LayerX研究開発チームのスケーラビリティ改善についての論文が国際会議にて採択

LayerX研究開発チームのスケーラビリティ改善についての論文が国際会議にて採択

株式会社LayerXの研究開発チームの論文が、2月14日にマレーシアで行われた国際会議「4th Workshop on Trusted Smart Contracts」に採択され、同会議にて発表を行ったことを2月27日同社プレスリリースにて発表された。

国際会議「Workshop on Trusted Smart Contracts」は、スマートコントラクトに関する技術的な課題・解決策や将来像を議論するための学際的ワークショップであり、例年ブロックチェーン関連ではもっとも論文数が多く、質の高い国際学会の一つであるFinancial Cryptography and Data Securityと併催されているとのこと。

今回同社が発表を行った同論文『Load Balancing for Sharded Blockchains』では、シャーディングによるスケーラビリティ改善の幅をさらに広げるべく、プロトコルによりアカウントの配置を自動で調整する、「ロードバランシング」のプロトコルを提案、実験により評価を行ったとのこと。

LayerX社の研究開発チームではブロックチェーンのセキュリティ、スケーラビリティの技術的課題解決に取り組んでおり、今回の研究は同社リードリサーチャーである岡南直哉氏と中村龍矢氏が中心となって実施し、同会議では中村氏が発表した。

今回の発表について岡南直哉氏は「本研究は、シャーディングに現れる好ましくない現象を緩和する解決策を提案しています。この解決策の構築には、私の強みであるアルゴリズムや最適化のバックグラウンドを活かせました。シャーディングには、まだまだ解決すべき様々な課題が存在しており、今後もそれら研究を通してブロックチェーンの技術発展の一翼を担いたいです(一部略)」とコメント。

同じく中村龍矢氏は「シャーディングはスケーラブルなブロックチェーンを作る上で期待のできる手法であり、Ethereumでも導入が目前に迫っていますが、まだ実際に本番稼働している訳ではなく、検証すべきこと・改善しうる部分がたくさんあります。今回発表したロードバランシングをはじめ、今後も色々な切り口からシャーディング技術の発展に貢献できればと思っています」とコメントしている。

編集部のコメント

今回のニュースを理解するうえで、用語の確認をしておきます。
ケーラビリティとは、システムが有する拡張性の事をいいます。 ビットコインやイーサリアムブロックチェーンなどでは、ブロックの中に書き込める取引データの量(トランザクション)が限られていることで引き起こす問題があり、主に(ノード数増加によるスケーラビリティ問題もある為)これをスケーラビリティ問題といいます。
そのブロックチェーンの利用者が増えれば増えるほどトランザクションの処理能力が低下し、送金の遅延や送金要求も承認されず、次回以降のブロック生成時に記録されるまで処理されず、その間放置され遅延等の事態が発生する問題のことです。特にパブリック型ブロックチェーンではユーザー数や取引量を制限する仕組みがないため、取引需要が高まるにつれ処理遅延を引き起こすようになりました。また、ユーザーが自らの取引を優先的にブロックに記録させるため検証参加者(ノード)に支払う手数料を引き上げ、その結果、取引手数料が上昇するという副次的な問題も発生しています。 スケーラビリティ問題の対応策として、オフチェーン処理、ブロックサイズ拡大、サイドチェーン利用による機能拡張、合意形成アルゴリズムの変更などがあります。

シャーディングとは、スケーラビリティ問題の解決策の一つです。ブロックチェーンを分割して複数のチェーンにより構成する手法のことで、ノードが役割分担をして並列的にトランザクションの処理をします。アカデミア・産業界共に注目されており、Ethereumコミュニティでは導入に向け研究開発が進められています。
プロトコルとは、コンピューター同士が通信をする際の手順や規約などの約束事のことです。

コメント:大津賀 新也(あたらしい経済)

(images:nisaul-khoiriyah)

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