バイデン大統領が暗号資産に関する調査指示
ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領が、暗号資産(仮想通貨)に関連した法的・経済的影響を、司法省や財務省などに調査指示する大統領令に、今週署名する見通しであると関係筋が3月7日明かした。
ホワイトハウスは昨年、拡大するランサムウェアなどのサイバー犯罪の脅威に対処するため、大統領令を含む暗号資産市場の広範な監視を検討していると発表していた。
今回のバイデン氏による大統領令は「貨幣の未来」と「暗号資産が米国の経済発展にどう役立つのか」に関する一連の報告書を180日間の期限で提出することを定めているようだ。
これについて情報筋は「180日以内に政策の大きな転換を見ることができる。これは中央銀行のデジタル通貨創設に向けた一歩となる可能性が高い」とし、バイデン政権内でこのような動きが顕著であることを述べている。
しかし、この大統領令を受け作成される報告書には、このような動きに懸念を示したり、議会の承認が必要であると結論づけたりする可能性があると情報筋は言う。
この大統領令は9日に出るようだ。これはブルームバーグが最初に報じている。
ロシアが世界経済の大部分から切り離され、欧米の制裁を回避するために暗号資産が利用されることや、中国や他の経済国が独自の暗号資産を作ろうとする動きに対いて懸念が高まっている中で、今回の命令が下されることになったようだ。
金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は7日、モスクワによるウクライナ侵攻をめぐりワシントンが科した制裁を回避しようとするロシア企業の潜在的な試みに注意するよう、金融機関に警告を発した。
バイデン氏の大統領令は司法省に新しい通貨の創設に新しい法律が必要かどうかを検討するよう求め、財務省、証券取引委員会、連邦取引委員会、消費者金融保護委員会やその他の機関は消費者への影響を調査することになる。
アナリストによれば、近々出されるであろう大統領令は、市場規制当局に暗号資産をその管轄下に置くための弾みを与える可能性があるとのことだ。
なおシカゴ大学の調査によると、暗号資産の価値は昨年3兆ドル(約347兆円)を超えて急増し、2021年時点でアメリカ人の約14%がデジタル資産に投資しているという。
そのため金融規制当局は暗号資産に注目を集めている。特にSEC(米証券取引委員会)議長のゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)氏は昨年、暗号資産業界を「金融のワイルドウエスト(西部開拓史)」と呼んだ。なおゲンスラー氏は議員に対し、暗号資産取引所も従来の証券取引所と同様にSECに登録することを望んでいると述べている。
米CFTC(商品先物取引委員会)のロスティン・ベーナム(Rostin Behnam)委員長も、デジタル資産の規制において同委員会が主導的な役割を果たすよう議会に要請している。
なお今回の大統領令では「暗号資産が競争力に与える影響」、「必要とされる市場や技術インフラ」、「ビットコインの採掘による環境への影響」などについての調査も命じられる予定だという。
ジャネット・イエレン(Janet Yellen)米財務長官は昨年、暗号資産の悪用など、デジタル市場による「リスクの爆発」を警告したが、一方で新しい金融技術は犯罪撲滅や不平等削減に役立つ可能性もあると述べている。
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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Biden to order studies on regulating, issuing cryptocurrency -source
Reporting by Andrea Shalal in Washington; Additional Reporting by Hannah Lang and Katanga Johnson in Washington; Editing by Jonathan Oatis
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
images:REUTERS