FATFが暗号資産の定義を明確化、NFTやDeFiにも言及
マネーロンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)を目的とする政府間組織であるFATF(金融活動作業部会)が、2019年6月に発行された「暗号資産および暗号資産サービスプロバイダー(VA/VASP)に関するリスクベースアプローチのためのガイダンス」を10月28日に更新した。
この更新されたガイダンスでは、今年3月から4月にかけて募集されたパブリック・コメントが反映されており、主にFATF勧告が暗号資産サービスプロバイダーにどのように適用されるべきかの説明、例示、緩和措置を適用する上での障害の特定、潜在的な解決策の提示が行われている。
今回の更新では以下の6つの分野の内容について加筆修正されている。
(1)暗号資産および暗号資産サービスプロバイダーの定義の明確化
(2)FATF基準がステーブルコインにどのように適用されるかに関するガイダンス
(3)ピアツーピア取引のAML/CFTのリスクに対処するために各国が利用できるリスク評価とツールに関する追加ガイダンス
(4)暗号資産サービスプロバイダーのライセンスと登録に関する最新のガイダンス
(5)「トラベルルール」の実施に関する公的および民間部門向けの追加ガイダンス
(6)暗号資産サービスプロバイダー監督者間の情報共有と協力の原則
今回のガイダンスによれば、暗号資産の定義として「暗号資産とはデジタルに取引または譲渡が可能で、支払いまたは投資目的で使用できる価値がデジタル化されたもの。暗号資産には、法定通貨、有価証券およびその他の金融資産がデジタル化されたものは含まない」と説明されている。
また暗号資産サービスプロバイダーの定義として「暗号資産サービスプロバイダーとは、FATF勧告の他の箇所で対象となっていない自然人または法人であって、事業として、他の自然人または法人のために、または他の自然人または法人に代わって、以下の活動または業務の1つ以上を行う者をいう」と説明されている。
具体的には次の5つが示されている。
(1)暗号資産と法定通貨の交換をする者
(2)ひとつまたは複数の暗号資産を交換する者
(3)暗号資産の譲渡および移転する者
(4)暗号資産の保管・管理、または暗号資産の管理を可能にする者
(5)発行者による暗号資産の提供・販売に関連する金融サービスへの参加・提供する者
またNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)に関しては、収集目的(コレクタブルズ)のNFTであれば暗号資産に該当しないとのことだ。ただしそのNFTが支払い手段や投資手段になっていれば、金融資産とみなされる可能性があり、FATF基準に従う必要が生まれるとのことだ。
またステーブルコインに関しては、匿名性、世界的な広がり、不正な資金の層化に使用される可能性があるため、一部の暗号資産と同レベルのリスクを備えているとの見解があり、今後も注視していくとのことだ。
そしてDeFi(分散型金融)に関しては、FATF基準では通常は暗号資産サービスプロバイダーに該当しないとのことだ。しかし運営者らがDeFiのガバナンスに関して支配力または十分な影響力を維持している場合、たとえガバナンスが分散化されているように見えたとしてもFATFの暗号資産サービスプロバイダーの定義に該当する可能性があるとされている。
FATFの総裁であるマーカス・プライヤー(Marcus Pleyer)博士は今回の更新について以下のようにコメントしている。
「この更新されたガイダンスは、国と民間部門による現在のFATF基準の適用を支援することを目的としています。FATFは、この更新されたガイダンスに照らして、国と民間部門が暗号資産および暗号資産サービスプロバイダーにFATF基準をできるだけ早く実施することを期待しています」
参考:FATF “Updated Guidance for a Risk-Based Approach to Virtual Assets and Virtual Asset Service Providers”・ FATF “Outcomes FATF Plenary, 19-21 October 2021”
デザイン:一本寿和
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