③耐改ざん性の高い極めて強固なセキュリティ
仮想通貨の各取引情報は連続したブロックに格納されており、ブロック同士には密接な相関関係があるので、過去の取引履歴の一部を改ざんするには、それ以降のデータもすべて整合性がある形で改ざんしなければならない。
それ故、ブロックチェーン上の記録は極めて改ざんが困難だとされている。不可逆的で、後から取引情報を変更することができないため、その取引には絶対的な信頼が生まれる。
理論上、51%を超える処理能力を有していれば取引情報を改ざんすることは可能だが、量子コンピューターのような極めてハイスペックなマシーンであってもそのような処理能力を得ることは困難とされている。そのため、不正を働くことは不経済で、改ざんに掛けるコストよりも、仕組みを維持して利益を得るほうが合理的と言えるだろう。
④取引の見える化
仮想通貨の取引はブロックチェーン上の分散台帳に記録されており、この台帳は世界中の誰でも閲覧することが可能だ。
通貨が流通することで、経済は成立している。誰から誰にいくらの通貨が移動したのかが、すべて見えるのがブロックチェーン上の仮想通貨取引だ。
自分の払ったお金が誰に届いているのか?
本当にそのお金は自分が使ったサービスの提供者に届いているのか?
お金の行き先まで追いかけられるようになるため、生産者と消費者の繋がりが強固になり、その繋がりは誰からも見えるようになる。
通貨の流れが衆人環視となり、誰でも取引履歴をたどれるため、不正を働く側のリスクが極めて高くなると言えるだろう。誠実な取引はより信用が増し、不誠実な取引をすれば信用は失墜する。
取引が見える=信用が見える状態、と言い換えられるだろう。
⑤スマートコントラクト(自動化)
そもそもスマートコントラクトとは「契約の自動化」と言われる概念で、
「契約」→「履行・決済」
の一連の流れが自動的に執行される状態を指す。
現状でも、契約と履行の自動化は可能だ。例えば、EC(電子商取引)の契約はプログラム上に書き込まれており、一定の条件を満たせば自動的に契約が成立しているし、契約の履行についてもソフトウェアのダウンロードなどで実現している。
これらの取引がブロックチェーン上で仮想通貨を介して成立すると、人や企業などの中間管理者を挟まずに取引が可能になる。
現状のECやソフトウェアの取引でも実現しているように見えるが、EC決済で一般的なクレジットカードの支払いは即時的ではないし、直接生産者に支払われているわけではなくその取引はカード会社を介している。
これまで述べてきた③耐改ざん性と④取引の見える化があるからこそ、管理者不在の状態ですべてが自動化されても、安心して取引を実行できる状況が成立する。
トークンエコノミーがお金の流れも暮らしも変える!?
ここまで述べてきた5つの仕組みは、法定通貨での実現は極めて困難で、仮想通貨だからこそ可能だ。
これらの仕組みがそろったとき、貨幣経済とは異なる新たな経済圏が出来上がるだろう。
それこそが仮想通貨=トークンを介した「トークンエコノミー」であり、トークンエコノミーが社会に浸透すれば、これまで存在しなかったあたらしい生活、働き方、価値観が生まれるはずだ。
既存の経済の仕組みでは埋もれているステークホルダーへの正当な報酬。
個人情報や与信管理が不要になる新たな信用の在り方。
消費者と生産者の関係性の変化。
企業に属さずに複数の収入を得る働き方。
次回は、トークンエコノミーがもたらすまだ誰も見たことのない経済の循環について、解説していきたい。
塩谷雅子
DMMスマートコントラクト開発部メディアチーム編集長。
元雑誌編集記者。サッカーを中心にスポーツ系メディアに携わった後、2016年DMM.comラボに入社。オウンドメディア「DMM inside」をはじめ、DMM picturesからDMMフットボール事業まで、各種コンテンツの取材、執筆に携わる。仕事の原動力は「熱量」。ブロックチェーン、スマートコントラクト界隈にほとばしる熱気に導かれ、2017年2月より現職。トークンエコノミーの母を目指しながら、小学4年生女児の母も兼務
※記事「③耐改ざん性の高い極めて強固なセキュリティ」の本文の一部表記を修正しました 2018/7/18