金と連動した暗号資産、ジパングコイン(ZPG)とは? 今後のRWAの可能性(SBI VC 近藤智彦 × 三井物産 岡田健)

SBI VCトレード近藤智彦 × 三井物産 岡田健

暗号資産取引所SBI VCトレードの代表取締役社長 近藤智彦氏と、暗号資産/ブロックチェーン業界を牽引するさまざまなプレイヤー/有識者へ、「あたらしい経済」編集部が対談形式でインタビューする連載企画。第1回は三井物産のコーポレートディベロップメント本部 商品市場部長の岡田健氏をゲストにお迎えし、ジパングコイン(ZPG)とは何か、投資家にとってのメリット、今後のRWA(現実資産)のトークン化の可能性などについてインタビューした。

金と連動したジパングコイン(ZPG)、投資家のメリットは?

–ジパングコインはどのような暗号資産なのでしょうか?

岡田:ジパングコインは、三井物産の100%子会社である三井物産デジタルコモディティーズ社が発行するゴールドに連動することを目指した暗号資産です。2022年2月より発行しています。SBIVCトレードでは2024年5月の上場以来、大きく残高を伸ばしていただいている状況です。

–ジパングコインの金(ゴールド)への裏付けはどのように行われているのでしょうか?

岡田:投資家の方々のジパングコインの買いに応じて、三井物産にて同量のゴールドを購入しています。また、ジパングコインのスキームには銀行保証を設定しており、投資家保護の徹底に努めています。

SBI VCトレード 公式サイトより

–ジパングコインが暗号資産であるメリットとはなんでしょうか?

岡田:ゴールドの現物やETF(上場投資信託)は保管料や信託報酬料といった継続的な手数料が発生することもあり、実際の金現物の国際価格から乖離してしまうことや、取引時間が制限されているといった課題があると認識しています。

一方で、ジパングコインは①取引手数料無料、②保管料無料、③少額投資可能(1円から取引可能)、④ゴールドの現物価格に実質完全連動、⑤24時間365日取引可能、といった点で優位性があります。特に長期投資に向いているとアセットだと考えています。

–SBI VCトレードさんは、ジパングコインをどのように評価し、リスティングしたのでしょうか?

近藤:伝統的な金融資産である金に、暗号資産を通じて投資ができるという面白みがあるからです。リスクオフ局面では暗号資産は全銘柄売られる傾向にありますが、金価格に連動するジパングコインは他の暗号資産の値動きは異なることが多い。そういう意味では暗号資産のポートフォリオの中でのヘッジ銘柄として活用いただけると考えています。

また、SBI VCトレードではジパングコインのレンディング(貸コイン)サービスを提供しています。金価格に連動する運用で、利回りを得られる商品は少ないです。レンディングでインカムゲインを得られることは、金現物や金ETFなどには無い、ジパングコイン固有の魅力だと考えています。

SBI VCトレード 公式サイトより

— ジパングコイン取り扱いについて投資家の方々からの反応は?

近藤:総じてご好評いただいております。金価格に連動するジパングコインは、従来の運用性商品を保有しているユーザーに親和性が高いものです。当社はSBIグループ各社からの顧客流入も多いですが、伝統的な金融資産に連動するジパングコインは、それらの顧客が暗号資産を始めるハードルの低い銘柄の一つだと考えています。

またジパングコインの取引金額は、当社取扱い24銘柄の中でも上位です。レンディングに期待して購入いただいているお客さまも多いですね。ジパングコインの預かり残高は、国内の暗号資産交換所でもトップクラスだと考えています。

–現在取引されている他のコモディティも、今後ジパングコインのような連動型の暗号資産になっていくとお考えですか?

岡田:現在私たちはゴールド(ZPG)の他に、シルバーと連動したジパングコインシルバー(ZPGAG)とプラチナと連動したジパングコインプラチナ(ZPGPT)も発行しています。グローバルではRWA(現実資産)が盛り上がっており、暗号資産にすることによる柔軟性をうまく使った事例は今後も出てくると考えています。

RWAがより注目されてくれば、これまでと異なる志向の投資家やプレイヤーの参入という点で更なる暗号市産業界への成長にも繋がると考えています。

–ちなみにSBI VCトレードさんでジパングコインシルバー やジパングコインプラチナの取り扱い予定はありますか?

近藤:お客さまの要望も多いため、前向きに検討したいと考えています。特にプラチナについてはゴールドよりも高いレンディングの利率が提供できるとのことで、運用商品として期待しております。

–RWAをデジタル証券化したセキュリティトークンという形もあります。一方ジパングコインのように暗号資産として現実資産に連動したトークンもある。今後RWAの暗号資産連動は進んでいくとお考えですか?

近藤:RWAの暗号資産との連動は、今後も十分にあり得えると考えています。米BlackRockのような大手金融機関がすでにそのビジョンを掲げて動いていますよね。不動産や株式などがトークン化されることで、流動性やアクセス性が向上し、金融の仕組みが大きく変わる可能性もある。

また商業権や著作権などの知的財産が簡単に取引可能な暗号資産トークンとして活用されれば、新たな市場が生まれる可能性もあると思います。

–現在Web3領域でその他注目しているトピックスはありますか?

岡田:三井物産では、現在コモディティをトークン化する本事業に加え、不動産をトークン化するセキュリティトークン事業などにも取り組んでおり、RWA領域については注目しています。

近藤:ゲーム・メタバース分野が注目を集めており、当社でも各社と連携をしている状況です。Web3技術を反映することによってゲーム・メタバース内経済をよりリアルな形で実現できる点に注目しています。

また、市場はブームの時と比べれば縮小していますが、NFTにはまだまだ可能性は十分に秘めていると考えています。当社としてNFTに関する施策は引き続き進めていく予定です。

–岡田さん、今後のジパングコインの展開があれば教えてください。

岡田:取扱い取引所の増加、商品拡張、更なるユーティリティーの開発等を検討しています。

–近藤さん、取引所というお立場で、来年の市場をどのように見ていますか?

近藤:現在(インタビュー時:202411月下旬)は米国大統領選挙でトランプ氏が当選したことで暗号資産市場はこれまで以上に注目を集めています。トランプ氏は米国を「暗号資産の首都」にすることを公約に掲げており、選挙後にはビットコイン等が過去最高値を更新するなど市場の活発化が見られる中、話題性や認知度も大きく広がり、我々が運営する取引所としても取引高や顧客数の増加を実感しています。

2025年については、引き続き米国が政治的スタンスでリードをとる中で米政府がさらに暗号資産に友好的な姿勢を示していくことで、来年の市場がさらに活性化するきっかけとなるのではないかと考えています。一方、日本でも法令・制度の改正機運は高まっており、暗号資産ETFなどの新たな商品の解禁なども期待ができるのではと考えております。

 

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インタビューイ・プロフィール

岡田健
1992年、横浜国立大学経済学部卒業、三井物産株式会社入社
コモディティデリバティブ事業に主に携わり、貴金属、エネルギー等のトレーダーや営業室長を経験。
経営企画部や秘書室での業務を経て、18年に海外コモディティデリバティブ事業を展開する英国Mitsui Bussan Commodities LtdのCEOに就任。21年より現職。23年よりジパングコインの発行体である三井物産デジタルコモディティーズ株式会社社長を兼務。

近藤智彦
2007年、早稲田大学理工学部卒業、SBIホールディングス入社、SBIグループの情報システムを担当。同グループの電子決済事業を経て、外国為替関連事業を営むSBIリクイディティ・マーケットでシステム担当役員を務める。19年にSBI VCトレード取締役に就任、以来暗号資産・Web3関連事業に従事し23年に代表取締役社長に就任し現職。

<本記事について>
本記事は一般的な情報の提供のみを目的としたものであり、いかなる暗号資産、有価証券等の取得を勧誘するものではありません。また、株式会社幻冬舎及びSBI VCトレード株式会社による投資助言を目的としたものではありません。また株式会社幻冬舎及びSBI VCトレード株式会社が暗号資産の価値を保証するものでもありません。暗号資産投資にはリスクが伴います。投資やステーキング、レンディングを行う際はリスクを了承の上、利用者ご自身の判断で行ってください。

<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。/暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。/暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。/SBI VCトレード株式会社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。/SBI VCトレード株式会社の取り扱う暗号資産のお取引にあたっては、その他にも注意を要する点があります。お取引を始めるに際しては、「取引約款」、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただきご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。/秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失う可能性があります。/暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。

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SBIグループの暗号資産取引所「SBI VCトレード」。SBIグループの掲げる顧客中心主義の理念のもと、お客様の満足度向上に資する暗号資産取引に係るサービスをフルラインナップでご提供してまいります。

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