前回の記事ではWeb3 Foundationからグラントに採択されたPlasm(プラズム)について語っていただいたStaked(ステイク)株式会社のCTO山下琢巳氏に、プログラムを始めたきっかけや、なぜブロックチェーンに挑戦するのかについて訊いた。
プログラムをはじめたきっかけ
−山下さんはいつからプログラミングを始めたんですか?
プログラミングを始めたのは、最初は中学2年生のときでした。友達がゲームを作るスクリプト言語を紹介してくれて、それで当時学校の先生を敵キャラにしたシューティングゲーム作ったのが初めてのプログラムでしたね(笑)。そこからハマっていきました。
その後高校では情報技術科でプログラムを学んで、情報処理部っていう部活にも入っていました。そこではC言語を学びました。学習過程で競技プログラミングの問題を解いていたら楽しくなって、情報オリンピックやパソコン甲子園という高校生向けの競技プログラミングの大会に出ていました。
その後大学に進学しても競技プログラミングは続けていて、いろいろな大会に出ていました。そして大学3年生の時に、ACM-ICPC(国際大学対抗プログラミングコンテスト)で世界大会に出場して、そこで入賞しました。その大会では世界大会は2回しか参加できないというルールがあって、僕は2回目で入賞したので、そこでもう大会に出られなくなって強制的に競技プログラムからは引退したんです。ちょうど大学3年生の頃でした。
それでどうしようかと思ったときに、友人に誘われてプログラミングのバイトを始めました。そこがたまたまブロックチェーンの企業でした。
僕も最初はかなりブロックチェーンに懐疑的だったんですけど、コミットをしていくうちに、これ面白いじゃんと気づき、ハマっていって、その過程で自分でもブロックチェーン作りたいなと思うようになりました。
魅力に気がついて自分でブロックチェーンを作ってみた
ただ自分一人でブロックチェーン作るってなったときに割と時間が必要なんですよね。ブロックチェーンはコンピュータサイエンスの集大成的なところがあり、暗号理論も通信技術もデータベース構造もすべて実装しなければならない。
ちょうどその頃IPAがやっている「未踏」の応募期間だったのでその時に考えていた自分のオリジナルのブロックチェーンの構成を応募したら採用いただいて、それで1年間未踏のプロジェクトでオリジナルのブロックチェーンを作らせてもらっていました。
このときに作ったのが前回取り上げていただいたProskenion(プロスケニオン) です。
−山下さんほどのスキルがあればいろいろなジャンルや業界などでチャレンジできると思うんですが、その中でなぜブロックチェーン業界を選んだのですか?
一番は人がいないからですね。まだまだエンジニアの人口がすくない、コミュニティも狭いです。そしてブロックチェーンの業界は、中心にアイデアがあって、それとその応用先を考える人たちは多いんですけど、結局その応用先との繋ぎとなるエンジニアが少なくて、これは自分でも確実にポジション取れると思ってブロックチェーンを始めました。
−その後Stakedにはどのようにジョインすることになったんですか?
「未踏」が終わった当初は、自分で起業しようと思っていたんです。でもその時に東京大学でブロックチェーン寄付講座があって、そこでステークのCEOである渡辺創太に出会いました。ちょうど会社作るのもいろいろ手続きが面倒なだと思っていたタイミングでもあり、また話しているとやりたいことが一緒だったので、彼から「もう会社作ってある。あとはお前がジョインするだけだ」と言われて今年の3月にジョインすることにしました。
そして現在はWeb3 Foundationの支援を受け、Substrateというフレームワークに載せるモジュールとなるPlasm(プラズム)を開発しています。
山下琢巳が実現したい未来
−山下さんはこれからPlasmの開発を通してどのような世界を実現したいですか?
これからはみんながブロックチェーンを自分たちで作っていく時代になると思っています。そうするとどんどんと新しいものができて、複雑化してしまう。そこで連携が必要になる。まさにそこでPolkadot(ポルカドット)が複数のチェーンを繋ぐ役割を果たそうとしている。それと並行してまず僕らはその繋がってチェーン同士がスケールできるようにするPlasmの開発を進めたいです。
そして最終的に僕とCEOの渡辺創太が作りたいのは経済圏なんですよね。これからWeb3に進んで行く世の中に対して、最良なエコシステムを構築できる機会を提供していきたいですし、僕らもその仕組みを作っていきたいと思っています。
(つづく ※つづきはPlasmの開発の進捗があり次第、取材して記事化いたします)
編集:設楽悠介/撮影:大津賀新也