トランプ氏就任関連の価格下落は既発か
暗号資産(仮想通貨)取引所ビットメックス(BitMEX)の共同創業者で元CEOのアーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)氏が、1月7日に更新したブログにて、暗号資産の強気相場「トランプ・パンプ」が3月中旬から下旬まで続くだろうと予測した。
ブログのタイトルは「笹(Sasa)」。同ブログにてヘイズ氏は、次期米大統領ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の就任式の頃に市場が暴落するとした自身の12月の予測を撤回した。
ヘイズ氏はこの動きを投資家らが、暗号資産に好意的な政策転換への期待が非現実的であることに気づいたためだとしている。
なおヘイズ氏は今回のブログにて、トランプ氏就任に関連する市場暴落である「トランプ・ダンプ」は2025年1月中旬ではなく、2024年12月中旬から年末にかけて発生した可能性が高いと推測している。
ヘイズ氏は、トランプ政権による潜在的な政策の期待外れというリスクは、十分なドル流動性によってカバーできると述べた。
ヘイズ氏は「私は依然として、(トランプ陣営の政策実行に対する高い期待が)短期的には市場に重くのしかかる潜在的なマイナス要因であると考えているが、それに対してはドル流動性インパルスとのバランスを取らなければならない」とし、「ビットコインは、ドルの発行ペースが変化する中で、今しばらくは踊り続けるだろう。米国連邦準備制度(FRB)と米国財務省で権力を振るう金融官僚が、世界金融市場に供給されるドルの量を握っている」と続けた。
またヘイズ氏は、金融機関が連邦準備銀行に余剰資金を預けるレバレッジ・レポ取引(RRP)の減少により、今年第1四半期には2,370億ドル(約37兆円)相当の流動性が生まれると予想。ヘイズ氏は、RRPが第1四半期中にゼロに近づくとした。
FRBが量的引き締め(ドル流動性のマイナス要因)を継続する一方で、中央銀行がRRPの金利を引き下げたとヘイズ氏は述べた。
RRPが預け入れ先として魅力を失うにつれ、各機関は流動性を市場に注入する可能性がある。また、米国財務省は債務上限に直面しており、財務省一般会計の支出を余儀なくされるため、これもまた経済への流動性供給が見込まれると続けた。
さらにヘイズ氏は、第1四半期の終わりまでにFRBと財務省が供給するドル流動性の総額は6,120億ドル(約96兆円)に達すると予測。
そうなれば「デフォルトと政府機関閉鎖が差し迫った段階で、土壇場で合意が成立し、債務上限が引き上げられる」とし、その時点で財務省は再びネットベースで自由に借り入れができるようになり、当座預金口座(TGA)を再び補充することになるとヘイズ氏は説明した。
また、3月頃にはTGAが底をつくことになり、その後、債務上限の引き上げや4月15日の納税期限といったドル流動性のマイナス要因が続くことになるだろうとヘイズ氏は述べた。
なおヘイズ氏は、この分析の問題点は「ドルの流動性が世界的に見て最も重要な限界的な要因であると仮定している点」だとした。
その他の考慮事項としてヘイズ氏は、トランプ政権が政府支出を迅速に削減し、法案を成立させる能力や中国による人民元建て与信の額加速が行われるか否か、また日銀の政策金利などの世界的な要因を挙げた。
ヘイズ氏は、これらの主要なマクロ経済問題のどれも、あらかじめ知ることはできないが、RRPとTGAの残高が時間とともにどのように変化するのかという背景にある数字の計算には自信を持っているとし、「私の自信は、2022年9月から現在までの市場の動きによってさらに強まっている。RRP残高の減少によるドル流動性の増加は、1980年代以来の最速ペースでFRBや他の中央銀行が金利を引き上げているにもかかわらず、暗号資産と株式の急騰という直接的な結果をもたらした」と述べた。
またヘイズ氏は、自身が最高投資責任者を務めるファミリーオフィス「ミールストーム(Maelstrom)」のファンドのリスクテイクを奨励し、リスクレベルを「DEGEN(高リスクのトレード)」に引き上げるとした。
その第一歩として、急成長中の分散型科学(Decentralized Science:DeSci)分野に参入することを決定したことを報告。
「DeSci」とはWeb3が持つ分散型の技術を使い、既存の科学領域の問題解決を目指す取り組みを指す。
ヘイズ氏は、ミールストームがDeSciトークンへの投資を増やしたと述べ、具体的にはバイオプロトコル(BIO)、ヴィタダオ(VITA)、エイサー(ATH)、グロウトークン(GROW)、ピーエスワイオプションズ(PSY)、クライオダオ(CRYO)、ニューロン(NEURON)を購入したことを報告。
「もちろん何が起こるかわからないが、総合的には強気だ」と述べた。
参考:ブログ
画像:Reuters