米SECがステーブルコインの定義明確化。米ドル連動ステーブルコインは「非証券」

価格安定の仕組みも説明

米証券取引委員会(SEC)が、「ステーブルコイン」に関する公式見解を示す声明を4月4日発表した。その中でSECは、米ドルに1対1でペッグされ、交換可能な法定通貨または高流動性資産で裏付けられた「カバード・ステーブルコイン」は、「非証券」とみなし、取引報告義務の対象外になると述べた。

今回対象となる「カバード・ステーブルコイン」は、支払い・送金・価値保存を目的とした暗号資産であり、実物準備金または短期の低リスクかつ高流動性の金融商品によって完全に裏付けられている。発行者は、いつでも償還要求に応じられる体制をとっており、米ドルと1対1の比率で発行・償還されることが条件とされている。

発行者は必要に応じて、無制限にステーブルコインの発行および償還ができる。SECは、「この固定価格かつ無制限の発行・償還構造により、カバード・ステーブルコインの市場価格は米ドルに対して安定した状態を維持する可能性が高い」と説明している。

これは、ステーブルコインの二次市場における価格変動への対策とされており、この仕組みにより発行体や指定仲介業者は、市場価格と償還価格の差を利用した裁定取引(アービトラージ)が可能になるという。

たとえば、市場価格が償還価格を上回る場合、ステーブルコインを1ドルで発行者から新たに鋳造し、二次市場で高値で売却することで供給が増加し、価格が償還水準に近づく。一方、市場価格が償還価格を下回る場合には、市場で低価格で購入したコインを発行体に1ドルで償還することで供給が減少し、価格の回復が促される。

SECはこの裁定メカニズムについて、「市場の自然な均衡作用を通じて、ステーブルコインの価格は償還価値に近づきやすくなっている」としている。

またSECは、「カバード・ステーブルコイン」は商取引、支払い、送金、あるいは価値保存を目的として販売されるものであり、投資を目的としたものではないことを強調した。

さらに、これらのステーブルコインは保有者に対して、利息・配当・その他のリターンを提供するものではなく、発行者や第三者の財務パフォーマンスに基づく金銭的利益または損失を提供するものではないとしている。

SECは2月、フィギュア・マーケッツ(Figure Markets)社による利子付きステーブルコイン「YLDS」の申請を承認しており、申請書類において「YLDS」は有価証券として登録された。

SECは現在、準備金の管理と透明性、従来の金融システムとの統合、管轄区域の分断化など、ステーブルコインを巡るさまざまな規制課題に取り組んでおり、今回の公式見解はその規制環境の明確化に向けた重要な一歩となる。

参考:発表
画像:iStocks/taa22

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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