名和晃平の「White Deer (Oshika)」がNFTに
現代アートのグローバルマーケットプレイス事業を展開するTRiCERA(トライセラ)が、彫刻家・名和晃平氏の彫刻作品「White Deer (Oshika)」のNFTを販売することが分かった。
「White Deer (Oshika)」は、日本古来の神話の中で描かれる「神鹿(しんろく)」を現代の技術を用いて再解釈した名和氏の彫刻作品。宮城県石巻を舞台に開催された総合芸術祭「Reborn-Art Festival 2017」にて発表され、鹿が多く生息する牡鹿半島の荻浜地区に設置されている、全長6メートルを超えるパブリックアートだ。
この作品「White Deer (Oshika)」の原盤の3Dデータ(.objファイル)と、コンセプトムービー(.mp4ファイル)、ドキュメントムービー(.mp4ファイル)を含むデータパッケージがNFTとして販売されるとのこと。
このNFTは11月12日22時から19日22時までの期間、「NFT “White Deer” 特設サイト」にてオークション形式で販売される予定だ(日本時間)。
なお現在アート作品のNFT化は多くみられるが、TRiCERAによるとパブリックアートのNFT化は世界発の事例とのこと。
「あたらしい経済」編集部がTRiCERAに取材したところ、このNFTがミント(鋳造/発行)されるブロックチェーンは「Ethereum on Zora Protocol(Zoraプロトコル上のイーサリアム)」とのこと。決済はイーサリアムのみとなる。
なおTRiCERAは今年4月に、NFTマーケットプレイスを運営するZora及び、ブロックチェーンソフトウェア企業Curvegridと技術パートナーシップを締結し、TRiCERAのマーケットプレイスにNFT取引機能を統合することを発表していた。今回のプロジェクトはその両社の技術協力のもと実施されるとのことだ。
TRiCERAでは今回の取り組みで、アーティストと共に現実と仮想の世界を横断するパブリックアートの新しい形を探求していくとしている。
なお今回の取り組みに関して名和晃平氏は以下のようにコメントしている。
「今回の取り組みは新しい時代を迎えた私たちにとって、パブリックアートとは何か、社会彫刻が持つ意味とは何か、という問いかけでもあります。芸術祭やアートスペースがつくられる時、さまざまなプレッシャーと限られた予算のなかでアーティストは可能な限りの挑戦をします。その場その時にしか生まれ得ない奇跡の塊のような作品たちを、どのように維持管理し次世代に繋ぐのかと考えた時、NFTの持つ社会的な意義や役割が見えてきました」
また株式会社TRiCERA代表取締役の井口泰氏は以下のようにコメントしている。
「日本でも有数のアーティストである名和氏と今回の取り組みを発表できることは非常に光栄に感じております。TRiCERAはNFTの持つ無限の可能性を信じると共にどのように現代アートに取り入れるかを長い間議論しておりました。名和氏との対話の中でこのプロジェクトが生まれ、社会的に大きな意義があるプロジェクトとなったと思います」
なおプロジェクトは、石巻市との協議により2027年まで期間限定で展示することが予定されている「White Deer (Oshika)」 が、荻浜の地に恒久設置されることを目標としており、売り上げの一部はReborn-Art Festival実行委員会に寄付され、作品の維持管理の資金に充てられるとのことだ。
フランス・ルーヴル美術館ピラミッド内にて彫刻作品「Throne」 の特別展示や、Christian Diorとのコラボなど、世界で活躍する日本人彫刻家の名和氏のパブリックアートをNFT化の取り組みが、世界にどのように評価されるのか楽しみだ。
NFTとは
「NFT(Non Fungible Token:ノンファンジブル・トークン)」は代替が不可能なブロックチェーン上で発行されたトークンを指す。NFTの規格で発行されたトークンは、そのトークン1つ1つで個別の価値を持つ。そのためNFTを画像や映像などのデジタルデータと紐付けることで、デジタルデータの個別の価値を表現することに活用されている。 なおNFTという言葉は現在幅広く活用されており、活用するブロックチェーンやマーケットプレイスの種類によって、その機能や表現できる価値が異なる可能性があることには留意が必要だ。