日銀決済機構局長が中央銀行デジタル通貨(CBDC)検討について語る
日本銀行決済機構局の局長である木村武(きむらたけし)氏が、日銀による中央銀行デジタル通貨(CBDC)検討について朝日新聞のインタビューに応じた。7月28日同紙が報じた。
日銀は今月20日、決済機構局内にデジタル通貨発行の課題を探る専門組織として「デジタル通貨グループ」を創設しており、CBDCについて本格的に検討を開始した。
木村氏は日銀のCBDC検討に関して「日銀として当面の最優先事項の一つと位置づけて取り組む」「準備のステージから一段レベルを引き上げて検討を進める」と朝日新聞のインタビューに対し語っている。
また木村氏はCBDC検討の課題を「CBDCに求められる機能の要件を具体的に整理し、そうした要件を実装する際の技術面での実現可能性を実証実験などを通して検討していくことが課題になる」とも語っている。
ただしCBDCの発行について「現時点でCBDCを発行する計画はない」と回答しており、現段階では調査研究を進めていくとのこと。
具体的な研究内容として、ユニバーサルアクセス、災害時に電源などのない状況でも使える強靭性、セキュリティーといった技術的な実現可能性やプライバシー、マネーロンダリング対策なども研究していくとのこと。
実証実験の開始時期は未定だが、木村氏は「拙速を避けつつ、技術革新のテンポや民間の動きに後れをとることがないよう実験のタイムラインを検討していく」また「日銀単独ではなく、技術に詳しい民間の知恵を借りたい」と回答している。
また将来のCBDC導入に向けては「現金流通が減少すれば一つのシグナルになる」と説明をし、CBDC発行の意義を「キャッシュレス化が進み現金流通が減少することによる銀行預金への信認低下や中央銀行マネーへのアクセス機会減少への対策」であると語った。また一方でCBDCが発行された場合も「現金に対する国民の需要がある限り、中央銀行はその供給を維持することが大原則だ」と語り、現金がなくなることはないと強調している。
さらに世界各国におけるCBDC導入の状況については「デジタル通貨の覇権争いというよりは、それぞれの国がその国にとって望ましい決済システムを追求することが重要である」とも木村氏は語っている。
編集部のコメント
日銀が7月2日に公開をした「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」と題するレポートは網羅的で、具体的に深く考察されており、また日本銀行による中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実現可能性の高さを感じされる内容でした。CBDCが実現すれば、日本国民の満足度向上と政府運用コストダウンが望めるのではないでしょうか。
政府がオペレーションをする金融システムは、国民からお金を徴収するための設計がなされています。一方で政府から国民へお金を提供する設計は、上手に組み込まれていません。もしCBDCが実現すれば「どこに、いくら、いつ」お金を提供すれば良いか、より容易になると考えられます。
これからの民主主義社会において、政府も民間企業と同様に国民へサービス提供をすることは当たり前になっていくと考えられます。そうでなければ国民は民間企業を信認し続け、政府への信認は薄れていくでしょう。CBDCの実現は国民の満足度向上に繋がる可能性があると言ってもいいかもしれません。
また政府はGDPやマネーサプライを算出するためにアナログな形で帳簿や台帳を遡っていると思われます。CBDCが流通するようになればデータの管理が非常に容易くなり、さらに政府の予算計画と実績の比較も容易になり、政府の企画も行いやすくなり、政府の運用コストの削減に繋がるかもしれません。
コメント:竹田匡宏(あたらしい経済)
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