シンガポール、個人投資家に向け暗号資産取引規制強化の検討へ
シンガポールの中央銀行であるシンガポール金融管理局(MAS)が、個人投資家に向け暗号資産取引に関する新たな規制を展開する方針を示した。
シンガポール金融管理局(MAS)のラヴィ・メノン(Ravi Menon)専務理事は、8月29日のイベントで「ある調査によれば、私たちの警告や対策にもかかわらず消費者は急激な価格上昇の見込みに惹かれ、シンガポールだけでなく世界的に暗号資産の取引を増やしている」と述べた。
また同氏は「彼らは暗号資産取引のリスクについて、非合理にも気づいていないようだ」とし、「暗号資産投資の一般投資家へのアクセスに摩擦を加えることを考えている」と説明を加えた。
「デジタル資産のイノベーションにイエス、暗号資産の投機にノー」と題したセミナーで、さらに同氏は「これらは顧客の適合性テストや暗号資産取引におけるレバレッジや信用枠の使用を制限することも含まれる」と伝えた。
シンガポールは、暗号資産への歓迎の姿勢から、ここ数年、中国やインドなどからデジタルアセットサービス関連企業を誘致し、アジアにおける主要な金融ハブとなっている。
しかし、最近シンガポールに拠点を置く一部のグローバルな暗号資産関連企業が債務危機に陥り、その多くが消費者保護や市場行為に関する金融規制当局のガイドラインの対象外であることから、規制強化への懸念が広がっている。
MASは10月までにこの提案について国民からの意見を求める方針で、現在世界中の規制当局で暗号資産に関する規制の見直しが進められているとつけ加えた。
MASは今年1月に、暗号資産取引サービスプロバイダーが一般にサービスを宣伝することを制限するガイドラインを発表している。米国の利上げとインフレの進行により投資家がリスク資産を手放したため、暗号資産は今年に入ってから急落している。
メノン氏は「MASのデジタル資産活動に対する促進的な姿勢と、暗号資産投機に対する制限的な姿勢は矛盾するものではない」と述べている。
米国の暗号資産取引所ジェミナイ(Gemini)と、当初は中国に焦点を当てた暗号資産取引所フォビ(Huobi)は、シンガポールで大きな存在感を示している企業だ。
なお2020年に新体制のもと、約180の暗号資産企業がMASに暗号資産に関する決済ライセンスを申請したが、シンガポールは現在も続く精巧なデューデリジェンスプロセスの後、これまでに24企業にしかライセンスを与えていない。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
(Reporting by Anshuman Daga and Yantoultra Ngui; Editing by Kanupriya Kapoor and Jacqueline Wong)
翻訳:竹田匡宏(あたらしい経済)