米銀行規制当局、フィンテック普及によるリスク警告
フィンテックサービスやデジタルバンキングの台頭は、金融リスクに拍車をかけ、長期的には危機に陥る可能性があると、米国の大手銀行規制当局である通貨監督庁のマイケル・シュー(Michael Hsu)長官代理が9月7日に警告した。
同氏はニューヨークの会議で、「フィンテックとビッグテックは大きな影響を及ぼしており、私たちの注意をもっと喚起していく価値があると思う」とし「銀行との提携を含め、フィンテック企業の従来の金融部門への侵食が、銀行部門全体にさらなる複雑性と非統合を生み出している」と指摘した。
そして同氏は「このまま放っておくと、深刻な問題、あるいは危機的状況に陥るまで、このプロセスは加速し、拡大する可能性が高いと私は強く感じている」と伝えた。
銀行とテック企業は、シームレスな顧客体験を提供するために、規制当局がどこからが銀行でどこからがテック企業かを区別することがより困難になるような方法で提携しているという。また資金調達コストの上昇に伴い、フィンテック企業の評価額が下がっているため、銀行とフィンテックの提携はますます増えているとのことだ。
さらに同氏は「その結果、情報セキュリティやレジリエンスをめぐるITリスクが発生する可能性があり、顧客保護の問題も出てくる」と指摘した。
「未知なるものについてますます心配になり、このデジタル移行に伴うあまり馴染みのないリスクがラベル付けされておらず、そのため目に見えないのではないかと懸念している。2008年の金融危機で学んだように、目に見えないリスクは大きくなる傾向があり、後に厄介な事態を引き起こす元凶となる」と同氏は説明した。
以前、元通貨監督官のジーン・ラドウィグ(Gene Ludwig)氏も、フィンテックに対する規制は銀行に対する規制よりはるかに緩いと警告している。現在、ベンチャーキャピタル会社Canapi Venturesのマネージングパートナーであるラドウィッグ氏は、「銀行免許を持たないフィンテック企業が野放しになっている」と語った。そして同氏は「そのようなフィンテック企業は何か手を打たなければ、次の金融危機に巻き込まれる」と予測した。
米国の規制当局は、銀行が暗号資産(仮想通貨)市場に参入することに慎重になっている。暗号資産が、金利引き上げによって、お金の価値が相対的に低い時代が終わるのではないかという懸念から、ここ数カ月低迷している。そしていくつかの暗号資産関連企業が破産を申請している。
シュー氏は、今回の暗号資産業界の混乱は、問題を抱えた相互接続された業界に対する「古典的な競争のすべての特徴を持っている」とし、「市場は非常に誇大広告に溢れている」と注意を促した。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
翻訳:竹田匡宏(あたらしい経済)
images:Reuters
(Reporting by Lananh Nguyen and Saeed Azhar; writing by Michelle Price; Editing by Chizu Nomiyama and David Gregorio)