今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
6/2~6/8週のサマリー
- ビットコイン現物ETFは、4日に過去2番目となる一日当り純流入(8億8,675万ドル)を記録し、7日には純流入の最長記録(19営業日連続)を更新
- BTC円建て価格は5月に引き続き過去最高値を更新
- 米国雇用統計は市場予想を上回り、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ時期を巡る不透明感が再び高まりを見せる
暗号資産市場概況
6/2~6/8週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比2.60%の10,911,500円、ETH/JPYの週足終値は同-3.51%の577,795円であった(※終値は6/9の当社現物EOD[6/9 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、ビットコイン現物ETFの好調な資金流入フローを背景に、ドル建てBTCの史上最高値も意識される価格帯で堅調に推移するも、週末に市場予想を上回る米国雇用統計を発端として週の上昇分の殆どを吐き出す展開となった。
週前半の4日、ビットコイン現物ETFのキャッシュフローが約8億8,675万ドルの流入金額となり、上場以来2番目に高い一日当りの純流入金額を記録。これまでの一日当りの流入最高金額は3月12日の10億5,000万ドルであり、それに次ぐ金額となった。個別銘柄の最大の流入はFidelityのFBTCからのもので、3億7900万ドルの流入金額を観測。また当週においては、金曜日に上場以来最長となる19日連続での純流入を記録した。累計金額としては1月の開始以来、合計156億9,000万ドルの純流入となっている。19日間でビットコイン現物ETFの総保有高は約5万7,800BTC以上増加し、これは同期間にマイニングされたビットコインの約7倍に相当する。
4、5月と振るわなかったビットコイン現物ETFの流入キャッシュフローであるが、足元では復調の兆しを見せており、BTC相場の下支えになっている。また香港、英国に続き、オーストラリア、タイとビットコイン現物 ETFを承認・ローンチする動きが世界的に広がり、機関投資家からの関心を集めていることもポジティブな材料だ。ETFのキャッシュフローにおける記録的な週となったが、今年3月の流入水準には未だ達しておらず、今後も拡大の余地はあるといえるだろう。
週末7日に発表された5月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比27万2000人増と、市場予想を大きく上回る伸びを示した。指標発表を受け年内の利下げ観測は後退し米金利は上昇、米国株式市場も売り優勢で寄り付く。週を通し堅調に推移していたBTCも発表後より下げ足を速め、7,500万ドルのロングポジションの清算を伴い、72,000ドル付近から68,000ドル付近まで約4,000ドル幅の下落を見せた。高値圏での狭いレンジ相場の中で、指標発表の前に70,000ドルと71,000ドル台でレバレッジをかけたポジションが積みあがっていたことも、ボラタイルな展開となった要因といえよう。また同日、先月より約3年ぶりに活動を開始したRoaring Kittyとして知られるトレーダーのKeith Gill氏のライブストリーミング配信が期待外れに終わり、同氏の関連銘柄であるGameStop(GME)株が40%下落したことも一因としてあげられる。
来週は米国の今後の金利動向を推し量る上で重要イベントとされる、米消費者物価指数(CPI)と連邦公開市場委員会(FOMC)の発表を控えている。今回の雇用統計の結果が金利据え置きの予想を変えることはないだろうが、政策担当者が数ヵ月論じてきた議論に拍車をかけることになるだろう。フェデラルファンド(FF)金利先物市場ではFRBが年末までに2回の利下げを行う確率は約50%、雇用統計発表前は68%であった。FOMCは12日(日本時間13日)、5月のCPIが発表された数時間後に政策会合の結果を明らかにする。パウエルFRB議長の発言と3月以来となるドットチャート(金利予測分布図)の公表には最大限注意を払いたい。
BTC/USD週間チャート(30分足)
BTC/JPY週間チャート(30分足)
ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格
6/2~6/8週の主な出来事
6/9~6/15週の主な予定
【今週のひとこと】Address Poisoning(アドレス・ポイズニング)
Adress Poisoning(以下、アドレス・ポイズニング)は、Adress Spoofing(アドレススプーフィング)とも呼ばれ、不特定多数のユーザーに被害を与える不正行為です。この行為は過去に数々の事例が存在し、安全な資産運用の為にも必ず認識しておきたい事象です。
アドレス・ポイズニング(毒)またはスプーフィング(なりすまし)の文字通り、ユーザーのアドレスを利用した詐欺手法です。具体的な手法は、まず攻撃者はターゲットのウォレットアドレスと酷似したウォレットアドレスを生成します(偽のウォレットアドレスは、最初と最後の「数文字」だけ本物のアドレスと酷似させていることが多いです)。
その後ターゲットユーザーのウォレットに少額の暗号資産を出庫し、ターゲットユーザーの取引履歴に忍び込みます。ユーザーは普段通り暗号資産を移動させる際、攻撃者が仕掛けた酷似アドレスへ出庫させてしまい、被害にあうケースがあります。
去年4月、ARB(アービトラム)トークンがアドレス・ポイズニング手法で攻撃され、多くのユーザーが被害にあい、合計で約93万ARBが盗まれました。その額は当時の価格で120万ドル(約1.88億円)にのぼります。
直近では、先月に1,155WBTCが攻撃者のウォレットに出庫され、6,800万ドル(約100億円)が盗まれました。この件は幸い犯人を捕まえることが出来ましたが、一度出庫すると取り戻せない暗号資産の特性上、普段より被害にあわないための心掛けが必要です(取引履歴からアドレスをコピーすることは避ける、少額のテスト送金を行う、『Command(Control)+F』などのページ内検索で“完全一致”するかどうか確かめる等)。
多くのユーザーは暗号資産を移動させる際、過去のトランザクション内訳からアドレスをコピーし、移動させますが、攻撃者はそうした行動を狙ってきます。日々変わってくる巧妙な手口を警戒し、暗号資産関連犯罪へ注意を払っていくことが更に重要になるでしょう。
このレポートについて
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。
<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
当社の取り扱う暗号資産のお取引にあたっては、その他にも注意を要する点があります。お取引を始めるに際しては、「取引約款」、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただきご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。
秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失う可能性があります。
暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。