東京海上、トレードワルツら、貿易決済にデジタル通貨活用
東京海上日動、NTTデータ、スタンデージおよびトレードワルツが、デジタル通貨を活用した新たな貿易決済の仕組み実現に向け、実証実験を実施したことが分かった。
貨物の代わりとして用いる電子B/L(船荷証券)とデジタル通貨の同時交換を出来るようにすることで、貿易決済における債務不履行のリスクや、銀行・保険・ファクタリング等によるリスクヘッジのコストなどを低減するという。
実証実験は今年の8~12月の4か月間にて行われ、その結果来年度の事業化への確証は得られたとのこと。
従来、貨物の代わりに用いるB/L(船荷証券)と代金は、輸出者と輸入者が離れていることから同時交換できなかったとのこと。
しかし、ブロックチェーン技術や法改正によってB/Lの電子化は認められつつあり、また暗号資産(仮想通貨・デジタル通貨)についても中央銀行デジタル通貨(CBDC)として開発され実用化への動きに向かっている。現在、双方の国際的な普及により、同時交換が実用化される可能性は高まっており、今回の実証実験に至ったようだ。
発表によると、この仕組みが実用化すればコストとリスクの削減の他、代金前払いに応じてもらえなかった中小企業の貿易取引が活発化することや、債権債務の同時履行によって貨物の所有移転が明確になることで、債権債務履行の時間差ゆえに生じていた、国際売買契約や法律上の問題が解消されることで、貿易の平易化が見込めるとのことだ。
実証実験には、ブロックチェーンを活用してB/Lや保険証券・Invoice等を電子化する貿易情報連携プラットフォーム 「TradeWaltz(トレードワルツ)」が提供されたほか、暗号資産の移転技術をスタンデージが提供、また複数のブロックチェーンのインターオペラビリティ(相互運用)技術をNTTデータが提供したという。
あたらしい経済編集部がNTTデータへ「インターオペラビリティ」の技術について確認を取ったところ、「現段階では非公表」との回答を得た。
なおNTTデータはDatachainと今年3月より、ブロックチェーン間のインターオペラビリティ実現に向け技術連携を開始しており、インターチェーン財団およびCosmosプロジェクトによって策定が進んでいる、ブロックチェーン同士の相互運用性を担保するための仕様標準「IBC:Inter-Blockchain Communication」を用いた実証実験を進めている。
また東京海上日動へ、今回の取り組みの役割について聞いたところ「本仕組みのアイデアの発案は、当社の貿易関連の保険の担当部署です。そのため、その後の本実証実験についてもNTTデータ社などと一緒に取り組んでおります」と回答を得た。
また東京海上として本取り組みに参加するメリット・理由については「本仕組みが実用化されれば貿易取引の活発化が期待されます。貿易に伴う損害保険は本仕組みを導入しても無くなるものではなく、むしろ取引が活発化すれば当社が提供する保険取引も同じく伸長していくことが見込めます」と回答を得た。
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【取材追記】DatachainがNTTデータとブロックチェーン間のインターオペラビリティ実現に向け技術連携(Datachain事業開発シニアマネージャー 石川大紀氏)
参考:東京海上日動
デザイン:一本寿和
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