ICOトークン発行及び保有に係る会計処理について、ASBJがレポート公表

ICOトークン発行及び保有に係る会計処理について、ASBJがレポート公表

企業会計基準委員会(ASBJ)が、ICO(Initial Coin Offering)トークンの発行及び保有に係る会計処理に関するレポートを3月15日に公表した。

レポートのタイトルは「資金決済法上の暗号資産又は金融商品取引法上の電 子記録移転権利に該当するICOトークンの発行及び 保有に係る会計処理に関する論点の整理」だ。

レポート公表の背景には、2019年11月に公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、金融商品取引法上の電子記録移転権利又は資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行・保有等に係る会計上の取扱いの検討を求める提言がなされたことがあるようだ。

このレポートでは主要な論点として「1.基準開発の必要性及び緊急性、並びにその困難さ、2.ICOトークンの発行者における発行時の会計処理、3.資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行及び保有に関するその他の論点、4.電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有に関する論点」が取り上げられている。

またレポートの公表目的は、トークンの発行及び保有に係る取引に関する会計基準を整備していく一環として、関連する論点を示し、基準開発の時期及び基準開発を行う場合に取り扱うべき会計上の論点について関係者からの意見を募集することだという。

まず論点「1.基準開発の必要性及び緊急性、並びにその困難さ」については、暗号資産業界の関係者らからの意見を集めて、いつ会計基準を開発するべきか検討していきたいとのことだ。

次に「2.ICOトークンの発行者における発行時の会計処理」についての主論点はICOトークンの発行取引の実態をどう捉えるべきかとし、発行処理は「発行者が何ら義務を負担していない場合」と「発行者が何らかの義務を負担している場合」に分類できるとした。

前者の場合「発行者は、何ら義務を負担していないことから認識すべき負債は存在しないと考えられ、対価の受領時においてその全額を利益に計上することが考えられる」とした。つまり会計上はトークン発行時に、売上として認識する必要がないと考えられる。

また後者の場合はトークンの発行時に利益(又は損失)が生じ得る会計処理を定めることが考えられるとした。

そして「3.資金決済法上の暗号資産に該当するICO トークンの発行及び保有に関するその他の論点」に関しては「ICOトークンの発行時において自己に割り当てたICOトークンの会計処理について、第三者が介在していない内部取引として会計処理の対象としない方法」と「会計処理の対象として会計上の資産及び負債(発行者が何らかの義務を負担している場合)を計上する方法のいずれによるべきかが論点となる」としている。

また「ICOトークンの発行後において第三者から取得した ICOトークンの会計処理について、関連する負債の消滅又は控除として取り扱う方法」と「資産として取り扱う方法のいずれによるべきかが論点となる」とした。

今後の方向性としては発行時に自己に割り当てたICOトークンについては「第三者が介在していない内部取引に該当するとして、会計処理の対象としないことが考えられる」としている。

ICOトークンの発行後において第三者から取得した場合の会計処理については「自己株式を取得した場合の会計処理との整合性、及び自己が発行したICOト ークンを取得することに伴い、当該 ICOトークンに係る発行者の義務が自己に対する義務に実質的に変化するという状況を重視し、ICO トークンの発行後に第三者から当該ICO トークンを取得した場合、関連する負債の消滅の認識を行うこととし、当該負債の計上金額と取得したICOトークンの取得原価が異なる 場合には、差額を損益として処理する方法を適用することが考えられる」と説明されている。

最後に「4.電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有に関する論点」については次のように分類されている。

4-1株式会社以外の会社に準ずる事業体等における発行及び保有の会計処理
4-2株式又は社債を電子記録移転有価証券表示権利等として発行する場合に財又はサービスの提供を受ける権利が付与されるときの会計処理
4-3暗号資産建の電子記録移転有価証券表示権利等の発行の会計処理
4-4組合等への出資のうち電子記録移転権利に該当する場合の会計処理

具体的には、株式以外者以外の会社に準ずる事業体等が、暗号資産を発行した場合や出資を受けた場合の会計処理を定める必要性などについて説明されている。

特に論点2を鑑みれば、トークンの発行体はそのトークンを発行しただけでは、会計上、売上として処理する必要がないようにも考えられる。

ただ会計と税務の認識は異なることから、どのように税務上認識されるのかは定かではない。

また企業会計基準委員会(ASBJ)は、この論点整理レポートで取り上げた論点に関する意見(パブリックコメント)を6月8日まで受け付けるとのことだ。

参考:ASBJ
images:iStocks/ismagilov・Svetlana-Borovkova
デザイン:一本寿和

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

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