設計・販売制度への違反で
オーストラリア証券投資委員会(ASIC)が、オーストラリアユーザーに暗号資産(仮想通貨)取引所クラーケン(Kraken)のサービスを提供するビットトレード(Bit Trade Pty Ltd)に対し、民事罰の手続きを開始したと9月21日発表した。
発表によればビットトレードは、同社の証拠金取引商品について適用される設計・販売(DDO:Product Design and DistributionObligations)義務を順守しておらず、また2022年6月にASICから懸念を通知されたにもかかわらず、同商品を提供し続けているという。
設計・販売義務のもとでは発行者は、投資目的、財務状況に応じ、消費者のニーズに一致する商品を設計する必要がある。さらに販売業者は、ターゲット市場に応じて金融商品を販売するために合理的な措置が講じられるよう、適切な統制整備を行うことが義務付けられている。
同義務はASICが2021年10月5日以降、準拠を求めていた。
ASICは、ビットトレードが同商品を顧客に提供する前にターゲット市場を決定していなかったと主張している。
またASICは、ビットトレードの証拠金取引商品は、特定の暗号資産売買に使用するための信用を顧客に提供するものであり、信用供与制度であると主張している。
一方ビットトレードはこれを「マージンエクステンション」と説明。ASICは、ユーザーは担保として使用する資産価値の最大5倍の信用供与を受けることができると指摘している。
ビットトレードは2020年1月からクラーケン取引所を通じてオーストラリアユーザーに証拠金取引商品を提供してきたという。
設計・流通義務の開始以降、少なくとも1160人のオーストラリア人顧客が証拠金取引商品を利用し、総額約1,295万ドル(約19億円)の損失を被ったとASICは主張している。
ASICは現在ビットトレードに対し、違反とされる継続的な行為を禁止する宣言、金銭的罰則、差し止めを求めている。
ASICは8月、投資プラットフォームのイートロ(eToro)のオーストラリア法人「イートロオーストラリアキャピタルリミテッド(eToro Aus Capital Limited)」を、差金決済取引(CFD)商品の設計・販売義務に違反しているとして提訴する意向を表明していた。
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参考:オーストラリア証券投資委員会(ASIC)
デザイン:一本寿和
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