国内で7月からNFTマーケットプレイス「ユニマ」をスタートさせた、モバイルファクトリーとビットファクトリーが、「ユニマNFT買取(β版)」を11日に開始した(→詳細はこちら)。
このサービスは一般ユーザーが所持するNFTを、同社が日本円で買い取るサービス。希望者は専用フォームに必要情報を入力するだけで、申し込みが可能。審査、査定の上、買取が成立した申請に関してはNFTマーケットプレイスや取引所を介さずに、手間を最小限に抑えて、NFTを売却できるという。
「あたらしい経済」はモバイルファクトリー 取締役COO・ビットファクトリー 代表取締役の深井未来生氏を取材。同社が買取サービスを開始した理由、マーケットプレイスの今後のアップデート、そしてどのようにこれから日本のNFT市場を盛り上げていきたいかなどについて訊いた。
日本円でのNFT買取サービスをはじめた理由
−ユニマ関連サービスとして、今回NFT買取サービスを開始する理由は?
日本の現在のNFT市場では、まだまだ流動性に関する課題があると思ったんです。
NFT自体は、日本でも大手企業が相次いで参入したり、今年の流行語大賞にノミネートしたりするなどバズワードになっています。ただその一方、実際に日本で二次流通を含めて売り買いをしている人はまだまだ少ないと思っています。
流動性がなければ多くの人が安心してNFTを買うこともできない。だから私たちのような上場企業が買取サービスを展開し、少しでも日本における流動性向上の一助になればと考えています。
また今回の取り組みで、日本円でのNFT買取サービスにどのくらいの需要がマーケットにあるのか、それを実際にサービス展開しリサーチをしたいという考えもあります。
私たちはこの買取サービス自体で大きなビジネスにするというよりは、よりNFT市場が拡大する機会を作り、それとともに今のリアルな日本市場の需要も確かめたいと考えています。
−今回のサービスは誰でも申し込むことはできるでしょうか?
はい、お申し込みに関しては専用のフォームにご登録いただければ、原則誰でも可能です。
ただし、もちろんすべてのお申し込みに対して買取ができるわけではないので、そこは個々のお申し込み内容を弊社のバイヤーが判断させていただくことになります。
その上で、買取らせていただけるNFTに関しては査定価格をご提示します。査定額にご満足いただけましたら、本人確認をさせていただき、NFTの受け渡しと合わせて日本円をお支払いさせていただく流れになります。
−どのようなNFTを買い取る予定ですか?
買取対象となるコレクションの例として、Hashmasks、CryptoPunks、Bored Ape Yacht Club、The Sandbox、CryptoSpells、Sorare、アイドルNFTトレカを発表させていただきました。
ただこれはあくまで例でございますので、イーサリアムなどのブロックチェーンにちゃんと履歴があり、お客様自身のweb3ウォレットにお持ちのNFTであれば、買取審査をさせていただく予定です。
−このサービスで買い取ったNFTは、その後どのように扱われるのでしょうか?
弊社がOpenSeaなどの外部のマーケットプレイスで販売させていただくこともありますし、ユニマで日本のユーザーに向けて日本円で販売することなども考えています。
実際にこれから買取を進め、需要を調査しながら臨機応変に運用して行く予定です。
また買い取るボリュームについても、まずはお申し込み状況を把握して、具体的に計画していきます。先ほども申し上げたように、私たちはNFT買取サービス自体をビジネス的に拡大していくというより、日本のNFT市場で買いやすい売りやすい環境を広げるために、この事業を組み立てて行きたいと思っています。
NFTマーケットプレイスとしての「ユニマ」の今とこれから
−NFTマーケットプレイス「ユニマ」の現状と今後の展開は?
ユニマは今年7月にイーサリアムに対応し、日本円でNFTを購入できるマーケットプレイスとしてサービスを開始しました。これまで「駅メモ! Our Rails」や山口周さん、その他クリプトアーティストの方の作品を取り扱ってきました。
すでに発表している、女優のんさんやマジシャンBuzz Magician Shinさん、漫画家いがらしゆみこさんのNFTも現在発売に向けて準備をしております。
そして今後取り扱い作品を拡大すべく、現在いろいろなクリエイターさんたちと計画を進めています。
またマーケットプレイス運営と並行して、ユニマの仕組みをカスタマイズして企業さんに提供するSaaS事業も、多数のお話をいただいています。多くの企業さんとお話しすると、NFTを自社ブランドで自社のストアで販売したいというニーズが多くありました。
先日発表された、CAMPFIREさんのクラウドファンディングのリターンにNFTを付与する仕組みも、ユニマがバックエンドのシステムを提供しています。リリース前なのでそれ以外の計画は具体的にはお伝えできないんですが、複数の企業さんのサービス立ち上げを現在お手伝いしております。
−やはりIPをお持ちの企業様のお問い合わせが多いでしょうか?
そういった企業様からのご相談も多数いただいています。
ただIPホルダーやIPメーカーに限らず、すでにネットサービスなどでプラットフォームも持っている企業さんなどもNFTに関心が高いです。私たちもそのような幅広い業界の企業様のすでにある自社サービスに、ユニマの仕組みを提供して気軽にNFTを取り入れていただくことをサポートしていきたいと思っています。
−ユニマのシステムの今後のアップグレードなどの予定はありますか?
ガス代の問題もありますので、他のレイヤー2のブロックチェーンなどの対応は、優先度高く進めています。
また現在は私たちが直接ご相談したクリエイターや企業さんのNFTしか販売していませんが、今後は多くクリエイターの方にご利用いただけるように開発を進めています。
現在ユニマご購入いただいたNFTは、ユニマに実装されているTorus LabsのWeb3ウォレット「TORUS」からご自身でメタマスクなどに移していただき、OpenSeaなど外部のマーケットプレイスに二次流通いただける仕組みです。ただユニマ内で二次流通したいというご要望もいただいておりますので、マーケット内二次流通にも今後対応していきたいと考えています。
−買取サービスやマーケットプレイス事業を通じて、日本のNFT市場をどのように盛り上げていきたいですか?
まだまだ日本でNFTは話題になっているものの、どうしてもデジタルコンテンツのライツマネジメント的な話題が先行しており、海外とだいぶ温度差、実際の取引ボリュームの差が生まれていると思っています。
買取サービスを提供することで、もっと多くの方がNFTを買いやすくする状況を作りたいですし、買い取らせていただいた海外発NFTなどを日本でユニマを通じて日本円でご提供するなども進めていきたいです。
そして、イーサリアムなどの暗号資産を一定金額保有し、NFTの入札・購入・再販売を行い、NFTの国内外の流動性を高めることを目的とした新たな取り組みも検討しています。
今だとNFTに興味があるけど、暗号資産やWeb3ウォレットの準備も難しい、税金も気になるという人々や、企業も多いのではと思っています。
ユニマのマーケットプレイスをより使いやすいものにして、その仕組みを多くの企業様に提供し、今回発表したNFT買取サービスも含め、多くの人々や日本の企業がNFTに関わるハードルを下げ、市場を盛り上げていきたいです。
取材・編集:設楽悠介(あたらしい経済)
写真:大津賀新也(あたらしい経済)
ヘッダ画像素材:iStock/Who_I_am