シリコンバレーにある世界有数のブロックチェーン企業Chronicled(クロニクルド)で社員として働き、帰国後は国内最大の20代によるブロックチェーンコミュニティでも活動している慶應義塾大学在学中の渡辺創太氏。そんな渡辺氏にこれからの日本のブロックチェーンと若い世代の可能性について語っていただいたインタビュー、第2回。
ブロックチェーンに対するシリコンバレーと日本の違い
—ブロックチェーン、ビットコインはインターネットほどの技術革新ではないという意見もあると思いますが、サンフランシスコのブロックチェーンに対する熱量はどうでしたか?
アメリカだけではなく、世界的な流れなのですが、特にここ1、2年でブロックチェーンに注力しつつあると思います。例えば、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)という有名なベンチャーキャピタルがクリプトに特化したファンドを作っています。
ただ、アメリカの著名なリサーチ会社に選出されているAIとブロックチェーン領域の世界トップ企業を見てみると、AI領域の100社のうち47社がシリコンバレーの企業なのですが、一方でブロックチェーン領域の50社は、シリコンバレーにあるのが5社なんですよ。
そういった意味でもブロックチェーンという産業は世界中の色んな場所に分散化されていると思います。
シリコンバレーでは、多くの人がブロックチェーンと仮想通貨の話を分けている
—日本と比べるとシリコンバレーのブロックチェーンに対する盛り上がりはどうですか?
まず、日本と比べるとブロックチェーン関連のイベントが凄く多いです。その上、毎回のイベントに100人以上がコンスタントに参加しているものも多数あります。
さらに最も大きな違いは、ブロックチェーンに関して長期スパンで議論ができる人がとても多い点です。
シリコンバレーでは、多くの人がブロックチェーンと仮想通貨の話を分けている印象があります。彼らにとってはブロックチェーンが革新的なのであって、1つのアプリケーションが仮想通貨、暗号通貨という認識です。実際にブロックチェーンと仮想通貨(crypto currency)でGoogle検索してみると、ヒットする記事の総数が英語圏だとブロックチェーンの方がダントツで多いですが、日本では仮想通貨の方が多いですよね。
「今のブロックチェーンだとスケーラビリティの問題はあるが、10年後こういう形で使われているだろう」といった長期スパンでの議論ができる人が、日本にはまだまだ少ないと思います。
—インターネットの時もそうでしたけど、シリコンバレーの新しい産業へのベットの仕方はやっぱり凄いんですね。彼らの機動力の原点は何だと思われますか?
仮説ですが、僕の周りだと、お金を持っていて「社会のためにどう貢献できるか」を考えている人が多いです。
例えばクロニクルドのCEOのライアンは、元々ダグラス・ノースというノーベル賞を取った経済学者の元で所有権について学んでいたんですが、「最終的にやりたいことは、途上国で土地の所有権が明確じゃないから公共の場所が荒れてしまう共有地の悲劇という問題をブロックチェーンを使って解決することだ」と言っていました。
彼のように最終的にはソーシャルグットのために何かをやりたいという人はものすごく多いですね。社会に貢献したいと常に考えていることが機動力につながっているのではないでしょうか。
ブロックチェーンに大きくベットしている理由としては、シリコンバレーの大物の発言や動向を皆が意識していることも大きいと思います。たとえばマーク・アンドリーセンというシリコンバレーで一番有名といっても良いベンチャーキャピタリストは、「1970年代のパーソナルコンピュータ、1990年代のインターネット、2014年のビットコインだと私は信じている」と発言しています。
さらに、AIなどの領域はデータ量がものを言う世界なのでGoogleやAmazonに勝つのはもう無理だけれども、ブロックチェーンの領域ならそうではないという点も大きいと思います。
データの集まり方そのものを変えてしまえば、彼らをディスラプトできる可能性がある。自分たちが次のGoogleを作って社会的には大きなインパクトを与えてやろうという気概のある人が多くいて、既存のものをディスラプトして、ブロックチェーンで新しい世界観を作ろうとしているんだと思います。
—この業界はどんどん新しい情報が出てくるので、それを追うだけで大変だと思うのですが、渡辺さんはどう毎日情報をインプットしていますか?
確かに大変ですね。僕の場合は、良いコミュニティに属するのが大事だと思っています。僕が情報収集しなくても違う人がして、共有してくれるようなコミュニティにいることは大きいと思います。あとはLinkedInとFacebookとTwitterなどのSNSもチェックしていますね。主に外国の著名な人をフォローしています。
シリコンバレーの人たちの情報収拾の方法は、一概には言えないと思います。僕の上司であるクロニクルドCMOのサムの場合は、彼女自身のベーシックなスキルと知識があるのが前提ですが、自分のブロックチェーンの知識を様々な領域の専門家にどんどんぶつけていました。
例えば、車の専門家や偽造品の専門家、アートの専門家などのブロックチェーンとは異なる領域の専門家ですね。
そういう人たちとの議論の中で、「ブロックチェーン×ワインは上手く行きそうだ」などのコラボレーションを常に考えて、それをブログに書いたり、実際に事業を起こしたりしていました。
(第3回:ブロックチェーンネイティブ時代の日本の若者は、世界を変えられる/渡辺創太インタビュー(3))
編集:竹田匡宏(幻冬舎)・伊藤工太郎(幻冬舎)