特定のサービスやプロダクトに特化した、仮想通貨=トークンを介した小さな経済圏。
それが「トークンエコノミー」であり、そのトークンエコノミーこそがブロックチェーンの本質だと筆者は考えている。
前回は、ブロックチェーンが可能にする経済の仕組みについて解説した。
第2回となる今回は、事例(仮説)を交えながら、トークンエコノミーの循環と、そこから波及する経済効果について述べたい。
もしレシピサイトがトークンを発行したら
さて、もしレシピサイトがトークンを発行したらどうなるだろうか、読者の皆さんもそれを想像してみて欲しい。上の図はレシピサイトがトークンを発行した場合の、トークンエコノミーの仮説図解だ。
上の図から既存のビジネスモデルでは何の見返りもなかったレシピ投稿者やレシピ拡散者にも、トークンが報酬として支払われているのがお分かりいただけるだろう。
価値向上に寄与していてもサービス設計には入ることのなかった「埋もれているステークホルダー」。
彼らに支払われることのなかった「正当な報酬」。
今回はこの2つを軸に、循環するトークンと小さな経済圏について具体例を交えて説いていこう。
“1円”の報酬が可能になる世界
まず前回の記事で説明した、ブロックチェーンが可能にする経済の仕組みについておさらいしよう。
この5つの仕組みを土台にトークンが「循環」することで、トークンエコノミーは完成する。
前述のレシピサイトの仮説をもう一度イメージしてみて欲しい。皆さんがよくご利用されているであろう既存のビジネスモデルのレシピサイトでは、投稿者が投稿したレシピがどれだけ高評価を得ようと、書籍化やコラボ商品化などの展開がなければ直接的な報酬は発生しないはずである。
さらに、投稿者のレシピをSNSで拡散したユーザーにも当然レシピサイトからの直接的な何の見返りもない。
レシピサイトにとっては「オリジナルレシピ」の存在こそがサービスのコアコンピタンスであり、「レシピを使って料理をして感想を投稿する」という行動の積み重ねがそのレシピの評価を高め、次なるビジネスチャンスに結びつける要因となっているにも関わらず、だ。
では今世の中にあるレシピサイトは、なぜそのようなメリットを投稿者や拡散者に直接還元しないのだろうか?
その理由は簡単で、仮にサイト側が支払おうとしても、現在のビジネスモデル上それらの報酬に捻出できる金額があまりに少額なため支払いが困難だからではないだろうか。現在の仕組みで、例えば数十円などの少額報酬を支払おうとするとその報酬額を上まわる振込手数料や、その振込作業をする手間などがどうしてもかかってしまう。
一方、それらの報酬の支払いを仮想通貨(=トークン)を媒介にすれば、どんな少額でも支払うことができるようになる。
なぜならブロックチェーンならば、(1)マイクロペイメントが可能だからだ。
埋もれているステークホルダーに正当な報酬を
ステークホルダーとは、特定のサービスやプロダクトにおいて利害関係を持っているすべての登場人物を指す。
法定通貨の経済圏では利害が明確な活動にしか金銭は発生しない。しかし報酬はなくともそのサービスやプロダクトの価値向上に貢献する活動も多く存在している。
前述の通り、支払うこと自体がとても困難であるがゆえに、報酬を受け取るステークホルダーはごく一部に限られてしまっている。なぜなら前述の通り支払額が少額だと、手数料という障壁が存在することから、少額報酬はサービス設計から除外されてしまう。
一方仮想通貨(トークン)ならば、どんなに少額の決済でも取引が可能になり、少額支払いの手数料という障壁が無くなる。そうなるとそのサービスは現在よりも多くの埋もれているステークホルダーを探し出すことができる。その前提で報酬の支払いを設計することで、そのサービスにおける経済圏の通貨(=トークン)は循環し始める。
(1)マイクロペイメント
- 仮想通貨(=トークン)決済なら、1円以下の超少額報酬も支払い可能
↓ - サービスやプロダクトの質を向上させる活動に多くのステークホルダーが参加
↓ - 埋もれていたステークホルダーたちの活動をベースに、トークンが循環
↓ - ボランティア的に行われていた小さなアクションにも対価が発生
↓ - アクションによってはより責任が伴い、ステークホルダーの行動心理が変化
↓ - このことは、トークンの価値の最大化への貢献にもつながる
(この項目の詳細は次回の連載記事で解説)