ディーカレット、auペイメントら次世代電力システムにおけるP2P電力取引プラットフォーム構築実証事業を開始
国内暗号資産(仮想通貨)取引所を運営するディーカレット株式会社が、KDDIグループの株式会社エナリスとauフィナンシャルホールディングス株式会社、auペイメント株式会社とともに電力および環境価値のP2P取引事業成立要因を検証する実証事業を共同で開始したことを12月4日発表した。
この実証事業はエナリスが東京都に採択された事業の一環として、小売電気事業者が広く利用できるP2P電力取引プラットフォームの社会実装を目指し行われるとのこと。
今回の実証事業は本年11月20日より2021年2月末日の期間にて、エナリスの「ブロックチェーン上で電力取引を管理するプラットフォーム」でトラッキングされた電力取引結果に基づき、ディーカレットの「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」で環境価値トークンの発行、管理を行う。これにより将来的なP2P電力取引スキームにおけるトークン活用実用化に向けた課題の洗い出しを行うとのこと。
この実証事業の実施内容は以下となっている。
(1)エナリスが卒FITプロシューマーから環境価値が含まれた電力を調達し、再エネ価値を求めるRE100加盟企業へ電力とともに環境価値を供給。
(2)資金移動業登録業者であるauペイメントが実証事業用の環境価値トークンを発行し、発行されたトークンをエナリスがRE100加盟企業に配布。
(3)RE100加盟企業は卒FITプロシューマーから譲渡された再生可能エネルギーの環境価値に対する謝礼として、環境価値トークンを譲渡。
(4)ディーカレットは自社で構築した「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」を活用し、環境価値トークンの発行、流通、償却を行う。
(5)なお実証事業終了後には、卒FITプロシューマーは提供した環境価値の謝礼として受け取るauペイメント発行のau PAY残高を幅広く決済に利用できるとのこと。
上記実証事業の実施により、「卒FIT電力に含まれる環境価値」および「太陽光発電自家消費分の環境価値」への謝礼支払手段としてのトークン活用の課題を洗い出し、環境価値に対するトークンでの謝礼譲渡の検証、エナリスの持つ小売電気事業に関する豊富なノウハウを活かして現行の電気事業法に準拠した形態でP2P取引を行い、業務上・制度上の課題の検証、卒FITプロシューマーから環境価値が付与された電力を調達し、真に再エネ価値を求めるRE100加盟企業へ供給するスキームの検証を行うとのことだ。
エナリス、auフィナンシャルホールディングス、auペイメントおよびディーカレットは、この実証事業を通して、デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出す「スマート東京」の実現に貢献するとともに、ブロックチェーンやスマートコントラクト等のテクノロジーを通じて電力業界のデジタル通貨活用を進めていくとのことだ。
編集部のコメント
株式会社エナリスは自社の小売電気事業者向けサービス(需給管理オペレーション支援等)基盤を用い、ブロックチェーンを活用して電力のP2P取引をはじめ、多くの新電力が新たな電力ビジネスに挑戦できるプラットフォーム構築を目指している企業です。
卒FITプロシューマーとは、FIT(固定価格買取制度)による電力の買取期間が満了した太陽光発電の生産消費者のことを指します。またRE100とは、企業が事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブのことです。
KDDI、auフィナンシャルグループは、スマホ・セントリックな決済・金融体験を提供する「スマートマネー構想」の実現に向けて、フィンテックを活用した新サービスの研究を進めています。KDDIは2019年7月にディーカレットへ出資しており、今回の実証事業は「デジタル通貨ビジネスの推進および新たな顧客体験価値の創出」を目的として2020年2月に実施したディーカレットとの実証実験に続く取り組みとなるようです。
またディーカレットは今年8月6日に関西電力と共に、ブロックチェーン技術を活用した電力P2P取引における決済処理の自動化の実証実験を実施しています。
この実証実験を通して、両社はディーカレットが構築している「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」を活用し、関西電力向け実証実験用の独自デジタル通貨を発行し、電力P2P取引における決済処理の自動化について有効性を確認する事が出来たと併せて発表をしています。
今回のニュースでは8月に実績のあったプラットフォームを利用した実証事業となるようです。
コメント:大津賀新也(あたらしい経済)
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