タイの中央銀行がデジタル通貨(CBDC)を大企業との取引に利用
タイの中央銀行であるタイ銀行(Bank of Thailand:BOT)が一部の大企業との取引に中央銀行デジタル通貨(CBDC)を利用したことを地元メディアThe Nationが7月16日報じた。
The Nationの報道によると、BOT副総裁のVachira Arromdee(ヴァチラ・アロムディー)氏が7月15日に開催されたメディア説明会で、BOTが開発したCBDCを既に一部の大企業との取引に利用を進めており、さらにその活用を拡大していくことを明かし、また9月には香港金融管理局(HKMA)との取引にCBDCの利用を開始する予定であると話したとのこと。
アロムディー氏はCBDCに対しての自身の考えを「金融取引の仲介者が不要になることで、商業銀行にマイナスの影響を与える可能性がある」とし、一方では「金融取引のコストを下げることにもなるだろう」と話したとのこと。
またアロムディー氏はCBDCの一般利用について「金融安定性への影響を含め長所と短所を慎重に検討する」と話したとのことだ。
編集部のコメント
タイ銀行(BOT)は2019年5月より共同CBDC研究プロジェクト「Project Inthanon(プロジェクトインタノン)」を開始しています。2020年1月には同プロジェクトの一環として香港金融管理局(HKMA)を始めタイと香港の銀行10行とともにクロスボーダーによるCBDC送金システムのプロトタイプの開発を行っています。
なお技術パートナーとしてR3も参加をしており、同システムにはcordaが基盤として利用されています。
またBOTは今年6月17日にタイの公的債務管理局によるブロックチェーンを利用した貯蓄債の発行の発表と、6月19日にはCBDCを利用した企業向け決済システムのプロトタイプを開発するプロジェクトを発表しており、タイ政府・タイ銀行ともに金融インフラのデジタル化を積極的に推進していることがうかがえます。
BOTメディア向け説明会資料:https://www.bot.or.th/Thai/AboutBOT/Activities/Documents/MediaBriefing2020/MediaBriefing_15072020.pdf https://www.bot.or.th/Thai/AboutBOT/Activities/Documents/MediaBriefing2020/MediaBriefSummary_Statement.pdf
コメント:大津賀新也(あたらしい経済)
(images:iStock/Irina-Shibanova)