円建て民間デジタル通貨、22年実用化へ
74の企業・銀行・自治体・団体が参加する「デジタル通貨フォーラム」が、円建てのデジタル通貨「DCJPY(ディーシージェイピーワイ)」の2022年度中の実用化を目指し、今年度中に概念実証(PoC)を開始予定であることが11月24日分かった。「DCJPY」のホワイトペーパーと進捗状況を報告するプログレスレポートが公表された。
「デジタル通貨フォーラム」は国内暗号資産(仮想通貨)交換業者ディーカレットが事務局を務め、3メガバンク・NTTグループ・KDDIらが立ち上げた。現在では xID(クロスアイディー)、Securitize Japan(セキュリタイズジャパン)、HashPort(ハッシュポート)、BOOSTRY(ブーストリー)といったブロックチェーン関連企業や、オブザーバーとして金融庁、総務省、財務省、経済産業省、日本銀行が参加している。
「デジタル通貨フォーラム」が公表したレポートによると、現在フォーラム内に設置された10の各分科会によって「DCJPY」のPoCを見据えたユースケースの検討が行われているという。各分科会には電力P2P取引、セキュリティトークン、地域通貨、サプライチェーン、エンタメ領域へのデジタル通貨の活用の検討や電子マネーとの連携、セキュリティといった分野があげられている。
「DCJPY」について
ホワイトペーパーによると「DCJPY」は民間銀行が債務として発行することを当面前提としており、かかる債務は「預金」と位置付けられることを想定しているという。
また発行される「DCJPY」の単位は1円が最小単位となるようだ。単位未満の資金決済のニーズがある場合の取扱いについては引き続き検討するとのこと。また「DCJYP」は決済用預金に属する性質のものであり、付利は行われず、全額預金保険の保護対象となる想定とのことだ。
また「DCJPY」には「二層構造」の特性がある。「DCJPY」を発行・送金・償却するために「共通領域」と「付加領域」が設けられており、これらを連携させる仕組みには、ディーカレットが提供する「二層構造デジタル通貨プラットフォーム」が用いられている。
「共通領域」では「DCJPY」の残高を記録する元帳の管理、およびそれらに付随する業務を行うための機能や、民間銀行がデジタル通貨を発行するにあたり各銀行のシステムと連携するための仕組みなどが提供される。
パーミッション型ブロックチェーンによって構成されており、また相互運用性(インターオペラビリティ)の確保もされており、他のブロックチェーンとの間でデータのやり取りを行うことも可能であるとのことだ。
「付加領域」ではビジネスニーズに応じて事業者がスマートコントラクトを開発し導入することができるという。既存のシステムとデジタル通貨プラットフォームを連携させることができ、支払決済と物流・商流などとのリンク、モノやサービスと資金との同時受け渡しDvP(Delivery versus Payment)などが可能となり、また独自トークンの発行もできるとのことだ。
NFT分科会がPoC概要を発表
またホワイトペーパー公表にあわせ「デジタル通貨フォーラム」のNFT分科会が「DCJPY」のPoCについての概要を発表した。
なおNFT分科会は凸版印刷、KDDI、NTTドコモ、HashPort、ディーカレットの5社によって設立されている。
PoCではデジタル通貨を管理する「共通領域」とデジタル通貨決済を実現する「付加領域」によって構成される「二層構造デジタル通貨:DCJPY」の流通を検証するという。
「付加領域」におけるデジタル通貨はHashPortの子会社であるHashpaletteの独自ブロックチェーン「パレット(Palette)」で発行され、「共通領域」におけるデジタル通貨はディーカレットの「二層構造デジタル通貨プラットフォーム」で発行される予定とのこと。
「パレット」上に構築したNFTマーケットプレイスにて販売されるNFTをデジタル通貨で決済することを想定しているとのことだ。
なお凸版印刷はPoCで利用するNFTマーケットプレイスの提供、KDDIは共通領域におけるデジタル通貨の発行、NTTドコモはマーケットプレイス上で販売されるNFTコンテンツの提供を行うとのことだ。
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参考:ディーカレット・ホワイトペーパー・プログレスレポート
デザイン:一本寿和
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