JCBとDatachain、デジタル通貨相互交換に向け実証開始
JCBとDatachain(データチェーン)が「デジタル通貨交換基盤」構築を見据え、異種ブロックチェーン間のインターオペラビリティ(相互運用性)に関する実証実験を開始したことが12月9日に分かった。
両社は8月に異種分散型台帳間の相互接続についての共同研究を始めており、実証実験はその次の段階だと考えられる。
今回の実証実験の目的は「Hyperledger Lab YUI」や「Cross Framework」を用い、異なるブロックチェーン間の相互運用性について、その仕様標準の1つである「IBC」を用いたハブ構造導入の技術的有用性を検証することと説明されている。
またブロックチェーンの相互運用に関する技術では、サービス利用者が管理者に秘密鍵を渡すことなく取引の自動実行を行うことができる「Relay方式」を採用している。
「Hyperledger Lab YUI」とはDatachainが開発をリードしており、「Hyperledger Lab」としてOSSで提供されている様々なブロックチェーン基盤において、IBCによるインターオペラビリ ティを実現するためのプロジェクト。
また「Cross Framework」とは複数のブロックチェーンに関連するスマートコントラクトの実行を可能にするためのフレームワークとのことだ。
また発表によれば今回の実証実験では、具体的な技術スタックとして、ブロックチェーンの基盤は「Hyperledger Fabric」、CBDCやグローバルステーブルコインでの利用・検討されている「Tendermint」の2つで検討するとのことだ。
今後も両社は、資産やノウハウを融合することで革新的なサービスの創出を目指すとともに、異種ブロックチェーン間の相互運用の実用化に向けて、デジタル通貨発行基盤を担う企業やプロジェクトと広く協議していくという。
また今回のデジタル通貨交換基盤は、将来的にはUSDCやUSDTのようなステーブルコイン、日本のCBDCなどの利用も想定されているかもしれない。
なお似た取り組みとしては、Visaが9月に中央銀行デジタル通貨(CBDC)やステーブルコインの相互運用性をもたらすプロトコル「ユニバーサル・ペイメント・チャネル(Universal Payment Channel:UPC)」を発表している。
あたらしい経済編集部は株式会社Datachain事業開発シニアマネージャー石川大紀氏へ取材を行った。
−いまステーブルコインにはどんな課題が存在していると考えていますでしょうか?
現段階では、法整備なども含め様々な課題があります。今回の取り組みに関連した点では、複数のデジタル通貨が流通するためには、通貨間の円滑な交換が必要だと考えていますが、現状そのような仕組みはありません。
これは今後解決していく必要のある課題だと認識しています。そして、ブロックチェーンの性質や経済合理性を考えると、第三者的な機関の介在による解決手法よりも、第三者の信頼に依存しない方式が適していると考えています。
−この実証実験の事項が実運用されれば、一般消費者の決済のあり方はどのように変化するのでしょうか?
デジタル通貨を利用する一般消費者やデジタル通貨による決済を導入する店舗は、裏側の複雑な仕組みを意識すること無く、自身が利用したい・受け取りたい通貨で取引ができ、低手数料・即時決済・少額決済対応などの恩恵を受けられるようになる可能性があります。
デザイン:一本寿和
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