丸紅、日本郵船らの船員向け電子通貨プラットフォーム事業へ出資参画
丸紅株式会社が、日本郵船株式会社とTransnational Diversified Group(TDG)が共同で設立したMarCoPay Inc.に出資し、船員向け電子通貨プラットフォームサービス事業に参画することに合意したことを6月21日発表した。
日本郵船とTDGが2019年7月に設立したMarCoPay社では、スマートフォンのアプリで電子通貨による給与受取り、送金、現金化、融資申請、保険や投資商品等を購入できる電子通貨プラットフォーム「MarCoPay(マルコペイ)」の運営を行っている。このプラットフォームの導入により乗船期間中の給与支給を一部電子通貨で行うことで、現金管理費用を圧縮し、出納業務に要する労力や時間の軽減、現金盗難・紛失のリスクを低減するという。また電子通貨の特性を生かし、船員は乗船期間中も自国への送金が可能となっている。
同プラットフォームは主に外国人船員を対象としており、融資面についてはフィリピン人船員を対象としてサービスを開始しているとのことだ。なお「MarCoPay」の開発にあたりアクセンチュア株式会社および金融大手シティグループとの提携が行われている。電子通貨を開発するテクノロジーとしては、ブロックチェーンではなく従来型の技術であるとのことだ。
リリースによると現在、外航船員への給与は主に現金で支給されているため、世界を行き交う外航船上には約800億円相当の現金が滞留していると推定されており、それら現金の取り扱いに際しては、船への輸送費や給与を受け取った船員が家族へ海外送金する手数料など、様々な手間と費用が発生しているとのこと。また船員は一度乗船すると船上といった特殊な職場環境での生活が長期間に及ぶため、健康管理面のサポートや船陸間をつなぐ快適なオンラインサービスへの高い需要があるとのことだ。
さらに船員の一大供給国であるフィリピンでは、船員が自国の平均水準を大きく上回る給与所得を得ながらも、乗船毎の期間契約となる船員特有の雇用形態から、収入に見合った与信条件での融資枠取得や船員の労働・生活環境に適した保険商品への加入が難しいケースがあるとのことで、「MarCoPay」ではこのような船上における現金取り扱いに伴う費用の削減や、船員の労働・生活環境の改善などの課題解決を目指したものであるとのことだ。
丸紅は、MarCoPay社への出資・参画を通じて、丸紅が手掛ける金融や医療、通信、その他事業との連携により、船員とその家族に提供できるサービスメニューを拡充し、日本郵船・TDGと共に、プラットフォームの普及拡大と共にさらなる利便性の向上を目指すとしている。
編集部のコメント
Transnational Diversified Group(TDG)は主に物流事業、船舶の代理店業と船員供給事業、旅行業、情報通信技術などを手がける40以上の事業会社で構成されるフィリピンの複合企業グループで、再生可能エネルギーや農業、不動産などへの投資も行っています。日本郵船とは設立時の1976年から協力関係にあり、現在は日本郵船のフィリピンにおける戦略的パートナーとして連携を強化しています。
参考:丸紅・EnterpriseZine
デザイン:一本寿和
images:iStocks/Tryaging・Molnia