今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
5/26~6/1週のサマリー
- 96億ドル相当のビットコインがMt.Gox(マウントゴックス)管財人ウォレットから移動
- BlackRockのビットコイン現物ETF「IBIT」のビットコイン保有枚数がGrayscaleの「GBTC」を上回る
- BlackRockはじめイーサリアム現物ETFを申請中の各社が、S-1登録届出書の修正版を提出
- バイデン大統領、SAB121(暗号資産を保管する金融機関に対し、暗号資産をバランスシート上の負債として記録することを求めるガイドライン)を撤回する法案に対し拒否権を発動
- DMMビットコイン、約4,500BTC(482億円相当)が不正に流出されたことを発表
暗号資産市場概況
5/26~6/1週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比-2.05%の10,635,500円、ETH/JPYの週足終値は同+1.79%の598,820円であった(※終値は6/1の当社現物EOD[6/2 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、Mt.Gox(マウントゴックス)管財人のコールドウォレットから96億ドル相当のBTCが移動したことを受け、市場全体が下落。その後、イーサリアム現物ETFの承認に向けた進捗へと関心が戻っていった週であった。
週前半の28日、複数のオンチェーン分析プラットフォームがMt.Goxの管財人ウォレットからのビットコイン移動を検知。近い将来の売り圧力発生といった様々な憶測が交錯したことでビットコイン価格は高値から約3,000ドル幅の下落を見せた。上述の移動に関して、Mt.Gox管財人は「現物受渡による弁済や売却は実施しておらず、弁済に向けた準備段階である」と声明を発出したのみであり、今後の動向が注目される。
今回移動された約14万BTC(96億ドル相当)はBTC時価総額の約0.72%に当たるが、1月に承認された米ビットコイン現物ETFの運用残高は579億ドル相当(5/31時点)に達し、改めてETF規模の拡大が市場に大きな影響を与えたことが認識できる。
Mt.Gox債権に関して、Galaxy ResearchのAlex Thorn氏は個人債権者の保有分は約65,000BTCであり、その他は債券基金や機関投資家に受け渡されるのではないかと推計している。また、大口参加者のうち、債権全体の約20%を占める2大債権者は売却を強制しないオプションを選択しているため、実際の売却圧力は「個人保有分の65,000枚のうち、早期換金需要がある数量」に近いと考えられるだろう。加えて、ビットコイン価格がMt.Gox破綻時の約14倍になっていることから税負担を考慮して換金需要は限られると推測され、マーケットインパクトは市場がこれまで懸念していたよりも小さくなるかもしれない。
週半ばには、資金流出が続いていたGrayscaleのビットコイン現物ETF「GBTC」と、資金流入が続いていたBlackRockの現物ETF「IBIT」の残高が逆転するという記録的なイベントを通過し、BlackRockほか数社がイーサリアム現物ETFのS-1登録届出書の修正版を提出したことで、イーサリアム現物ETFの承認(≒上場)が意識され、イーサリアム価格がビットコイン価格をアウトパフォームする運びとなった。
週終わりの31日には、DMM.comグループで暗号資産交換業を営むDMMビットコインから4,500BTCが流出したことが発表された。482億円相当の金額だったが、同社の対顧客全額保証の方針および盗まれたビットコインに移動の兆しが無かったため市場への影響は限られた。
次週以降は引き続きETF関連ヘッドラインに加え、各国金利動向にも注意したい。特にカナダ・欧州は次週の利下げが織り込まれており、仮に据え置きとなると、リスクアセットに対し不利なサプライズとなる可能性が懸念される。
BTC/USD週間チャート(30分足)
BTC/JPY週間チャート(30分足)
ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格
ビットコイン現物 ETF におけるGrayscale「GBTC」とBlackrock「IBIT」の残高推移
5/26~6/1週の主な出来事
6/2~6/8週の主な予定
【今週のひとこと】Mt.Gox(マウントゴックス)
Mt.Gox(マウントゴックス)とは、かつて日本で運営されていた暗号資産交換業者です。当初2009年にマジック・ザ・ギャザリングという人気カードゲームを売買するオンライン交換所として開設されましたが、2010年にビットコイン交換所に事業を転換。2013年4月には世界のビットコイン取引量の約70%を占めるといわれるほどに成長しました。
2014年2月、Mt.Goxは突如ビットコインの引き出しを停止、約85万BTC(当時の価格で約460~470億円相当)がハッキングによって失われたことを発表しました。Mt.Goxは、同年3月に破産申請を行っており、以降は失われたうち発見することができた約20万BTCをはじめとする資産を、債権者に対して弁済する手続きを続けています。
Mt.Goxの一件により、暗号資産取引所の資産管理体制やセキュリティ体制を見直すきっかけとなり、日本が世界に先駆けて顧客保護を重視した暗号資産関連の法整備が進んだ背景には、この一件があったと言えるでしょう。現に、先週には国内の暗号資産交換業会社にてビットコインの不正流出が発生しましたが、当該取引所は全額保証する方針を明らかにしています。
このレポートについて
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。
<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
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暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。