アーティストファーストなNFTマーケットプレイス「nanakusa」が目指す世界(スマートアプリ 高長徳 インタビュー)

高長徳

国産NFTマーケットプレイス「nanakusa」ローンチ

暗号資産・ブロックチェーン技術を活用したNFT(非代替性トークン)。リアルなモノや、デジタルデータと紐付けることで、固有の価値を表現できるという特性を持つこのNFT技術は、今年に入りブームといってもいいほど盛り上がりをみせている。

そんな中、以前からDapps向けのウォレット開発やNFT事業に取り組んできた株式会社スマートアプリは、今年3月22日に日本でも早いタイミングでNFTマーケットプレイス「nanakusa」をベータローンチし、公認クリプトアーティストの採用を進めていた。そして4月26日「nanakusa」正式ローンチした。

今回「あたらしい経済」は「nanakusa」を開発したスマートアプリの代表取締役 高長徳氏にインタビューを実施。高氏に正式ローンチで実装した機能の詳細や、今のNFTマーケットをどう見ているか、今度の展望について語っていただいた。

正式ローンチで実現できること

−今回のローンチで、具体的には何ができるようになるんでしょうか?

「nanakusa」公認クリプトアーティストがNFTの作成と販売ができるようになります。そしてコレクターの方はそのNFTが購入できるようになり、さらに購入したNFTをコレクターが「nanakusa」上でも二次流通できるようになります。また「nanakusa」上で二次流通していただきたいですが、もちろんコレクターの方は購入したNFTを、当然ですがOpenSeaのような他のプラットフォームでも販売できるようになります。

本日までにすでに公認クリプトアーティストの方々には「nanakusa」のアーティスト向けの管理画面をご用意していまして、メタマスクなどWeb3ウォレットでアクセスすれば、そこからアーティストの方は自身の作品をアップロードして、NFTをミントできるようになっています。

すでに公認クリプトアーティストの方々には「nanakusa」のコミュニティのディスコードに入っていただいてまして、そこで何度も説明会を開催しています。そこで発行までに困ったことがあればなんでもサポートできる体制になってます。

−NFTを作るブロックチェーンは選べるんでしたっけ?

はい、イーサリアムとポリゴン(Polygon・旧 Matic Network)の両方が選べます。

−ガス代はアーティストさんのご負担ですか?

はい、それはアーティスト負担です。その辺りもコミュニティでどの程度のコストが必要など、アドバイスしています。

IPFSや独自コントラクトにも対応

−NFTに紐づくコンテンツファイル、アート作品のデータを置くサーバーも選べますか?

「nanakusa」のコンテンツサーバーと、分散型ストレージであるIPFS(Inter Planetary File System)を選べるようになってます。ただ現在弊社が特許出願中のコンテンツ閲覧権限を購入者だけに絞るような機能があるんですが、それを使うには「nanakusa」を選んでいただく必要があります。

−コントラクトについてはどのような選択肢がありますか?

この部分今アーティストさんの間でも話題になってる部分ですよね。「nanakusa」では独自コントラクトを使うことも、「nanakusa」のコントラクトを使うことも、どちらも選べるようになってます。

アーティストファーストなプラットフォーム

−お話し聞いているとアーティストさんにディスコードでサポートしたりと、非常にアーティストさんに対して手厚いフォローをしている印象がありますね。

はい、ディスコード内ではNFTの発行のサポートはもちろんですが、いろいろなチャンネルを用意していまして、そもそもNFTについて学べる動画を公開したり、約100人のアーティスト同士が自由にコミュニケーションやコラボレーションができるチャンネルもご用意してます。ブロックチェーンについて詳しくないアーティストさんが多いので、その部分は手厚くフォローしています。

このコミュニティの中で、アーティストさんから上がってくる機能面のリクエストなどにも柔軟に対応していってます。

一例を挙げると、売上を分割する機能をアーティストさんからの要望で今回のローンチに合わせて実装しました。クリプトアーティストさんはコラボして作品を出すことも多いでの、その時の売上配分が自動で行えるような仕組みです。最大5アドレスまで分割できる仕組みになってます。このように今後もアーティストさんのリクエストに対して柔軟に答えていきたいと思ってます。

またアーティストのサポートでいうと、税金の部分などで不安な方も多いんではないかと思いまして、仮想通貨の財務・管理会計ソフト「Gtax(ジータックス)」を提供する株式会社Aerial Partnersさんと提携して、公認クリプトアーティスト向けにNFT販売収入やロイヤリティ収入等の売上管理ができる専用サービス「Gtax for Creators」を提供いたします。

アーティストさんにはこれを利用開始年は無料で提供し、煩雑な売上管理や納税申告の準備の負荷を下げてアーティスト活動に専念いただけるようにしたいと思ってます。

重要になるキュレーションの役割

−NFTに関してはここ連日、海外でも国内でも大物アーティストさんやセレブの方などが色々な作品の発表をしている状況にあります。コウさんは今の状況をどう見ていますか?

大物アーティストの方の参入で、これ以降も販売価格が大きいものがたくさん出てきて加熱していくような流れはあると思いますが、ある程度するとそれも一定の落ち着きを見せてくるのではと予想してます。

ハイアートや世界的に有名な方の作品、ゲームやアニメなど著名なIP、そして一般のアーティストさんやこれからのアーティストさんの作品、それぞれでNFTのマーケットはレイヤーが分かれていくのではと思ってます。そしてハイアートや高額のものだけが売れるだけではマーケット全体は大きくならないと考えてまして、個人のクリエイターの面白い作品が細かく売れる、というような状況が必要だと考えてます。

ですので、そろそろキュレーションメディア的なものが出てくる、必要になってくると考えています。あとはいろんな大手さんの参入も日本でも発表されていますが、マーケットもたくさん出てきます。

今からクリプトアーティストデビューする人も良いものがちゃんと評価されるように、ちゃんと作品を見極めてキュレーションするメディアがいて、それを売買できるマーケットプレイスがあって、市場として健全なシステムができていって欲しいと思ってます。

「nanakusa」が目指すもの

−このような状況で、「nanakusa」をどのように育てていきたいですか?

うちはスタートアップなので、まずスピード感を持っていろんなことができる強みがあります。ですので今回のローンチ以降もどんどんと日本のサービスとしては先陣を切ってさまざまな機能を追加して、アーティストに寄り添いながら市場の拡大に貢献していきたいですね。

これから大手さんがどんどん参入してきますが、それらが整うまでに少なくとも数百人のアーティストが「nanakusa」上で活動できるような世界を作っておきたいですね。

大手さんが参入してくると、もちろん市場拡大の大きなきっかけになるんですが、一方アーティストさん側にとっては「うちのプラットフォームと専属契約で」みたいな話も多くなってくるんではないかと思ってます。そして手数料などもどんどん高くなっていくかもしれません。今ままでのインターネットにおけるIPの流れをみていると、そうなる可能性は十分にありますよね。

でもそれは本質的にはブロックチェーン的ではないと思うんです。最近アーティストさん側もその辺りがわかってきています。だってデジタル課金でIP売るだけなら、別にブロックチェーンじゃなくていいじゃないですか。

だから「nanakusa」では公認アーティストを当然専属などにしていませんし、他のプラットフォームでも自分たちで作品をどんどん発表できるようなレクチャーもしています。

大手さんがどんどん参入してくる前に「nanakusa」をまずはアーティストもコレクターもちゃんと需要と供給があるような場所にしていきたい、そして多くのアーティストのかたが個人として世界に向けて活動できるお手伝いをしていきたいと思ってます。

「Immutable X」や「バイナンススマートチェーン」にも

−具体的に直近で「nanakusa」は今後どのような機能を拡大していこうと考えてますか?

まずオークション機能は残念ながら今回は間に合わなかったんですが、近いうちに実装する予定です。また対応するブロックチェーンも増やしていく予定です。ガス代を解決するレイヤー2ソリューション「Immutable X (イミュータブルエックス)」への対応や、Binanceの「バイナンススマートチェーン(BSC)」への対応も検討しています。

また、次の公認アーティスト募集も5月中に実施する予定です。今後もアーティストにとってさまざまな体験を提供できるようなプラットフォームにしていきたいです。

参考リンク:nanakusa

 

取材/編集:設楽悠介

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高長徳

株式会社スマートアプリ 代表取締役社長 CEO
GMOメディアでメディア事業、ヤフーでヤフーモバゲー事業、ドリコムやモブキャストでプラットフォーム事業プロデュース、ゲーム運営経験を積む。昨今では様々な分野のアプリ事業に対する立ち上げ開発支援等を展開してきた。

株式会社スマートアプリ 代表取締役社長 CEO
GMOメディアでメディア事業、ヤフーでヤフーモバゲー事業、ドリコムやモブキャストでプラットフォーム事業プロデュース、ゲーム運営経験を積む。昨今では様々な分野のアプリ事業に対する立ち上げ開発支援等を展開してきた。