DatachainとNTTデータ、イーサリアムとHyperledger Fabric間のDVP決済検証に成功
Datachain(データチェーン)が、NTTデータと共同で実施したイーサリアム(Ethereum)とエンタープライズ向けブロックチェーンであるHyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)のインターオペラビリティ実現の為の実証実験に成功したことを2月1日発表した。
この実証実験では、イーサリアム上のデジタル通貨(USDCなどのERC20トークン)とHyperledger Fabric上のデジタル資産を用いて、DVP決済を想定した価値移転を行った結果、2つのアセットの同時交換が可能であることを確認したとのことだ。
なおDVP(Delivery Versus Payment)決済とは、証券等の権利の引渡し(Delivery)と代金の支払い(Payment)を同時に行うことで、元本リスクを削減する決済手法のことだ。
イーサリアムとHyperledger Fabricの相互接続には、Datachainが開発を主導するHyperledger Labs YUIを用いることで、Cosmos(コスモス)のIBC(Interchain FoundationおよびCosmosプロジェクトによって策定が進んでいる、ブロックチェーン同士の相互運用性を担保するための仕様標準)を用いたインターオペラビリティを実現しているという。また同じくDatachainが開発を進めているCross Framework(クロスフレームワーク)を用いることで、両ブロックチェーン上の取引を同時に実行することを可能にしているとのことだ。
発表によるとDatachainは、これまでHyperledger FabricとCosmos(Tendermint)間のDVP決済の検証は完了していたとのことで、今回、Hyperledger Fabricの接続先として実際にUSDCなどのデジタル通貨(ステーブルコイン)がすでに流通しているイーサリアムを対象としたことで、より商用化に近いレベルでの検証に成功したとしている。
なおこの実証実験の内容を受けて、東京海上日動火災保険、STANDAGE(スタンデージ)、トレードワルツ、NTTデータが共同で行った新貿易決済の実証実験において、Datachainがインターオペラビリティに関する技術提供を行ったとのことだ。また「あたらしい経済」編集部がDatachain担当者へ聞いたところ、この技術は証券などのユースケースにも応用が可能であるとのことだ。
株式会社Datachainはブロックチェーンのインターオペラビリティ(相互運用性)について積極的に取り組む企業だ。
Datachainが開発を主導するHyperledger Labsプロジェクト「YUI」では、様々なブロックチェーン基盤においてIBCによるインターオペラビリティを実現するために「IBC Module」などの開発や、特定の中央集権型システムに依存せずに、異なるブロックチェーンに分散したデータの参照や機能の実行を行う「Cross-chain smart contract」の開発を可能にするフレームワーク「Cross Framework」を開発し特許出願も行っている。
DatachainとNTTデータとは昨年3月よりブロックチェーン間のインターオペラビリティ実現に向け技術連携を開始し、昨年8月より実証実験を開始していた。
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【取材追記】DatachainがNTTデータとブロックチェーン間のインターオペラビリティ実現に向け技術連携(Datachain事業開発シニアマネージャー 石川大紀氏)
デザイン:一本寿和
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