AI VTuberのピクトリア、web3系海外VCらから1.2億円調達
VTuber事業を展開するピクトリア(Pictoria)が、web3系の海外VCらから1.2億円を調達したことが、5月31日に分かった。調達資金は、採用やプロジェクト促進に活用していくようだ。
ピクトリアは、2017年からVTuber事業を展開している。独自のAI技術を活用しVTuberを完全無人で育成・配信活動をしていくプロジェクト「AI VTuber」を運営し、今年からNFT事業を開始した。「AI VTuber」である「紡ネン(つむぎねん)」のNFTプロジェクト「NEN」6月中に販売する予定だ。
また今後はNFT・トークンを活用した、他オリジナルIPの創出なども行っていく予定だという。
なお今回の調達に参加した投資家は、ハッシュグローバル(Hash Global)、マスクネットワーク(Mask Network)、元フェンシング選手でIOC委員の太田雄貴氏、スカイランドベンチャーズ(Skyland Ventures)、XTech Ventures、90sだ。ちなみに海外投資家からは、米ドル担保のステーブルコイン「USDC」を活用して、資金調達したとのことだ。
ハッシュグローバル創業者のSK氏は、次のようにコメントしている。
「この度、Skyland Ventures、Mask Networkとともに、ピクトリアの資金調達に参加することができ、大変嬉しく思っています。 私たちはweb3系VCとして、web3技術をフルに活用し、かつクリエイティブに秀でたチームを探すことに多くの時間を費やしてきました。私たちのメンバーは日本の漫画やアニメーションのファンで、以前からNFT/web3分野で優れた日本の起業家を探していました」
ピクトリア代表取締役CEO明渡隼人氏へ取材
「あたらしい経済」編集部は、ピクトリア代表取締役CEOの明渡隼人氏へ取材をした。
−−なぜ事業ドメインをweb3やクリプトに移したのでしょうか?
幼少期からいわゆる無類の「アニメ・ゲームオタク」でした。その原体験もあり、エンタメ領域で、独自の価値を創っていきたいという想いがずっとありました。これが2018年というVTuber黎明期に、私がVTuber事業を始めた最も大きな理由です。
ただ、どうせなら小さな企画屋に収まりたくないし、オリジナリティのない単なる模倣者にはなりたくないと常に考えてきていました。
そんな中、グローバルの認知がほぼゼロのIPでも、世の中に一気に普及させられる可能性があるNFTというトレンドがやってきました。
Pictoriaが今まで築いてきた独自の強みを活かしつつ、日本のIPを世界に輸出する、新しいコンテンツ創出のスタンダードを築いていけるのではと考え、研究し始めたのがきっかけです。
正直、VTuber・クリエイター業界において、まだまだNFTやWeb3に批判的な意見もあることも事実です。ただ、これはVTuber業界においてLive2Dが揶揄されていた黎明期の世相に似ているなと思っています。
これはつまり、黎明期に先を読んだところだけが業界のスタンダードを定義できるということです。まだまだ賛否両論入り混じる中、この領域で真っ先にコンテンツを出していけることが非常に楽しみです。
−−VTuberとNFTを掛け合わせることで、どんな未来を創っていきたいのでしょうか
まず、VTuberを活動者と定義させてください。(VTuberとAI VTuberを総称した呼び方です)そして、活動者において、NFTに取り組むべき理由は、「共創」にあると思っています。
まず、活動するためにはお金が必要です。そして取り組み続ける話題やコンテンツが必要です。NFTホルダーが、お金と少しのアイデアを活動者に提供することによって、活動者を中心とした持続可能なコンテンツ供給体制が実現すると考えています。
活動者やクリエイターには感情がありますので、それを無視して全てをお金の論理で物事を語ると、面白いものができません。一方で、一切お金のことを考えず活動することもできません。
NFTはあくまで思想に賛同した個人がお金を出すという点で、コンテンツへの応援としてのお金を集めることができる秀逸なシステムだと考えています。そして、グローバルで成功することを常に本気で狙い続けるポジションも与えてくれます。
この仕組みが普及すれば、日本発の活動者や原作IPが、広くグローバルで余裕を持って活動していけるのではないかと考えています。日本発IPがグローバルで持続可能なコンテンツを提供する仕組みを作り、多くのクリエイターや活動者をエンパワーしていきたいと考えています。
デザイン:一本寿和
images:iStocks/designer491