米レモネードがDAOを設立し、 アフリカの農家を気候変動から保護へ
米インシュアテック企業のLemonade(レモネード)が、 アフリカの農家を気候変動から保護することを目的としたDAO(自律分散型組織)「Lemonade Crypto Climate Coalition(レモネード・クリプト・クライメイト・コアリション)」を3月22日に設立したことが分かった。
アフリカには約3億人の小規模農家があり、その大部分が洪水や干ばつなどの気候リスクから経済的に保護されていない。これに対し「Lemonade Crypto Climate Coalition」では、ブロックチェーンを活用したパラメトリック保険を提供する予定だ。
なおパラメトリック保険とは、損害と因果関係のある指標が契約時の条件を満たした際に、あらかじめ決められていた保険金が支払われる仕組みの保険である。
今回レモネードは「Lemonade Crypto Climate Coalition」設立にあたり、非営利団体のLemonadeFoundation(レモネード財団)を設立したとのこと。
このDAOの創設メンバーにはレモネード財団の他、分散型オラクルネットワーク提供のChainlink(チェーンリンク)やパブリックブロックチェーンのAvaranche(アバランチ)、分散ガバナンスのためのオペレーティングシステムのDAOstack(ダオスタック)、ブロックチェーン活用のパラメトリック保険の提供実績があるEtherisc(イーサリスク)、世界第3位の再保険会社Hannover Re(ハノーバー再保険)、ケニアのインシュアテック企業Pula(プラ)、気候変動対策データおよびツールを提供する非営利団体TomorrowNow(トゥモローナウ)が参加している。
また保険のプラットフォームは、アバランチ上に分散型アプリケーション(DApps)の形で開発するという。農家はこのプラットフォームにより、ステーブルコインまたは現地通貨で保険金の支払いをスマートフォンで受けられるとのことだ。
なおこのプラットフォームは年内を目途に、ナイジェリアで最初に提供される予定だ。
レモネード財団のディレクターであるダニエル・シュライバー(Daniel Schreiber)氏は「従来の保険会社の代わりにDAOを利用し、保険契約の代わりにスマートコントラクトを使用し、さらに保険金請求の専門家の代わりにオラクルを使用することで、web3とリアルタイムの気象データの共有および分散型の側面を活用して、手頃な価格で瞬時の気候保険を提供できると期待しています」とコメントしている。
なお発表によると将来的に全ての暗号資産投資家が、このDAOに対し資金提供できるようになるという。またコミュニティへの参加貢献のためにガバナンストークンの発行も予定しているとのことだ。
2015年に設立されたレモネードは、米ニューヨークを拠点にP2P(ピアツーピア)の損害保険を提供する企業。従来の損害保険ビジネスでは保険契約者から巨額の資金を集め、運用して利益を得るというモデルだが、それに対しレモネードは、主要なオペレーションにAIを導入し、経営を効率化することで保険料の低減と保障の拡大を目指している。
契約者から集めた保険金の20%はレモネードの経費・利益として使われ、80%が保険金など契約者への支払いなどに使われるという。2017年にはシリーズCにてソフトバンクグループ、GV(Google Ventures)、セコイアキャピタル(Sequoia Capital)、アリアンツ(Allianz)より1.2億ドルの資金を調達している。
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参考:Lemonade Foundation
デザイン:一本寿和
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