仮想通貨という単語もすっかり市民権を得た感がある。
とはいえ、昨今の流出トラブルや各国の規制、その投機熱もあいまって、注目されるのは価格の上下や変動の大きさなど、資産価値ばかりだ。
「投機対象」としての認識が大きい仮想通貨。「億り人」という言葉が登場したことからも分かる通り、確かに仮想通貨の投資で巨額の富を得た人は一定数存在する。
しかし、仮想通貨とは、投資目的だけのものなのだろうか?
仮想通貨を支えるブロックチェーンは、既存の技術では叶わなかったさまざまな仕組みを可能にする技術であり、その本質は、仮想通貨の投機熱にとどまるものではないと考えている。
仮想通貨はブロックチェーンを使ったプロダクトの一つに過ぎない。ブロックチェーンの何が革新的なのか、ブロックチェーンは社会をどう変えるのか。変わった先の社会には、どんな価値がもたらされるのか。
ブロックチェーン技術と、そのうえに成り立つ仮想通貨が世の中に広く流通すれば、経済、そして社会の在り方が大きく変わることが予想される。
第三者を介さない直接取引は生産者と消費者の距離を縮め、サービスやプロダクトとの関わり方は変容する。
法定通貨の経済では国ごとに通貨が異なるが、仮想通貨が日常生活に浸透すればサービスやプロダクトごと、つまり用途ごとに通貨を使い分けるようになる。用途ごとの仮想通貨(=トークン)がひしめき合い、そこには円やドルの経済圏とは異なる小さな経済圏が大量に生まれるだろう。
この状態を「トークンエコノミー」と呼び、それこそがブロックチェーンがもたらす真の恩恵だと考えている。
この連載では、トークンエコノミーエバンジェリストである筆者が、ブロックチェーンの本質だと考えているあたらしい経済圏「トークンエコノミー」とは何なのかを、紐解いていきたい。
塩谷雅子
DMMスマートコントラクト開発部 メディアチーム編集長。
元雑誌編集記者。サッカーを中心にスポーツ系メディアに携わった後、2016年DMM.comラボに入社。オウンドメディア「DMM inside」をはじめ、DMM picturesからDMMフットボール事業まで、各種コンテンツの取材、執筆に携わる。仕事の原動力は「熱量」。ブロックチェーン、スマートコントラクト界隈にほとばしる熱気に導かれ、2017年2月より現職。トークンエコノミーの母を目指しながら、小学4年生女児の母も兼務。