出版業界にもNFTの波は来る? トーハンとメディアドゥ、MBJら参入

メディアドゥとトーハンが「NFTデジタル特典付き出版物」

電子書籍取次のメディアドゥと出版取次大手トーハンによる「NFTデジタル特典付き出版物」が、10月12日から順次全国の書店にて販売されることが分かった。第一弾として販売されるNFTは、扶桑社と主婦の友社の雑誌および写真集の関連の合計3タイトルとのこと。

また発表によるとこのNFTは、メディアドゥ開発のブロックチェーン技術を基盤としているとのこと。

購入した出版物などの特典として入手ができ、NFTを活用した資産的価値を持つデジタルコンテンツを総称して「NFTデジタル特典」とし、同社は商標登録に出願中とのことだ。

出版物に添付されたカード上の16桁のギフトコードをユーザーがデバイスで読み込みむことで、この「NFTデジタル特典」を入手できる仕組みのようだ。

さらにメディアドゥはNFTマーケットプレイスを10月12日正午より開始予定であることも発表した。このマーケットプレイスはデジタルのファンアイテムとしてのNFTを発行・販売でき、「NFTデジタル特典」の発行も可能なプラットフォームと説明されている。

電子書籍取次モバイルブック・ジェーピーも参入

また先週17日、メディアドゥと同じく電子書籍取次事業行うモバイルブック・ジェーピー(MBJ)もNFT事業へ参入を発表した。MBJは、ロイヤリティバンクとの共同事業で、出版社の持つコンテンツにNFTを付与し販売するサイトを2021年10月末に開始する予定とのことだ。

第一弾としてMBJのグループ会社である大日本印刷株式会社の高精彩出力技術「プリモアート」を活用した複製画を取り扱うことが発表されている。

これは実物の複製画にNFTを付与する取り組みだが、今後同社は出版社のコンテンツにNFTを付与し販売するサイトや、ユーザー同士が売買するオークションサイト、また書籍の特装版や雑誌の付録でNFTを発行する仕組みの提供を年内に予定しているという。

さまざまな「NFT」ブーム

今年に入って世界的にブームとなっている「NFT」。

NFTとは、Non Fungible Token(ノンファンジブル・トークン)の略で、代替が不可能なブロックチェーン上で発行されたトークンを指す。NFTの規格で発行されたトークンは、そのトークン1つ1つで個別の価値を持つ。そのためNFTを画像や映像などのデジタルデータと紐付けることで、デジタルデータの個別の価値を表現することに活用されている。デジタルアートやブロックチェーンゲームなどで現在多く活用され、その市場規模は拡大している。

日本国内でも今回の出版業界企業に限らず、各業界の大手企業の参入が相次いでいる。ただそういった国内のプレイヤーの参入では、大きく分けて2つのアプローチがみられる。

いわるゆパブリックなブロックチェーンを活用して発行されるNFTと、企業独自のプライベートに近いブロックチェーン上(もしくは現時点ではブロックチェーンさえ活用していない可能性もある)で発行されるNFTである。

前者は今世界でのトレンドで、暗号資産市場の盛り上がりと共に市場規模を拡大してる、いささか表現はおかしいかもしれないがブロックチェーン的な、ブロックチェーン本来のメリットを活用したNFTだ。一方後者はNFTと言えるのか、そもそもブロックチェーンを使う必要があるのかと疑問を持たざるを得ないものもあるように思える。

もちろんNFTとはそもそもブロックチェーン上のトークンの規格を表した言葉で、その定義をどのようにするかにもよる見解ではある。ただ昨今、少しNFTというバズワードが一人歩きしはじめているのではないだろうか。

本来NFTの「紐付けたデータの唯一の価値を表現でき、その履歴が改竄されない」という一つの大きな特徴は、一企業だけが管理しない、パブリックなブロックチェーンを活用してこそ発揮されるメリットではないか(もしくは一企業のブロックチェーンでも、ガナバンストークンを活用した分散化した運営などのケースも、NFTのメリットを発揮できるかもしれない)。

一企業や特定のメンバーがノードを運営しているブロックチェーン上のNFTでは、その企業がなくなってしまったらNFTの価値を誰が証明できるのだろうか。それらとブロックチェーンを使わないウェブの一般的なデータベースとの差を見出すことが難しい。

なお今回発表されたのメディアドゥやMBJの活用するブロックチェーンについてはまだ詳細が明かされていない。今後詳細が発表された際はその点も考慮してサービス利用を検討してみてもいいかもしれない。 

また今回の発表に限らず、NFTに関するニュースが日々報じられる今日、多くの人々もNFTを購入しようという機会が訪れるだろう。その際には「NFTだからすごい」という認識は捨て、そのNFTはどんなブロックチェーンを使っているのか、誰が管理して権利を保障してくれているのかなど、その仕組みを調べてみるのがいいだろう。

image/iStock:bitterfly

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

設楽悠介

「あたらしい経済」編集長/幻冬舎コンテンツビジネス局局長
幻冬舎でブロックチェーン/暗号資産専門メディア「あたらしい経済」を創刊。同社コンテンツビジネス局で電子書籍事業や新規事業を担当。幻冬舎コミックスの取締役兼務。「Fukuoka Blockchain Alliance」ボードメンバー。福岡県飯塚市新産業創出産学官連携協議会委員。ポッドキャスターとして、Amazon Audible original番組「みんなのメンタールーム」や、SpotifyやAppleにてweb3専門番組「EXODUS」や「あたらしい経済ニュース、ビジネス系番組「二番経営」等を配信中。著書『畳み人という選択』(プレジデント社)。

「あたらしい経済」編集長/幻冬舎コンテンツビジネス局局長
幻冬舎でブロックチェーン/暗号資産専門メディア「あたらしい経済」を創刊。同社コンテンツビジネス局で電子書籍事業や新規事業を担当。幻冬舎コミックスの取締役兼務。「Fukuoka Blockchain Alliance」ボードメンバー。福岡県飯塚市新産業創出産学官連携協議会委員。ポッドキャスターとして、Amazon Audible original番組「みんなのメンタールーム」や、SpotifyやAppleにてweb3専門番組「EXODUS」や「あたらしい経済ニュース、ビジネス系番組「二番経営」等を配信中。著書『畳み人という選択』(プレジデント社)。

合わせて読みたい記事

【11/22話題】SECゲンスラー委員長が退任へ、金融庁が暗号資産・ステーブルコイン仲介業の新設検討など(音声ニュース)

米SECゲンスラー委員長が来年1月に退任へ、功績評価の一方で反発や批判も、金融庁、暗号資産・ステーブルコイン仲介業の新設検討=報道、国民・玉木代表が税制改正要望を与党に提出、暗号資産への申告分離課税導入など提案、米裁判所、SECの「ディーラー」定義めぐる訴訟で関連規則を破棄するよう命じる、リミックスポイントが5億円でBTC・DOGE・XRP購入、投資総額30億円に、マスターカードとJPモルガン、ブロックチェーン決済ソリューションを連携 、コインベースが「WBTC」取扱い廃止へ、背景にジャスティン・サンの影響か、2019年のアップビットのハッキングは北朝鮮ハッカー関与か、韓国警察が特定、米ドルステーブルコイン「FDUSD」、スイに対応開始、Injective、オンチェーンAIエージェントSDK「iAgent」リリース

Sponsored

ビットワイズ、「ソラナ現物ETF」を上場申請

米暗号資産(仮想通貨)運用会社ビットワイズ(Bitwise)が、ソラナ(Solana)を基盤とするETF(上場投資信託)の上場申請を、米国証券取引委員会(SEC)に提出したと11月21日発表した。なおこの申請は、株式取引所シーボーBZX取引所(Cboe BZX exchange)を通じて行われたとのこと。またビットワイズは発表上で同商品についてETP(上場取引型金融商品)と記載している

マスターカードとJPモルガン、ブロックチェーン決済ソリューションを連携

米決済大手マスターカード(Mastercard)のマルチトークン・ネットワーク(MTN)が、米銀行大手JPモルガン(JP Morgan)のブロックチェーン基盤決済システム「キネクシスデジタルペイメント(Kinexys Digital Payments)※旧オニキス(Onyx)」と連携したと11月21日発表した