JPYC、USDCのサークルらから5億円資金調達
日本円ステーブルコイン「JPYC(JPY Coin)」を取り扱うJPYCが、シリーズAで約5億円の資金調達を行なったことが11月10日に分かった。このシリーズAラウンドはHeadline Asiaをリード投資家として、Circle Ventures、i-nest capitalが参加した。
Headline Asia(旧称:インフィニティ・ベンチャーズ)は、アジアを中心に4つのファンドで累計300億円を運用するグローバルな独立系ベンチャーキャピタルファンドだ。またCircle Venturesは米ドルに連動したステーブルコイン「USDC」を発行するCircleのベンチャー・キャピタル部門。
発表では、調達した資金を活用して「JPYC」の発行体としての安定化、運営力・開発力の強化、第三者型前払式支払手段の取得を目指していくとのことだ。
なおJPYCは8月に販売金額が1億円に達したことを発表していた。なお現時点では3億円を超過しているとのことだ。
現在クロスチェーンに展開しており、イーサリアムメインネット(Ethereum Mainnet)、ポリゴン(Polygon/Matic Network)、エックスダイ(xDai)、クサマ(Kusama)の紫電ネットワーク(SDN)に対応している。
Headline AsiaのPartnerの田中 章雄氏とSenior Associateの林政泰氏は次のように発表にてコメントしている。
「弊社Headline Asiaはブロックチェーン技術とトークンエコノミーによって構築されるWeb3.0の時代が来ることを確信しています。一方で、日本では個人も機関投資家もまだまだ仮想通貨を使ったトークンエコノミーへの参加ができていない現状を問題視しています。
そんな現状を大きく変える可能性を秘めている日本円ステーブルコイン『JPYC(JPY Coin)』を発行しているJPYC社にリード投資家として出資できることを、大変光栄に思います。今後Headline Asiaは、米ドルステーブルコイン『USDC』を発行しているCircle社と、国内外のスタートアップへトークン投資を行っているInfinity Ventures Crypto(IVC)と共に、JPYC社の挑戦に伴走したいと思います」
Circleの創業者兼CEOであるジェレミー・アレア(Jeremy Allaire)氏は次のようにコメントしている。
「JPYCはCircle Venturesが求めている革新性と粘り強さを持ち合わせています。JPYCチームは新しい発想で法規制を遵守しつつ、 デジタル通貨の価値・良さを引き出していると思います」
i-nest capitalの代表パートナーの山中卓氏とプリンシパルの放生會雄地氏は次のようにコメントしている。
「『JPYC(JPY Coin)』は、厳格な国内法令規則の中から生まれた革新的なプロダクトとして、コミュニティにも支えられながら急成長してきました。
今後、第三者型前払式支払手段の発行が認められた場合には、『JPYC(JPY Coin)』が国民生活の利便性を向上させ、我が国のデジタル社会の実現に向けて大きな役割を担っていくことが考えられます。
既に『USDC』を発行・普及させているCircle社も株主に加わり、JPYC社が日本におけるパブリックチェーンエコシステムの起点となる存在として、より一層国内外の他のプロジェクトに対して良い影響を与え合っていくことを期待しております」
JPYC代表取締役の岡部典孝氏へ取材
あたらしい経済編集部は、JPYC株式会社の代表取締役の岡部典孝氏へ取材を行った。
−今回の調達について岡部さんの率直なお気持ちはどのようなものでしょうか?
今回世界的な投資家ネットワークを持つHeadlineさん及びUSDCを発行するCircleさんに資本参加して頂き、日本円ステーブルコインが世界で認められるためのスタートに立つことができました。既存投資家のi-nest Capitalさんにも追加投資頂きました。社会のジレンマを突破する為に、さらに加速していきますので応援よろしくお願いします!
−「USDC」を発行するCircleから出資を受けたことで、今後御社にとってメリットや連携の可能性があると考えてますか?
USDCを知らない業界の人はいませんので、様々なDeFiプロジェクトで代表的な日本円建ステーブルコインとして自発的に使われる動きが加速すると期待しています。弊社はUSDCでJPYCを買えるようにしたり、USDCを使って日本で納税したりと様々な連携を考えていますが、詳細は今後の発表を楽しみにお待ちください。
−今後の御社はどのようにサービスを展開していこうと考えてますか?
今回の資本調達により今後第三者型登録を申請し、手数料0の加盟店ネットワークと精算システムを社会実装するつもりです。また、金融機関保証を受けることで万一弊社が破綻してもJPYC利用者に資金決済法に基づいて配当されるようになり、より安心して使ってもらえるようにしたいです。
JPYCは既にVISAプリペイドのVプリカギフトに等価交換することで様々なVISA加盟店等で活用して頂けますが、今後は日本を代表するステーブルコインとして世界中の人に使ってもらえるようにこれからも利用シーンを増やしてまいります。
参考:プレスリリース
デザイン:一本寿和
images:iStocks/BadBrother