ブロックチェーンは世界に正しい評価をもたらすか? PoT #01-3 LayerX福島良典×Nayuta栗元憲一

藤本真衣

究極的にすべてを正しく評価できる世界を目指して

藤本:福島さんがGunosyで掲げていたミッションは「情報を世界中の人々に最適に届ける」でした。新しく立ち上げたブロックチェーン関連事業を行う会社、LayerXのミッションは何ですか?

福島:Evaluate Everything」(究極的にすべてを正しく評価できる)というのがLayerXのミッションです。

ブロックチェーンは個人を助ける新しい公共財だと僕は思っています。

抽象的な話ですが、たとえばゴミを拾ったという行為は社会的コストを下げていますよね。でも今だとこの行為は換金できないんです。でもブロックチェーンを使えばそれができるようになるかもしれない。つまりブロックチェーンは究極的な個人の信用を支えるインフラになるんじゃないかと思っています。

ちゃんとした信用ある行為をしているのにアンダーバリューな評価を受けることとか、逆に本当は適当な行為なのにオーバーバリューな評価を受けているという状態が、企業でも人でもモノでもあると思っています。

それらすべての行為を透明にして、ある種の価値交換をスムーズにして正しい価値に収束していくようにしようというのが、ブロックチェーンが持つインセンティブと透明性の良いところだと思っています。

だから僕たちは「Evaluate Everything」(究極的にすべてを正しく評価できる)をミッションにしています。

正しい人が正しく評価される世界

藤本:私もビットコインなどを使った寄付のプラットフォームを運営しているんですが、そのお話にすごく共感します。なぜ寄付と仮想通貨が良いと思ったというと、その透明性の部分です。

正直寄付する時って、その寄付したお金がどこからどこに渡っているのか透明性がなくてよくわからないですよね。でも仮想通貨だったら透明性が出てくる。

そしてもちろん寄付する人は実は見返りを求めていなくて、透明性がなくてもみんなが見えていないところで役に立てればいいなと思っている人が多いと思います。でもそんな見返りをもとめず評価されなくてもいいよって人もやっぱり評価されるような世界にしたい。そして例えばその人が不幸な目にあったりしたときにちゃんと評価が蓄積されていて、その人が救われるような世界であってほしいと思っています。

だから私はそういうものがブロックチェーンで見える化できたらいいなと思っています。

もちろん正しい評価ってどういうふうに作るのかというのが、すごく難しい。その評価を得たいからお金を持っている人がわざと寄付する人も出てくるかもしれないし。

ブロックチェーンに載せる前にというか。そういった正しい評価の基準ってどういうふうに作っていけばいいのかなと今悩んでいます。

ブロックチェーンという技術を正しく使っていくことの重要性

栗元:ブロックチェーンで取引の透明性がでてくるし、中間者の力を弱めることができる。それをうまく使えば良い世界にできるんですが、逆に悪い世界にもできると思っています。だから一番重要なのはブロックチェーンの上にどのような設計をするかです。ただ単にブロックチェーンや仮想通貨で世の中が良くなる、というような話を聞くと、いやちょっと待ってよと思います。

福島:ブロックチェーンの本質的なところは、プロトコルがあって、そのプロトコルに対してみんなが利己的に行動しているだけというところなんですよね。例えばビットコインであれば善意でやっている人はいなくて、マイナーはビットコインノマイニングを儲かるからやっているわけです。

みんな欲しいからやっているだけなのに、みんな利己的なのに、誰も嘘をつかないという仕組みですよね。みんな嘘をついても損をするだけなのでデジタルデータ上で正しく誰がいくらのビットコインを持っているかを合意できるわけです。

これが拡張していくと、これからはそういったルール同士を競争させる概念が出てくると思います。

正しくインセンティブ設計されたもの同士が戦ったり、取引所だったらプロコトル同士が戦ったり、信用スコアだったらそのルールでこういう行動がいいんですよみたいなものが戦ったり。それで一番強いルールが残るみたいになるんじゃないかと思います。そうするとむしろみんなルールを選択できるようになるはず。まだこれは未来の夢物語かもしれませんが。

現実的な話でいくと、僕はブロックチェーンが「銀の弾丸」みたいに言われているのにはすごく違和感があるんです。

所詮ブロックチェーンが今できることって、入力されたデータに対して、ある種のいろんな前提条件がありますが、その前提条件が揃った時に取引順序が正しく合意できますよという、ただそれだけの話です。状態の順序をもっと拡張しているだけなんです。

だからブロックチェーン自体がどうこうというよりは、ブロックチェーンを使った新しいプロトコルを生み出すとか、その技術をどのように使っていくかが重要です。

現段階ではオラクルの問題とかがあるので、夢を語るのではなく、最初に変わるのはこういう領域だよねと。それを現実的に見ていくと必要があると思っています。

(第4回につづく)

→第4回はこちら「パブリックチェーンのインパクトと課題、その規制と技術の発展 PoT #01-4 LayerX福島良典×Nayuta栗元憲一」

→このインタビュー前回まで記事を読む「Proof of Talk #01 LayerX 福島良典×Nayuta 栗元憲一×グラコネ 藤本真衣

インタビューイ・プロフィール

福島良典(ふくしま・よしのり)
株式会社LayerX 代表取締役社長
1988年生まれ、愛知県出身。東京大学大学院工学系研究科修了。大学院在学中に「Gunosy(グノシー)」のサービスを開発し、2012年11月に当社を創業、代表取締役に就任後、2013年11月代表取締役最高経営責任者に就任。同社は創業より約2年半というスピードで東証マザーズに上場、2017年12月には東証第一部へ市場変更する。2018年8月よりブロックチェーン領域の技術開発のために新たに設立した、Gunosyの子会社である「株式会社LayerX」の代表取締役社長に注力するために異動。2012年度情報処理推進機構(IPA)「未踏スーパークリエータ」。2016年にはForbes Asiaよりアジアを代表する「30歳未満」に選出される。

栗元憲一(くりもと・けんいち)
株式会社Nayuta 代表取締役CEO
福岡市出身。先端SoCの開発やLSI開発のためのEDAソフトウェアアルゴリズム研究などに十数年取り組む。2011年からAndroidとハードウェアを組み合わせたソリューションを開発している。2011年 google developer day の developer sandbox採択。著書に「FPGAキットで始めるハード&ソフト丸ごと設計」がある。

Proof Of Talkについて

「あたらしい経済」と「グラコネ」の仮想通貨・ブロックチェーン業界に質の高いコンテンツを生み出し、業界のさらなる活性化を目指す共同企画第1弾「Proof Of Talk(PoT)」がスタートしました。グラコネ代表であり、ミスビットコインとして仮想通貨界を牽引してきた藤本真衣と、あたらしい経済を切り開くトップランナーたちとの鼎談企画です。

記念すべき第1回は株式会社Gunosyの創業者で8月1日にAnyPay株式会社とブロックチェーンに特化した合弁会社 株式会社LayerXを立ち上げた福島良典氏と、ブロックチェーンとIoTに積極的に取り組む 株式会社Nayuta 栗元憲一氏のトークセッションをお届けします。

(編集:設楽悠介

この記事の著者・インタビューイ

藤本真衣

Intmax Co-Founder
2011年にビットコインと出会って以来、国内外でビットコイン・ブロックチェーンの普及に邁進。海外の専門家と親交が深く「MissBitcoin」と呼ばれ親しまれている。
自身は日本初の暗号通貨による寄付サイト「KIZUNA」やブロックチェーン領域に特化した就職・転職支援会社「withB」ブロックチェーン領域に特化したコンサルティング会社「グラコネ(Gracone)」などを立ち上げる。
暗号通貨とBlockchainをSDGsに活用することに最も関心があり、ブロックチェーン技術を使い多様な家族形態を実現する事を掲げたFamiee Projectや日本円にして17億円以上の仮想通貨寄付の実績を誇るBINANCE Charity Foundationの大使としても活動している。
NFT領域に関しては、2018年よりNFTに特化した大型イベントを毎年主催している他、Animoca Brands等の、国内外プロジェクトのアドバイザーも多数務める。2020年以降は、事業投資にも力を入れており、NFTを使った人気ゲーム、Axie Infinity」を開発した Sky Mavis 、Yield Guild Games、Anique等に出資している。現在はイーサリアムのLayer2プロジェクト「Intmax」のCo-Founderとして活動中。

Intmax Co-Founder
2011年にビットコインと出会って以来、国内外でビットコイン・ブロックチェーンの普及に邁進。海外の専門家と親交が深く「MissBitcoin」と呼ばれ親しまれている。
自身は日本初の暗号通貨による寄付サイト「KIZUNA」やブロックチェーン領域に特化した就職・転職支援会社「withB」ブロックチェーン領域に特化したコンサルティング会社「グラコネ(Gracone)」などを立ち上げる。
暗号通貨とBlockchainをSDGsに活用することに最も関心があり、ブロックチェーン技術を使い多様な家族形態を実現する事を掲げたFamiee Projectや日本円にして17億円以上の仮想通貨寄付の実績を誇るBINANCE Charity Foundationの大使としても活動している。
NFT領域に関しては、2018年よりNFTに特化した大型イベントを毎年主催している他、Animoca Brands等の、国内外プロジェクトのアドバイザーも多数務める。2020年以降は、事業投資にも力を入れており、NFTを使った人気ゲーム、Axie Infinity」を開発した Sky Mavis 、Yield Guild Games、Anique等に出資している。現在はイーサリアムのLayer2プロジェクト「Intmax」のCo-Founderとして活動中。

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ブロックチェーンは個人を助ける新しい公共財だと僕は思っています。 抽象的な話ですが、たとえばゴミを拾ったという行為は社会的コストを下げていますよね。でも今だとこの行為は換金できないんです。でもブロックチェーンを使えばそれができるようになるかもしれない。つまりブロックチェーンは究極的な個人の信用を支えるインフラになるんじゃないかと思っています。

世界で戦えるブロックチェーン企業を目指す、LayerXの挑戦 PoT #01-5 LayerX福島良典×Nayuta栗元憲一

僕がGunosyの代表を降りてまでなんでやるのかというと、世の中が大きく変わる時ってそんなに無いと思っているからです。結局この20年で何が発展したかというとインターネットですよね。そしてここ5年で何に張るべきでしたかというとモバイルでした。そして今、自分が完全にゼロの状態で起業家として何に賭けるかなというと、やっぱりブロックチェーンだと強く感じました。