大口の売却懸念で下落するビットコイン、Mt.Gox弁済や独・米政府らの(仮想通貨市場レポート7/8号)

暗号資産マーケットレポート

今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。

6/30~7/6週のサマリー

  • ビットコインは大口売却による需給悪化懸念により、一時53,000ドル台までの調整
  • Mt.Gox社、BitcoinおよびBitcoin Cashの弁済を開始したことを公式発表
  • ドイツ政府と見られるウォレットから海外暗号資産取引所へ1,300BTCが移動

暗号資産市場概況

6/30~7/6週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比-4.91%の9,335,450円、ETH/JPYの週足終値は同-9.49%の493,185円であった(※終値は7/6の当社現物EOD[7/7 6:59:59]レートMid値)。

先週の暗号資産市場は、Mt.Gox社の弁済開始・独政府によるBTCの送金等、大口によるBTC売却懸念が市場の重石となり、ビットコインは一時53,000ドル台までの調整を見せ軟調に推移する週となった。

週初ビットコインは、フランス政局不安の後退を背景としたリスクオンの流れの中、62,000ドル台半ばのレジスタンスを抜けると、63,000ドル台に乗せる堅調な滑り出しを見せる。

2日、ドイツ政府が282.74BTC(約1,600万ドル相当)を暗号資産取引所のCoinbase、Bitstamp、Krakenに送金したことが伝わると徐々に上値を重くする展開に。さらに4日、ドイツ政府が1,300BTC(約7,500万ドル相当)を暗号資産取引所のアドレスに送金したことが判明すると下落幅を拡大し57,000ドル付近まで下落。

翌5日、Mt.Gox社のウォレットから47,229BTC(約27億ドル) の資金移動が確認されると、2024年2月以来となる53,000ドル台付近までの下落を見せた。その後Mt.Gox社は弁済開始を公式発表。週末にかけ、ビットコイン現物ETFのキャッシュフローが高水準の流入となったことや、9月の利下げ観測の高まりを受けた米国金利低下がサポートとなり58,000ドル付近の価格帯で推移し週末を迎えた。

Mt.Gox社、米・独政府からのBTC売却懸念を受けて調整局面を迎えた暗号資産市場であるが、大口売却の動向を探ってみると、7/7執筆時点で米政府213,534BTC、独政府43,359BTCの保有が確認できる。ドイツ政府は6/19以前において50,000BTCの保有が確認されており、米政府は6/27に3,940BTCをCoinbaseに移動させていることから、直近2週間で両政府による約10,500BTCの売却がなされた可能性があるといえるだろう。Mt.Gox社の弁済においては、各取引所によってスケジュールが異なり、弁済されたBTCが市場で売却されない可能性も指摘されており、未だ売却のインパクトは不明確だ。

大口の売却懸念に揺さぶられる相場環境であるが、長期的な視点で見てみると2023年以降ビットコインには実現時価総額ベースで約2,240億ドルの資金が流入している。仮に米・独政府、Mt.Gox社の持ち分がすべて売却されたと仮定しても流入分の約10.48%と、十分に市場で吸収できる金額であるといえる。

オプション市場でも行使価格の低いプットオプションを物色される動きは見られず、価格下落局面においてビットコイン現物ETFの資金流入が約1ヵ月ぶりの高水準の流入となっている点からも、相場の暴落を織り込んでいる印象は薄いといえるだろう。もちろん、依然としてボラティリティの高い相場環境である為下値リスクには十分注意を払いたい。次週も大口の動向に振り回される環境下であることが予想される為、関連のトピックに配慮した投資判断を行う必要がある。

1)BTC/USD週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

2)BTC/JPY週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

3)ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

4)ビットコイン Realized Cap (実現時価総額)

(橙線がビットコイン実現時価総額の推移)glassnode社提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

6/30~7/6週の主な出来事

7/7~7/13週の主な予定

【今週のひとこと】イーサリアム2.0(合意レイヤー)

先月19日にSECがイーサリアム2.0に関する調査を終了したというヘッドラインが登場しました。暗号資産に関するニュースの中で度々目にするイーサリアム2.0とはどのようなものでしょうか?

簡潔に説明をするとイーサリアム2.0とはイーサリアムネットワークにおけるアップグレードのことです。イーサリアム2.0が実装される以前のイーサリアムチェーンにおいては主に2つの課題があったためアップグレードが計画されました。課題とは①スケーラビリティと②環境(エネルギー)です。

①スケーラビリティの課題とはイーサリアムネットワークが処理できるトランザクション(取引)に限界があり、トランザクションが増加するとガス代(送金手数料)が高騰することです。

②環境(エネルギー)の課題は当時のイーサリアムネットワークではブロックを承認するメカニズムにプルーフ・オブ・ワーク(PoW)が使用されており、メカニズム上大量の電力を使用することから環境への配慮が必要という意見のことです。

イーサリアム2.0では上記の①の課題に対してはシャーディングの導入、②の課題に対してはプルーフ・オブ・ステーク(PoS)の導入により課題解決をそれぞれ図っています。シャーディングに関しては2024年3月のDencunアップグレードにてプロトダンクシャーディングが実装されました。シャーディングの最終目標はダンクシャーディングであり今後も開発が継続されます。

イーサリアムネットワークの開発状況やロードマップはイーサリアム財団のHPから確認することができます。今後アップグレードが行われる際にはイーサリアムネットワークが目指している方向性をぜひ確認してみてください。

※「イーサリアム2.0」という用語は現在廃止されており、「合意レイヤー」に改称されております。本稿では便宜上イーサリアム2.0の用語を使用しております。

参照:「リブランディング: Eth2の名称廃止」

このレポートについて

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この記事の著者・インタビューイ

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SBIグループの暗号資産取引所「SBI VCトレード」。SBIグループの掲げる顧客中心主義の理念のもと、お客様の満足度向上に資する暗号資産取引に係るサービスをフルラインナップでご提供してまいります。

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