米地方裁がバイナンスCZ氏へ召喚状発行、SEC訴訟めぐり

CZ氏に召喚状

ワシントンDCの米国地方裁判所が、大手暗号資産(仮想通貨)取引所のバイナンス(Binance)及び同社CEOのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏宛に召喚状を6月7日発行した。

召喚状には「あなたに対して訴訟が提起されている」と記載されている。なお召喚状が発行された場合、法的には応答することが義務付けられている。

また召喚状が送達された後、バイナンス及びCZ氏は21日以内に応答する必要があるという。またバイナンスらが応答しない場合、「債務不履行の判決が下されるだろう」と召喚状に記されている。

CZ氏は6月8日のツイートで「これはSECに準拠したプロセスの一部に過ぎないと聞いた。特に目新しいことはない。また、私が直接出頭する必要はないと言われた。FUDする必要はない」とコメントをしている。

なおFUD(ファド)とは、「恐怖(Fear)・不確実(Uncertainty)・疑問(Doubt)」の頭文字をとった「悪い噂」を意味する言葉で、暗号資産業界ではしばしば耳にする表現だ。FUDはユーザーにネガティブイメージを植え付け、不安や恐怖を煽ることで行動をコントロールし、暗号資産の価格や取引に影響する場合がある。

SECによるバイナンス提訴の流れ

バイナンスとCZ氏は6月5日、米証券取引委員会(SEC)より提訴されている。

SECは、バイナンスが取引量を人為的に膨らませ、顧客の資金を流用した他、米国の顧客が国外の交換所で取引できるようにし、市場規制について投資家に誤解を与えたなどと指摘。ワシントンDCの連邦裁判所に提出された訴状には、バイナンスとCZ氏、同社の米交換所運営会社に対する13の容疑が記載されていた。

またSECは、CZ氏が所有する会社が約3年前から2022年6月までの期間にて、ウォッシュトレードを行い、米暗号資産取引所「バイナンスUS」上の暗号資産証券の取引量を人為的に膨らませていたとも指摘している。

これに対しバイナンスはSECの申し立てに反論。「バイナンスは米国の交換所ではないため、SECの措置が及ぶ範囲は限られる」と指摘し、「バイナンスとバイナンスUSを含む系列プラットフォームの顧客資産は全て安全だ」と強調した。

しかしSECは6月6日、バイナンスUSの関連資産凍結をワシントンDC地方裁判所に緊急要請。

これを受けバイナンスUSは6月7日のツイートにて、「仮処分の申請は不当」だと指摘。「ユーザーの資産は安全であり、プラットフォームは完全に稼働しており、入出金は通常通り行われている」と伝えている。

なお関係筋によるとバイナンスは、マネーロンダリング(資金洗浄)と制裁違反の疑いで司法省の調査も受けているという。

関連ニュース

参考:召喚状
デザイン:一本寿和
images:Reuters

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

【11/22話題】SECゲンスラー委員長が退任へ、金融庁が暗号資産・ステーブルコイン仲介業の新設検討など(音声ニュース)

米SECゲンスラー委員長が来年1月に退任へ、功績評価の一方で反発や批判も、金融庁、暗号資産・ステーブルコイン仲介業の新設検討=報道、国民・玉木代表が税制改正要望を与党に提出、暗号資産への申告分離課税導入など提案、米裁判所、SECの「ディーラー」定義めぐる訴訟で関連規則を破棄するよう命じる、リミックスポイントが5億円でBTC・DOGE・XRP購入、投資総額30億円に、マスターカードとJPモルガン、ブロックチェーン決済ソリューションを連携 、コインベースが「WBTC」取扱い廃止へ、背景にジャスティン・サンの影響か、2019年のアップビットのハッキングは北朝鮮ハッカー関与か、韓国警察が特定、米ドルステーブルコイン「FDUSD」、スイに対応開始、Injective、オンチェーンAIエージェントSDK「iAgent」リリース

Sponsored

ビットワイズ、「ソラナ現物ETF」を上場申請

米暗号資産(仮想通貨)運用会社ビットワイズ(Bitwise)が、ソラナ(Solana)を基盤とするETF(上場投資信託)の上場申請を、米国証券取引委員会(SEC)に提出したと11月21日発表した。なおこの申請は、株式取引所シーボーBZX取引所(Cboe BZX exchange)を通じて行われたとのこと。またビットワイズは発表上で同商品についてETP(上場取引型金融商品)と記載している

マスターカードとJPモルガン、ブロックチェーン決済ソリューションを連携

米決済大手マスターカード(Mastercard)のマルチトークン・ネットワーク(MTN)が、米銀行大手JPモルガン(JP Morgan)のブロックチェーン基盤決済システム「キネクシスデジタルペイメント(Kinexys Digital Payments)※旧オニキス(Onyx)」と連携したと11月21日発表した