日揮HDと横河電機、ブロックチェーンで現場作業者のモチベーション向上
日揮ホールディングスと横河電機が、ブロックチェーンのトークンシステムを活用し、建設現場作業者のモチベーション向上を目指す実証実験を実施したことを10月29日発表した。
大規模なプラント建設工事現場では、土木、建築、電気、計装など多様な職種の現場作業者が、複数の企業から派遣され建設工事に大量に従事するため、現場作業者の目的意識の共有、作業効率化や工事安全の向上に向けた自発的な行動の促進が課題とのこと。実証実験ではこれらの課題の解決を目的としたものだ。
この実証実験では、現場作業者の行動を可視化し、「好ましい行動」を促進するシステムを試験的に導入。日揮HDのグループ会社である日揮が遂行中の宮城県石巻市のバイオマス発電所建設プロジェクトにおいて、2021年2月から7月にかけて実施したという。
「好ましい行動特性」として「チームワーク」、「安全重視」、「明るい行動」の3つを定義し、それらの行動特性を発揮した現場作業員に対して監督者がトークンを付与し、現場作業員と監督者のコミュニケーションのルートや頻度などを見える化したシステムを構築したとのこと。
またシステムの構築と運用にあたって、行動経済学に基づいた設計を行い、監督者からのポジティブな声かけや表彰などの心理的効果も取り入れたとのこと。トークンの付与記録には、ブロックチェーン技術を活用し改ざんを防ぎ、作業者別の付与履歴を追跡することを可能としたとのことだ。
実証実験の結果
実証実験の結果として、アプリの使用により新型コロナウイルス感染予防対策として一定の距離を保ちながら、現場作業員と監督者や現場作業員同士のコミュニケーションを促進できたとして、導入した同現場では高い評価を得たとのこと。
また実験終了後のアンケート結果では、約6割の現場作業者が同アプリをきっかけに好ましい行動を自発的に取るように変化したと回答したほか、約7割の監督者が建設現場内に良い変化をもたらしたと回答したとのこと。
建設現場でのインタビューにおいても、心理的および経済的報酬の両方が現場作業者のモチベーション向上につながったという声や、監督者と現場作業者のコミュニケーションが増加したことで心理的距離が縮まり、作業指示の伝達がスムーズになったという声があったとのことだ。
両社は、同実験終了後もこのシステムを同建設現場で継続的に運用し、有効性を検証するとともに、日揮グループの他の国内建設現場および海外プラント建設現場のほか、保全作業現場等へ展開していくことも検討していくとのことだ。
日揮ホールディングス株式会社のグループ経営推進部コーポレートコミュニケーショングループへ取材
あたらしい経済編集部は日揮ホールディングス株式会社のグループ経営推進部コーポレートコミュニケーショングループへ次のように質問を行った。
−−今回のシステムにて採用したブロックチェーンは何でしょうか?
ビットフライヤーブロックチェーンのエンタープライズ向けブロックチェーン「miyabi」です。選定は横河電機が行いました。ブロックチェーンへの情報の記録は横河電機が対応をしております。
−−実際のシステムの運用方法について教えてください。
ブラウザアプリにてQRコードを使用して運用を行いました。現場監督は作業員のヘルメットに添付したQRコードを読み込みトークンを付与します。現場監督については支給されたスマートフォンを使用し、作業員は自身が持っているスマートフォンを使用してもらいました。スマートフォンを持っていない作業員については、現場監督に対応をお願いしました。
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参考:日揮HD
デザイン:一本寿和
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