているが、多くの専門家は投資商品が証券に該当するかどうかを判断のために、2つの米国最高裁の判例に依拠している。

SECのゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は「ほとんどの暗号資産は、既存の法律で定義されているように証券です」と説明している。そして業界関係者の多くは、法律の他の解釈を引用して、反対している。

暗号資産取引所であるジェミナイ(Gemini)は、ニューヨーク州金融サービス局によって承認された利息付き暗号資産商品を提供している。

ジェミナイ(Gemini)の最高執行責任者ノア・パールマン(Noah Perlman)氏は、「ニューヨーク金融サービス局の承認はブロックファイの商品と区別され、和解がそれらに影響を及ぼさないことを意味しています」と伝えている。

さらに同氏は「規制当局と協力したい業界がある一方で、規制当局は諮問的な意見を述べる習慣がありません」とも述べた。

ブロックファイに商品提供の停止を命じた州の規制当局は、9月に暗号資産会社セルシウスネットワーク(Celsius Network)にも同様の命令を出し、同社のプロダクト「Celsius Earn」を未登録証券と分類した。

同社CEOアレックス・マシンスキー(Alex Mashinsky)氏は、セルシウスがプロダクトを登録するかどうかについては言及しなかったが、今月初めにロイターに対し「セルシウスはブロックファイよりもはるかに保守的な会社であるため、SECが訴えることを懸念していません」と伝えている。

そして同氏は「ただブロックファイはその商品を通して誰の迷惑もかけてはいません」とも述べた。

このインタビュー以降、セルシウスは米国の個人投資家からの「Celsius Earn」の口座への新たな取引を受け付けなくなった。

ネルソンマリンズ(Nelson Mullins)のリチャード・レビン(Richard Levin)氏は「いくつかの暗号資産企業が、SEC登録規則で明確に除外されるように、提供サービスを制限することを検討しています」と説明した。

例えば、サークルインターネットフィナンシャル(Circle Internet Financial)では、利息付き商品は機関投資家にのみに提供している。

サークルの最高戦略責任者ダンテ・ディスパルテ(Dante Disparte)氏は「利息付き商品が消費者に配当を支払う場合、証券と同様に扱われる可能性が非常に高いでしょう。サークルイールドの組成にあたり、この点に規制当局と合意しました」と述べた。

米国最大の暗号資産取引所であるコインベース(Coinbase)は、9月にSECが訴訟を起こすと脅した後、暗号資産レンディング商品を発売する計画を破棄した。暗号資産企業の中には、SECの厳しい姿勢を踏まえ、慎重になっているとの声も聞かれた。

例えば「暗号資産取引所のクラーケン(Kraken)は利息付きの商品を提供したいが、SECがガイダンスを示していないため同社は慎重になっています」と同社の最高法務責任者マルコ・サントー(Marco Santor)氏は述べている。

ニューヨークの暗号資産ライセンスを持つ取引所であるビットスタンプ(Bitstamp)は「米国の機関投資家に利息付き商品を提供したいと考えていますが、ニューヨークの規制当局から追加のライセンスと承認が必要かもしれないと考えています」と説明している。

Bitstamp USAのCEOボビー・ザゴッタ(Bobby Zagotta)氏は「米国の一部の暗号資産企業は、融資やクレジット型提供の管理方法で大きなトラブルに巻き込まれました。私たちはそうならないように、精進します」と伝えている。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Hannah Lang in Washington; editing by Michelle Price and David Gregorio)
翻訳:竹田匡宏(あたらしい経済)
Credit:ロイター

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

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