IHIがCO2排出/削減量を管理するブロックチェーンプラットフォーム構築
東証1部上場企業のIHIが、ブロックチェーン技術を活用した「環境価値管理プラットフォーム」構築と実装開始を2月2日発表した。
IHIは総合重工業グループとして、資源・エネルギー、社会インフラ、産業機械、航空・宇宙の4つの事業を行う企業。同社では顧客の装置や設備の稼働データをクラウドサーバに集積し、モニタリング、データ分析、データ利活用により故障予兆検出や稼働率向上を図るIoT基盤「ILIPS(IHI group Lifecyle Partner System)」を提供している。
今回IHIが発表した「環境価値管理プラットフォーム」は、「ILIPS」のクラウド上に蓄積された稼働データより算出したCO2の排出量と削減量を記録・見える化し、環境価値に変換して外部市場に流通させる仕組みとのこと。
このプラットフォームによって創出したCO2削減量は、スマートコントラクトにより環境価値としてトークン(デジタル証明書)化し、外部へ連携する機能が実装されているという。
なおこの環境価値変換機能は、企業間取引や環境省が中心となり2022年度からの運用開始が予定されている「J-クレジット取引市場のezzmo(イツモ)」への流通を見据えたものであるとのことだ。
またこの「環境価値管理プラットフォーム」はNTTデータの協力のもと、実装したとのこと。
あたらしい経済編集部がIHIへ確認を取ったところ、このプラットフォームにはエンタープライズ向けブロックチェーン基盤のクオーラム(Quorum)が採用されているとのことだ。
このプラットフォームについてIHIは「取引のためには信頼性が担保された排出/削減量のモニタリングと結果報告および検証が重要になりますが、ブロックチェーン技術を活用することで複数の企業でデータを共同管理するため透明性・信頼性が確保され、データが改竄されることを防ぎ、第三者検証も可能となる形での記録を実現しています」と説明している。
またこの仕組みを活用することで投資回収やさらなる設備投資を進め、脱炭素社会実現に向けた活動を加速できるようになり、環境保護への貢献とそれに伴う社会的な企業評価向上についても期待ができるとのことだ。
なおこのプラットフォームは、昨年10月から3か月間、ILIPSを搭載している複数製品においてトライアルで適用し、CO2排出/削減量の記録・見える化から環境価値への変換について運用を確認したとのことだ。
また現状ではCO2削減量以外の様々な種類の環境価値管理に展開できるよう、基盤整備を進めていく計画とのことだ。
今回のようなブロックチェーンを活用した「環境価値移転」については、国内ですでにいくつか事例がある。
TISでは、自宅で発電した再生可能エネルギー(再エネ)由来の電気をEV(電気自動車)に充電し、走る蓄電池として蓄えた電気を別の建物に放電することにより、電気と共に環境価値を他者に移転するシステムの開発をしている。
またchaintope(チェーントープ)では、佐賀市内でのエネルギー等の地域内循環をリアルタイムで可視化し、ごみ発電電力の地産地消による環境価値の電子証書化に成功し、システム構築が完了している。
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参考:IHI
デザイン:一本寿和
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