日銀理事の内田眞一氏がCBDC発行について言及
日本銀行の理事である内田眞一氏が、4月13日に開催された「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会(第3回)」の開会挨拶にて、CBDC(中央銀行デジタル通貨)発行について見解を述べた。
内田氏は日銀がCBDCを発行するかについて「決定していない」とし、それが日銀や金融界だけで決められることではなく国民的な判断になると話した。
ただし「(CBDCを)発行するとすればどのようなデザインになるか」を考えていくことが、「発行すべきかどうか」の判断をするうえで有益とし、大きく2点のポイントを説明した。
1点目はCBDCが「中央銀行が提供する公共財としてどういうものがふさわしいか」、2点目は「極めて信頼性の高いCBDCエコシステムを、どう作っていくか」と内田氏は述べている。
内田氏はCBDCの具体的なエコシステムの姿として、中央銀行が公共財としてCBDCを発行したうえで「民間事業者がCBDCの上に様々なサービスを上乗せして利用者に提供する」あるいは「CBDCが民間事業者の構築した様々な基盤の上やそれらの間を流通する」という構造が想定されるとした。
この想定通りにできれば、「相互運用性を確保しながら、非競争領域における民間事業者の重複投資を回避するとともに、残りの競争領域において、多数の民間事業者が創意工夫を競う環境を整えられる」と説明している。
これについては、民間事業者が発行するステーブルコインに関する問題が前提にある。
日本において民間ステーブルコインの発行者は顧客から預かった資金について、安全かつ流動性の高い資産に運用したり、供託などによる厳格な利用者保護を求める方針となっていることから、発行者はデジタル決済そのものでは儲からず、「プラットフォーマーとしてのデータ利用や広告での収入」や「顧客を囲い込んで加盟店手数料」を取るということが想定され、このことが決済システム全体としてみた場合、細切れ化(フラグメンテーション)や独占といった問題が深刻になっていく可能性がある、として内田氏はCBDCのエコシステムについて語った格好だ。
そして2点目の「極めて信頼性の高いCBDCエコシステム」について内田氏は「(CBDCは)国民全てがユーザーとなるわけですから、民間主体がそれぞれ提供するデジタル決済手段に比べて、サイバーアタックの対象になりやすくなります。システムトラブルなどによって一時停止すれば、社会への影響は格段に大きなものになるということも、十分に認識する必要がある」と説明している。
内田氏は挨拶の最後に「CBDCがあるにせよ、ないにせよ、日本独自のシステム、ガラパゴスになることは避けましょう。いくら器用で工夫に満ちたものでも、世界の標準的なやり方とフィットしない仕組みは、デジタルの世界では決定的なディスアドバンテージになります」とし、
「日本銀行は(各国)中央銀行間の協力関係を大事にしながら、世界のトレンドを押さえ、その形成にも貢献していこうと考えています。同時に、世界の流れによっては、私共の仕事も、皆様のビジネスも、これまでの延長線上で済まなくなる可能性は相応にあり、そうした覚悟を持って、進めていかなければならないテーマなのだろうと思っています」と締めくくっている。
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参考:日銀
デザイン:一本寿和
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