【取材追記】DatachainがNTTデータとブロックチェーン間のインターオペラビリティ実現に向け技術連携(Datachain事業開発シニアマネージャー 石川大紀氏)

DatachainがNTTデータとブロックチェーン間のインターオペラビリティ実現に向け技術連携

株式会社Datachainが株式会社NTTデータとブロックチェーン間のインターオペラビリティ実現に向け技術連携を発表した。

取引を仲介する第三者に依存しないインターオペラビリティ手法としては、「HTLC方式」 と「Relay方式」の2つの方式がある。Datachainが採用する「Relay方式」ではサービス利用者が管理者に秘密鍵を渡すことなく、取引の自動実行を行うことができるようだ。

両社は技術連携の一環として、世界初となるIBC(Inter-Blockchain Communication:IBC)による取引を仲介する第三者に依存しない「Relay方式」を用いた複数の異なるブロックチェーン間における価値移転の自動化に関する実証実験を実施した。

そして実証実験により、取引を仲介する第三者に依存せずにインターオペラビリティを実現する方法として、Datachainが開発を行うCross Framework及びIBCモジュールの技術的有用性が検証されたとのことだ。

リリースによれば、これまでNTTデータは技術研究テーマの一つとして「ブロックチェーンのインターオペラビリティ」に着目し、取引を仲介する第三者に依存せずに 「価値の移転」と「権利の移転」を同時実行することを目的に、実証実験を進めていたとのこと。

しかしNTTデータがこれまで採用していた「HTLC方式」では、サービス運営者の決済機能として「異なるブロックチェ ーン基盤上において、秘密鍵をサービス利用企業自身で管理したまま、取引を自動実行する、という3つの命題(トリレンマ)を同時に解決する」ことは大変難しいものだったようだ。

今後Datachainは貿易金融取引や証券プラットフォームでのDvP決済などに「Relay方式」を採用する独自プロダクト「Corss Framework」をビジネス応用していきたいとのことだ。そしてDatachainは引き続きブロックチェーンのインターオペラビリティ領域を中心に、NTTデ ータとの技術連携を深めていき、異常系の検証やパフォーマンスの向上など、より実用化に向けた検証を行い、早ければ2022年度以降の商用化を目指すようだ。

NTTデータ取締役常務執行役員 松永恒氏は「NTTデータではオープンイノベーションの一環として、様々なベンチャー企業と技術連携し、新たなサービスモデルの創出に挑戦しています。

ブロックチェーンがデジタル時代の新しい社会インフラとなるには、インターオペラビリテ ィの確保が不可欠です。今回、縁あってインターオペラビリティについて先進的かつ幅広い知識をもつDatachainとの技術連携の機会を得ました。

本実証実験で得られた知見を活かし、ブロックチェーンを使った社会インフラの実現に向けて取り組んでいきます」とコメントしている。

(追記:3月26日18時50分)

あたらしい経済はDatachain事業開発シニアマネージャー 石川大紀氏へ取材を行った。

Datachain事業開発シニアマネージャー 石川大紀氏へ取材

-データ処理において、現在の処理モデルとRelay方式の違いについて説明してください。

石川大紀(以下:石川):従来のシステムにおいては、システム同士の連携にはAPIが用いられるのが一般的です。一方で、ブロックチェーンシステム同士の連携においては、連携されるデータの真正性を検証しながら実行する必要性があるため、難易度が高くなります。

そのような中で、中央的なシステムを介して検証を行う仕組みも出てきていますが、Relay方式ではお互いのブロックチェーンで相互に相手のブロックチェーンから送られてくる情報を検証する仕組みにより、ブロックチェーンの特性を損なうことなくシステム間の連携を実現できます。

ブロックチェーン間のデータ連携を外部のAPIゲートウェイのようなオフチェーンシステムを用いて実現することも可能です。

しかしAPIゲートウェイの場合、そのAPIゲートウェイの運用者を信頼する形になります。 アセット性の強いデータなどを連携する場合は、そのオフチェーンシステムのガバナンスをシステム的・非システム的に担保するためのコストが大きくなると想定されています。 また、2つのブロックチェーン間の最終的なデータの整合性を保証できない可能性があります。

-どのような業態の企業が導入すると相性が良さそうでしょうか。

石川:分かりやすい例でいうと、デジタル通貨(CBDCやステーブルコイン、地域通貨)のような決済コインを発行するブロックチェーンとの決済がユースケースとして考えられます。

例えば、今回の実証実験のように貿易文書を扱うブロックチェーンであれば、仲介事業者を介さずに取引を実行するためには、貿易文書と資金の移転をアトミックに行う必要があり、このようなケースにおいてCross Framework及びIBCモジュールは役立ちます。

決済関連では、他にも、STOプラットフォームとのDvP決済、保険契約に基づく保険金の自動支払、電力取引における非化石証書と資金の移転など、さまざまな業界で利用される余地があります。

-企業として導入したら、どのようなメリットがあるのでしょうか?

石川:ブロックチェーンベースのサービスが複数立ち上がった未来を想定した時、CrossFramework及びIBCモジュールの導入により、次のようなメリットがあります。

①ブロックチェーン同士の相互認証による連携が可能(オフチェーンシステムへの信頼が不要)

②複数ブロックチェーンでのアトミックな取引の自動実行が可能

③任意データを扱う事が可能(HTLC方式の場合は、デジタルアセットデータに限定される)

①を満たす方式として、Relay方式とHTLC方式がありますが、HTLC方式では②と③を実現することが基本的に困難です。

平易な言葉に置き換えると、IBCによるRelay方式では、ブロックチェーン同士での会話が可能になるため、それ以外のシステムへの信用が不要になり、ブロックチェーンが持つ信用のもとに整合性のある柔軟な取引が可能になります。

 

 

(images:iStocks/shilh・incohre)

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

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