今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
3/24~3/30週のサマリー
- ロンドン証券取引所(LSE)はビットコインとイーサリアムの上場投資証券(ETN)市場の立ち上げを発表
- 米司法省(DOJ)、米商品先物取引委員会(CFTC)はKuCoinをマネーロンダリング防止法違反で告発
- ニューヨーク連邦地裁はSECの米Coinbaseに対する訴訟の継続を許可
- 経営破綻したFTXの元CEOサム・バンクマン・フリード氏に懲役25年の判決
暗号資産市場概況
3/24~3/30週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+7.31%の10,545,500円、ETH/JPYの週足終値は同+3.41%の530,145円であった(※終値は3/30の当社現物EOD[3/31 6:59:59]レートMid値)。
米ビットコイン現物ETF(グレイスケール社ETF)からの資金流出はいったんの終息を迎え、再び流入超へ。ビットコインの現物需要を背景に騰勢が続く週となった。
週初にはイギリスのロンドン証券取引所(LSE)がビットコインとイーサリアムの上場投資証券(ETN)市場の立ち上げを発表。米現物ETFへの資金流入が戻ったことも相まってビットコインは力強く上昇した。
ETN(Exchange Traded Notes)とは、価格が特定指標に連動することを金融機関が信用により担保する「債権」である。一般には原資産(ここではビットコインやイーサリアム)への直接投資が難しい場合や、現物投資では高い指標連動性を実現することが難しい場合に採用される(裏付資産を必要としない)が、LSEの概要書を参照すると、レバレッジが禁止されており、原資産を規制下のカストディアン(保管業者)を介しコールドウォレットで保管することが義務付けられていることから、実質的に現物への直接投資に近い商品となることが予想される。
本ETNの取引は機関投資家にのみ許可されることになるが、今まで米現物ETFへのアクセス手段を持たなかった英国の機関投資家にビットコインへのアクセス手段が提供されることは、米現物ETFがそうであったのと同様、ポジティブニュースである。また、米国ではイーサリアム現物ETFの承認可否が検討下にある状況だが、英イーサリアムETNの可否判断の方が早く結果が出そうである点も興味深い。英ETNは発行者の申請に問題がなければ5月22日までに承認され、5月28日に取引開始となる見込みだ(米VanEck社ETH現物ETFの最終判断期限が5月23日)。
週央には米大手取引所Coinbaseが棄却を要請していたSECからの提訴に対し、ニューヨーク連邦地裁が却下(訴訟の継続を許可)したことを受け、暗号資産市場全体が大きく下落した。当審議では、Coinbaseが提供していたステーキングプログラムについて、未登録証券の募集および販売に関与しているとするSECの訴えの合理性を認めたほか、Coinbaseが未登録証券の清算機関、ブローカー、取引所として運営されているとの申し立ての妥当性も認められた。現在現物ETFの検討が進んでいるイーサリアムの証券性を問う上でも、本裁判の結果は今後重要な論点を提供する可能性がある。
週後半には、暗号資産市場参加者の多くが注目したFTXの元CEOサム・バンクマン・フリード氏の判決(懲役25年が確定)というイベントがあったが、市場に大きな影響をもたらすことはなく通過し週末を迎えた。FTXの破綻が暗号資産業界にもたらした影響の1つ(海外取引所におけるProof of Reserveの標準化)については、末尾の「今週のひとこと」にてコラムとしたため参照されたい。
次週以降は、中期ではビットコインの半減期(現時点では4月20日前後を予定)、長期では米国でのイーサリアム現物ETFの承認可否や、本稿でも取り上げた英ETNの承認状況・Coinbaseの裁判動向などを注視されたい。また、今後は他国に先駆けてブラジルが利下げを始めたように、政策金利の引き下げを行う国が増え、世界的な利下げサイクルが開始していくことが考えられる。今までと同様、各国の経済状況(政策金利、GDPやインフレ率など)の変化にもアンテナを広げておきたい。
BTC/USD週間チャート(30分足)
BTC/JPY週間チャート(30分足)
ビットコイン現物 ETFのネットフローと運用資産残高合計
各国の政策金利
参考:Kucoinの通貨ごとの残高状況(ドル価・直近1年間)
3/24~3/30週の主な出来事
3/30~4/6週の主な予定
【今週のひとこと】プルーフ・オブ・リザーブ(Proof-of-Reserve)
プルーフ・オブ・リザーブは日本語で「準備金の証明」と訳され、英語のProof of Reserveの頭文字を取ってPoRと表記されることもあります。2022年11月、大手暗号資産取引所だったFTXが破綻して以降、暗号資産取引所における顧客資産の管理について信頼性が問われるようになり、認知が広がりました。
海外の取引所においては、十分な準備金を保有していることを証明するため、第三者の監査機関に調査を依頼し準備金の実態を客観的に証明するケースや、準備金比率を公開しユーザーの信頼獲得に努めているケースも存在します。
一方で、第三者機関によるPoRはあくまで指定された日時での資金残高を示すものにすぎず、一時的に準備金があるように装うことも可能であることが指摘されています。また、公開された準備金比率はあくまで取引所自身による情報であることを懸念する声もあります。
本当の意味でのProof of Reserveを実現するためには、監督省庁による規制を行った上で、会計・監査制度の整備や、隠蔽が行えないウォレットアドレスの公開等、取引所が不正を行えないような仕組みを作っていく必要があります。
オフショア地域での登記が多い海外取引所に比べ、日本の暗号資産取引所は法令に基づき金融庁の監督下で分別管理(顧客資産と自己資産を区別して管理すること)を行うことが義務付けられています。また、分別管理の状況は内部監査・外部監査により十分に監視されているため、顧客資産の管理方法についてはオフショアの取引所に比べ進んでいるといえるのではないでしょうか。
このレポートについて
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。
<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
当社の取り扱う暗号資産のお取引にあたっては、その他にも注意を要する点があります。お取引を始めるに際しては、「取引約款」、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただきご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。
秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失う可能性があります。
暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。