シンガポール金融管理局、暗号資産取引業者への規制強化案発表
シンガポール金融管理局(MAS)が、暗号資産取引業者への規制強化案を含む協議報告書を10月26日に公開した。
今回公開された協議報告書では、今年5月に起きた、ステーブルコインUSTの価格崩壊を起因とするレンディングプラットフォームやヘッジファンドの相次ぐ破産を受け、個人投資家の保護に主眼を置いた規制強化案が盛り込まれている。
なお規制の内容は、大きく分けると「リスクに関して無知な顧客の市場参入を防ぐための規制案」と「暗号資産取引業者の運営体制に関する規制案」の2つとなっている。
「リスクに関して無知な顧客の市場参入を防ぐための規制案」は以下の通り。
(1)顧客が暗号資産取引のリスクを認識しているかの確認。また、顧客に正しくリスクを認識させるための教材等の配布
(2)無料トークン配布などのインセンティブ提供の禁止
(3)クレジットやレバレッジを利用した、予算を超える取引の禁止
また「暗号資産取引業者の運営体制に関する規制案」は以下の通り。
(1)顧客の資産と自社の資産の分離
(2)手数料などの取引条件や資産管理状況の明示
(3)顧客の資産の貸出や抵当への設定の禁止
(4)利益相反の防止
(5)顧客の苦情に対応するための適切な苦情処理部門の設置
(6)金融機関レベルのリスク管理要件の義務付け
上記の規制案が施行された場合、暗号資産取引業者の負担はかなり大きくなり、顧客の取引にも大幅な制限が加えられることになる。
協議報告書に記載された内容はあくまでMASからの提案であり、これらの案が直ちに施行されるわけではない。MASは今回の規制案に対するコメントを12月下旬まで募集している。
またMASは、今回の協議報告書と同時にステーブルコインについての規制案も発表している。こちらはシンガポールドルまたは主要10通貨(USD・EUR・GBP・JPY・AUD・NZD・CAD・CHF・NOK・SEK)を裏付けとするステーブルコインのみの発行を許可し、準備金を自社資産と分離して管理することを義務付ける内容となっている。
MASは個人投資家による暗号資産取引のリスクの高さに懸念を抱いているようだ。今年1月にMASは、暗号資産取引業者に対して広告活動を制限する規制を導入している。これにより、暗号資産取引業者は自社ウェブサイト、アプリ、SNSアカウント以外を使って宣伝することができなくなった。また、この影響でシンガポール国内の暗号資産を扱うATMも閉鎖されることとなった。
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参考:MAS
デザイン:一本寿和
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