米景気懸念や円高で、ビットコインはじめ暗号資産市場も大幅安(仮想通貨市場レポート8/5号)

暗号資産マーケットレポート

今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。

7/28~8/3週のサマリー

  • 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が労働市場の下振れリスクは「現在、現実のものとなっている」と発言
  • 日銀、短期金利誘導目標を0.25%程度に引き上げ
  • 景気後退懸念が意識される相場へ移行している可能性

暗号資産市場概況

7/28~8/3週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比-15.61%の8,911,900円、ETH/JPYの週足終値は同-22.63%の428,025円であった(※終値は8/3の当社現物EOD[8/4 6:59:59]レートMid値)。

週初、前週末に開催されたビットコイン2024カンファレンスのポジティブなムードの中、70,000ドルにワンタッチする展開を見せる。ただ同日米国政府が20億ドル相当のBTCを移動したというニュースが流れると大口売却懸念により67,000ドル割れまで下落した。

31日には日銀が利上げを検討しているとリーク記事が出され、実際に政策金利が0.25%に引き上げられた。この発表は市場にとってサプライズであったため、ドル円は大きく下落し円高となった。ドル円は週を通じて約5%下落しており、円建てのBTC価格にも-5%程度の影響を与えていると言える。さらにこの日はMt.Gox社のウォレットから20億ドル以上のBTCが新たなアドレスに移動されたこともあり、米株と比較して上値の重い値動きの推移となった。

1日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、市場の予想通り政策金利の変更はなかった。続くパウエル議長の会見では、これまで通り物価の安定に対し言及しながらも、労働市場の下振れリスクは「現在、現実のものとなっている」と発言し、最大限の雇用を達成する責務についても強調していた。この発言により消費者物価指数(CPI)などの物価を表す指標よりも、雇用統計などの雇用や景気を表す指標へと市場が重要視すべき指標は移り変わったように考えられる。

週末、米ISM製造業景況指数・米雇用統計が市場予想を下回る内容でリスク性資産は下落で反応。前述したパウエル議長の発言も相まって、雇用や景気を表す指標の悪化は市場に景気後退リスクを意識させる結果となった。これまでの相場では米金利の低下は暗号資産や米株の上昇要因となっていたが、景気後退懸念により利下げを余儀なくせざるを得なくなるいわゆる「逆業績相場」では米金利の低下は暗号資産や米株の下落要因となることを意識したい。

今週は先週末の雇用統計の悪化を引きずり下落リスクの高い相場になる可能性がある。購買担当者景気指数(PMI)や米新規失業保険申請件数等の指標があるが、景気を表す指標への感応度が上がっていることを意識し下落リスクには十分備えたい。また、先週はイスラエルがハマスの最高指導者を暗殺したという報道もあり中東の地政学的リスクに対しても警戒したい。

1)BTC/USD週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

2)BTC/JPY週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

7/28~8/3週の主な出来事

8/4~8/10週の主な予定

【今週のひとこと】トランプ前大統領と暗号資産

7月28日に「ビットコイン2024カンファレンス」にてアメリカのトランプ前大統領(現米大統領選共和党候補者)が登壇したことが注目を集めました。同カンファレンスの演説では暗号資産業界に対して非常にフレンドリーな姿勢を見せ、多くの暗号資産業界の人々が期待を持ったことでしょう。

かつてトランプ氏は暗号資産に友好的な姿勢ではありませんでした。前回の大統領任期中には暗号資産に懐疑的な姿勢を示し、2019年に「暗号資産のファンではない。」、2021年には「ビットコインはスキャムだ。」との発言を残しています。

態度の変化があったのは大統領任期後の2022年の12月のことです。自身が運営するSNSにて突如自身の姿見をモチーフとしたNFTコレクション(ドナルド・トランプ・デジタル・トレーディングカード・コレクション)のリリースを発表しました。売り出し価格は一枚あたり99ドルで、著名人のNFTプロジェクト中で高い人気を博し、暗号資産業界で話題となりました。同NFTコレクションは現在第3弾までリリースが行われており、先月には第4弾のNFTコレクションのリリースを匂わす発言をしています。

2024年3月にはCNBCのトーク番組でビットコインを「新たな通貨形態だ」との見解を示し、2024年5月より暗号資産での政治献金の受付を開始しました。

暗号資産に対する姿勢を一変させたトランプ氏ですが、大統領選の票集めや政治資金作りといった意見も散見されます。実際にそういった側面もあることも否定はできないでしょう。しかしトランプ氏の長年の友人であるビル・ザンカー氏は「トランプ氏は自身のNFTの発行を機に、暗号資産について知るため時間を割き、ブロックチェーンの仕組みなどを理解するために専門家に多くの質問し、能動的に同業界に接してきている。」と、ブルームバーグのインタビューで語っており、本質的に暗号資産にフレンドリーな姿勢に変わっているのかもしれません。

米国の選挙戦は接戦が予想されており、米国および暗号資産業界にとってどのような結末を迎えるかは未だわかりませんが、トランプ氏の今後の動向には目が離せないでしょう。

このレポートについて

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暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
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写真:USA TODAY NETWORK via Reuters Connect

この記事の著者・インタビューイ

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SBIグループの暗号資産取引所「SBI VCトレード」。SBIグループの掲げる顧客中心主義の理念のもと、お客様の満足度向上に資する暗号資産取引に係るサービスをフルラインナップでご提供してまいります。

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