「個としての力をつけろ、会社はこうあるべきという幻想を壊せ」箕輪厚介という、あたらしい経済時代の働き方 13,000字インタビュー(1)

箕輪厚介

価値主義的な働き方は加速する

−サラリーマンでもあり、オンラインサロンもやってコンサルもやるという箕輪さんの働き方は、「あたらしい経済」時代の働き方の一つではないかと思っています。箕輪さんから見て、今後「働き方」はどのように変わっていくと思いますか。

僕の働き方はいわゆる価値主義的なところに体重をかけた働き方です。これからAIとかブロックチェーンとかベーシックインカムとかがどんどん普及していくと、僕みたいなスタイルは普及すると思っています。

以前SNSでオンラインサロンの売上やコンサルの売上で月収がすごい金額になったと発信したことがあるんです。正直それを見て嫌悪感を持った人から批判されたりしました。

でも僕は本当にお金の額に興味がないし、金持ち自慢とかではなくて、純粋に「これから世の中変わるよ、だからみんなも僕みたいに働けばいいのに」と思って、そういった発信をしているんです。

旧時代の働き方を重んじていて、それを壊そうとは思っていない人が批判するのはどうでもよくて、これからの若い人達向けて「いいな、普通のビジネスパーソンでもこれだけできるんだ」と思ってもらえるために発信しています。

いま会社に勤めているビジネスパーソンが、僕みたいな多様な働き方をしたら、そんな彼らが勤める会社自体も今よりも強くなると思っています。

社外で「個」として活動せよ

−多くのビジネスパーソンが会社の外で「個」としても活動するのはそんなに簡単でではないのではと思っています。もしかしたら会社の中で10パーセントぐらいの人はそうできるかもしれないですが、例えば半分以上の人がそうなったら会社自体が機能しないのではないでしょうか?

まず、すべてのビジネスパーソンにとって、会社に枠組みにとらわれずに自分という「個」が、市場に出たらいくらお金を稼げるかというのをトライして実感するだけでも価値があると思います。

それで上手くいかなければ現時点の自分の無能さに気付くことができるし、結果として情報への感度は高くなるはずです。そして多くの社員がそういったアクションをすることは会社という組織にとってもメリットとして返ってくると思っています。

だから、みんな上手く行く人もそうでない人もいると思いますが、まずやってみるというのはいいことです。

その上で、仮にですが社員の半数が「個」として社外で活動し出したとしても、僕は会社という組織が機能しなくなるとは思っていないです。むしろ長い目で見れば強い組織を作れるんじゃないかと思っています。

「会社はこうあるべき」という幻想を壊せ

現在あまりそのような活動を促進している会社は少ないですよね?

なぜ現在多くの会社がそういうことを促進しないかというと、それは経営側が社員に見せている「会社はこうあるべき」という一種の幻想が解けてしまうことへの恐れからだと思います。

会社というのは、やはり株主や経営者の力が強いです。そしてそこで働く社員というのは誤解を恐れずにいうと、やはりある見方では搾取されてしまうモデルになっています。もちろんそれは会社というモデルが悪なわけではなくて、その分、会社は安定的な給料を払って被雇用者のリスクヘッジをしてくれる。たからみんなが会社で働くわけです。上はないけど下もない、平均的なものを保証してくれる場所です。

確かに経営者目線で見ると、自社の社員が僕みたいな働き方をし始めることに抵抗があるのかもしれません。

本業に集中してほしいと思うでしょうし、新規事業をバンバンやったり会社の未来を考えて仕事をしたりしてくれるような優秀な社員って会社からしたら離したくない人材です。でもそんな社員たちこそ本来外部で「個」としても活躍しやすい。

だからそんな社員達が例えばオンラインサロンとか外部でコンサルとかをやり始めると、他に収入ができて、全員とは言わないですが一定層の人は会社から離れていってしまいやすくなると思います。

そうすると組織がおかしくなるというよりも、経営者としては短期的には優秀な社員が辞めるリスクが高まるので痛手です。

僕が運営するオンラインサロン「箕輪編集室」では、僕は経営者的な立場なので、似たようなこと考えたりすることもあります。例えば、サロンで活躍している人ほど、ブランド人化していって自分でもサロンを持つようになります。「ぶっちゃけ箕輪編集室に入ってる意味なくない?」と思われたらどうしようとも思いました。

だから会社の経営者側のその気持ちはよく分かります。経営側がそういった活動にブレーキをかけることは仕方ないと思います。でもそういった活動にブレーキをかけていくと、その会社組織内ではいいですが、世の中の市場単位で考えるとこれからのあたらしい時代に中長期的にどんどんとその会社の力は弱くなってしまうと思います。要はイケてない組織になっていく。

僕はそんな時こそ経営者側は、優秀な人が辞めるとかいうような短期的なリスクには囚われずに、その個人が活躍することを応援する。旧時代の会社という幻想を自ら壊し、イノベーションを加速させる側に立つことが重要だと思っています。僕は堀江サロンで編集学部の特任教授をやっていて、そこで学んだノウハウを使って「箕輪編集室」を立ち上げました。その時ホリエモンに報告したら「最高じゃん、どんどんやれよ」と言われました。短期的に見たら僕の活動のメインが「箕輪編集室」に寄ってしまうし、堀江サロンから僕のサロンに人が移るかもしれない。

でもホリエモンは世の中が新しい方向に行くことは応援するというスタンスです。

結果、僕と堀江さんの関係はより深くなったし、仕事でも今まで以上に返せていると思います。

「優秀な社員がどんどん外でスターになって辞めていく、でもそんな辞めた人もその会社を愛しているという雰囲気があるから、常に優秀な人材が新しく入ってくる、新しい情報が集まる」というように多くの会社が本来は舵を切っていかないと、これからの「あたらしい経済」時代は厳しいのではないでしょうか。

いま大きなベンチャー企業などでは、どんどんと資本を入れた100パーセント子会社を作って、若手社員に社長をさせたりしていますよね。それはある種、折衷案のようなものかもしれないですね。

あなたの副業は本物?

−副業解禁などもその変化の兆しなのでしょうか?

大企業はいわば恐竜みたいなものなので、いきなり大きな変化を許容するのが難しいです。だから副業というような選択肢を組み込むことはその大きな変化の一歩だと思います。

でも働く側が副業をするのには注意が必要です。副業解禁になったから空いた時間にとりあえずアルバイトしようとか、そういう風になってしまうと、それは自分の時間をただお金に交換しているだけです。そのバイトがもちろん何かその人の活動目的に繋がっていればいいのですが、ただお金を稼ぐだけのものであれば、それは不毛な行為です。

本来はその時間を使ってお金だけを稼ぐのではなくて、自分が「個」としてのブランドを確立できるアクションをすべきだと思います。

次ページ《「個」としての自身のブランドを確立するために必要な2つのアクション》

この記事の著者・インタビューイ

箕輪厚介

1985年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2010年双葉社に入社。ファッション雑誌の広告営業としてタイアップや商品開発、イベントなどを企画運営。広告部に籍を置きながら雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊しアマゾン総合ランキング1位を獲得。2014年、編集部に異動。『たった一人の熱狂』(見城徹)、『逆転の仕事論』(堀江貴文)を編集。その後幻冬舎に移籍し、2017年にNewsPicks Bookを立ち上げ、編集長に就任。『多動力』(堀江貴文)、『お金2.0』(佐藤航陽)、『日本再興戦略』(落合陽一)、『人生の勝算』(前田裕二)などを編集。創刊1年で100万部突破。また1300名の会員を擁する日本最大級のオンラインサロン「箕輪編集室」を主宰。既存の編集者の枠を超え、様々なコンテンツをプロデュースしている。著書に『死ぬこと以外かすり傷』(マガジンハウス刊)。

1985年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2010年双葉社に入社。ファッション雑誌の広告営業としてタイアップや商品開発、イベントなどを企画運営。広告部に籍を置きながら雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊しアマゾン総合ランキング1位を獲得。2014年、編集部に異動。『たった一人の熱狂』(見城徹)、『逆転の仕事論』(堀江貴文)を編集。その後幻冬舎に移籍し、2017年にNewsPicks Bookを立ち上げ、編集長に就任。『多動力』(堀江貴文)、『お金2.0』(佐藤航陽)、『日本再興戦略』(落合陽一)、『人生の勝算』(前田裕二)などを編集。創刊1年で100万部突破。また1300名の会員を擁する日本最大級のオンラインサロン「箕輪編集室」を主宰。既存の編集者の枠を超え、様々なコンテンツをプロデュースしている。著書に『死ぬこと以外かすり傷』(マガジンハウス刊)。

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本当に価値があるものを生み出している人や経済活動は本当に少ないと思います。 そしてその無駄があって壮大に現在の経済は回っているのも事実なんですが、いまの若い人達は「要らないものを作って要らないものを消費していること」が、くだらないなと思っている。要らないもの作るよりシェアすればいいじゃんみたいに。 そういう時代においては無駄に作られたものよりも、遊んでいるようなことの方に価値が出てくるわけです。