「Secured Finance」、Protocol Labsらから約4.4億円調達
暗号通貨ローンおよびデリバティブ市場のプラットフォームを提供するセキュアードファイナンス(Secured Finance)が、シード資金調達ラウンドで約4億4,000万円(400万ドル)調達したことを7月28日に発表した。
セキュアードファイナンスは暗号資産やデジタル資産領域で投資銀行レベルの金融商品・サービス提供を目指す、日本人の菊池将和氏が創業した企業だ。菊池将和氏は外資系金融企業を中心に17年間、金融領域に携わり、ハーバード大学ソフトウェア工学修士課程を修了した経歴を持つ。
今回の資金調達は、暗号資産のエコシステムにおける大手取引会社であるGSR Markets、オープンソースの研究・開発・展開を行っているProtocol Labs、ベンチャーキャピタルであるFinTech Collective、グローバルテクノロジー投資会社であるHOF Capital、Huobiの戦略的投資部門であるHuobi Venturesから行われたとのことだ。
また個人投資家として、野村ホールディング・アメリカの取締役であるJames DeNaut氏、南アフリカの起業家でCivicのCEOであるVinny Lingham氏、Twitchの共同創業者でGoat Capitalの創業者であるJustin Kan氏、QuantstampのCEOであるRichard Ma氏、CoinListの最高執行責任者であるScott Keto氏、IPFSとFilecoinの生みの親であるJuan Benet氏なども参加している。
セキュアード・ファイナンスの創業者兼CEOの菊池将和氏は次のようにリリースでコメントしている。
今日、私たちは金融システムの民主化に向けた重大な岐路に立っています。当社のビジョンは、分散型金融のリーダーとなることであり、機関投資家レベルのP2Pクロスチェーン決済プロトコルの開発を通じて、この動きを先導することです。投資家や戦略的パートナーの皆様の多大なご関心とご支援のおかげで、セキュアード・ファイナンス・チームを成長させ、世界各地の規制当局の承認を得て、当社のプラットフォームの法的コンプライアンスを確保することができます。
GSR Markets社の社長兼共同設立者であるリッチ・ローゼンブルム(Rich Rosenblum)氏は次のようにコメントしている。
2009年以降ほとんどの先進国では記録的な低金利が続いています。デジタルアセットの分野では、金利が2桁、あるいは3桁になっており、特に債券の分野で多くの価値ある投資機会が生まれています。Secured Finance社には、DeFiで債券商品を提供するための適切なチームとビジョンがあり、同時にこの分野で最も困難な流動性の問題を解決することができるはずです。
Protocol Labsのエコシステム・リードであるコリン・エブラン(Colin Evran)氏は次のようにコメントしている。
Secured Financeは有望な初期段階のプロジェクトを従来の市場やWeb3に大きな影響を与える寸前の高成長企業に変える、Filecoin Launchpad Acceleratorの力を示す輝かしい例です。 Secured Financeのような企業の成功を考えると、Launchpadがプログラムの第2回目の反復に記録的な数の応募を受けたことを嬉しく思います。次のイノベーターたちがWeb3.0のビジョンを実現するのを支援できることを楽しみにしています。
そしてあたらしい経済はセキュアード・ファイナンスの菊池将和氏へ取材を行なった。
セキュアード・ファイナンスCEO 菊池将和氏へ取材
―現状、DeFiプロトコルの課題は何だとお考えでしょうか?
菊池将和(菊池):現状のDeFiは基本的にスポット取引や一年以内の短期の取引がメインであり、マネーマケットとも呼ばれる短期金融市場として育ってきました。
一方で取引期間が1年以上の資本市場(キャピタル・マーケット)はまだまだプレイヤーが少ないのがDeFiの課題です。短期市場がどれほど成熟したとしてもそれだけでは、機関投資家のもつ金融ニーズに答えることは難しく、彼らが本格参入するためには資本市場の整備が必要となってきます。
私たちはこの課題に取り組み、金利に関連する市場を分散型で提供します。これによりイールドカーブに基づいた柔軟な金融取引が可能になります。これまでに金融市場が蓄積してきた知見を活用し、Institutional DeFiを実現します。
―DeFi領域で、はじめにどのような金融サービスを提供しようと考えていますか?
菊池:はじめに、暗号資産の担保付きローン市場を作ります。期間は3m, 6m, 1y, 2y, 3y, 5yの予定です。
1年を超える期間の取引では、カウンターパーティーリスクをコントロールするために担保の管理技術が必要となりますが、これをスマートコントラクト上で時価評価する仕組みを導入し、マージン・コールにかかるコストを削減します。
各期間に対応した金利が決まると、イールドカーブを描くことができ、金利スワップや為替フォワードといった取引が可能になり、リスクヘッジなどの機関投資家ニーズに応えることができます。
デザイン:一本寿和
images:iStocks/Evgeny-Gromov・BadBrother