デジタルカーボンクレジット決済に「JPYC(信託型)」活用の検討開始
「Progmat Coin(プログマコイン)」基盤を活用して発行されるステーブルコイン(SC)「JPYC(信託型)」を、デジタルカーボンクレジット(Dカーボン)決済に活用するための共同検討を開始した。三菱UFJ信託銀行、Progmat(プログマ)社、JPYC社、KlimaDAO JAPAN(クリマダオジャパン)、オプテージが5月21日発表した。
「プログマコイン」は、Progmat社提供のSC発行・管理基盤。また「JPYC(信託型)」は、JPYC社が「プログマコイン」を活用し、改正資金決済法上の電子決済手段に該当する日本円SCとして発行検討されている日本円ステーブルコイン。現状流通している前払式支払手段の「JPYC」とは異なり、電子決済手段に該当するため金銭による払い戻しが可能だ。
今回の共同検討では、KlimaDAO JAPAN開設予定のブロックチェーンを活用したDカーボンマーケットプレイス「KlimaDAO JAPAN MARKET」と「Progmat Coin」基盤が連携し、オプテージが企業向けインフラを提供することで、本邦初となる高い透明性・信頼性・効率性を担保したカーボンクレジットの企業間売買が実現可能を目指すという。
さらにKlimaDAO JAPANの本体であるKlimaDAOが既にグローバルで展開しているマーケットプレイス「Carbonmark」と連携し、決済に各種国産SCを用いることで、クロスボーダーで世界規模の流動性創出を目指すとのことだ。
発表によるとDカーボンは、KlimaDAO JAPANが企業・自治体から買い取ったJ-クレジット等に対する引渡請求権を、グローバルにアクセス可能なパーミッションレスブロックチェーン上のトークンとして発行するものだという。
当該ブロックチェーンにアクセスしDカーボンを管理するために必要な企業向けインフラをオプテージが提供し、銀行送金等での資金決済とすることで、まずは企業が取引参加しやすい環境で市場開設する想定とのこと。この取り組みは今年4月より進められており、「マーケットプレイス・フェーズ1」として位置づけられている。
そして今回開始した共同検討で目指す「マーケットプレイス・フェーズ2」では、国産SCである「JPYC(信託型)」での資金決済に対応するという。オプテージが提供する企業向けインフラでDカーボンに加えてSCも取扱可能とすることで、時間の制約なくいつでも参加でき、かつ透明性・信頼性の高いパーミッションレスブロックチェーン上で完結した当事者間取引が可能になるとのこと。
この「マーケットプレイス・フェーズ2」は、JPYC社が仲介者としてSCを取り扱うために必要な電子決済手段等取引業の登録を完了し、「JPYC(信託型)」の信託委託者としてのJPYC社および信託受託者である三菱UFJ信託銀行での提供準備ができ次第、2024年内の提供を目標としているとのことだ。
そして最終的に「マーケットプレイス・フェーズ3」では、クロスボーダーでDカーボンやSCを移転できるパーミッションレスブロックチェーンの特徴を活かし、KlimaDAO のグローバルマーケットプレイス「Carbonmark」と「KlimaDAO JAPAN MARKET」が連携することで、日本発のDカーボンの海外販売等も想定しているという。
また「フェーズ3」では、カーボンクレジットに加え、非化石証書を含むその他の環境価値についても取引可能な体制の構築に取り組んでいくことも想定しているようだ。「フェーズ3」は「フェーズ2」移行進められるとのこと。
カーボンクレジットの市場規模
発表によると全世界のカーボンクレジット市場規模は約39兆円超、そのうち企業や個人が自主的に購入するカーボンクレジットであるボランタリークレジット(VC)の市場は約450億円と現時点では規模が小さいものの、2030年には最大27兆円に達する可能性があり、成長ポテンシャルの高い市場になっているとのこと。日本だけでも、カーボンクレジット市場規模は2030年には3,000億円に達するとの予測もあるという。
日本では、2023年10月より東京証券取引所がJ-クレジットの売買市場を開設したものの、現時点で売買金額は限定的で、VCのマーケットプレイスは存在はしているものの、まだ開始したばかりで、流動性もそれほど高くないとのこと。
そのような中、今回KlimaDAO JAPANは、既にグローバルで展開されているDカーボンのマーケットプレイス「Carbonmark」の基盤を利用し、J-クレジットおよび日本発のVCに対応したDカーボンのマーケットプレイス「KlimaDAO JAPAN MARKET」を新たに開設し、段階的にグローバルベースの流動性を提供する計画であるとのことだ。
日本円ステーブルコイン「JPYC」信託型発行の検討について
三菱UFJ 信託銀行、Progmat(プログマ)社、JPYC社は昨年11月、「JPYC(信託型)」の発行検討開始を発表していた。
「JPYC(信託型)」は、接続ブロックチェーンとしてEthereum(イーサリアム)の他、複数チェーンへの拡張を想定しているという。「JPYC(前払式)」については現在イーサリアム、ポリゴン(Polygon)、シデンネットワーク(Shiden Network)、ノーシス(Gnosis)、Avalanche(アバランチ)、アスターネットワーク(Astar Network)のブロックチェーンに対応している。
改正資金決済法上、「USDC」等の海外籍発行者の発行する「海外SC」を仲介者として取り扱う電子決済手段等取引業者は、海外籍発行体の破綻リスクから顧客を保護するために、顧客から預託されたSCと同額の法定通貨を自己資金から拠出し保全しておく義務が課されているというが、プログマ社によると「JPYC(信託型)」では、顧客が自ら「セルフカストディウォレット」を用いて自己管理する場合等、SCの預託が発生しない仲介モデルも想定可能だと補足されている。
デジタルカーボンクレジット×ステーブルコイン(SC)×海外連携に向けた協業について、公式に情報公開しました!
— 齊藤達哉|Progmat(プログマ) (@tatsu_s1203) May 21, 2024
▼プレスリリースhttps://t.co/ADgTZujEmN
▼【速攻解説】カーボンクレジット×ステーブルコイン×海外連携!必要な情報全部まとめました(決定版)https://t.co/zJpli57bHF… https://t.co/UtSgllapg2 pic.twitter.com/4LaD7C98Rl
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参考:プログマ
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