ビットコインが世界の準備資産になり、伝統金融と分散金融(DeFi)間を自由に流通する未来を
モジュール型のイーサリアムL2チェーンを提供する次世代金融インフラ「Mantle(マントル)」。そのMantleをはじめ複数のチェーンにラップドビットコイン「ƒBTC($FBTC)」を展開するFunctionのCEO Thomas Chen氏を今回編集部は取材した。同氏にƒBTCの概要や優位性、リブランディングに込めた想い、伝統金融と分散金融の未来などについて訊いた。
【インタビュー】Thomas Chen, Function(FBTC)CEO
–Thomasさんの暗号資産業界に携わるようになったきっかけとこれまでのキャリアを教えてください。
私は常に新しくて他と違うものに惹かれてきました。例えばApple社のiPodではなく、MicrosoftのZuneを持っていたんです。とにかく私は子供のころから、みんなと同じことをしたくなかった。
学生時代の私は、金融とテクノロジーの両方に興味を持っていました。JPモルガンでインターンシップをする一方、モバイルアプリやデータ分野のフィンテック系スタートアップでもいくつか働いていました。
そして2018年の弱気相場で、友人たちが大学院に進学するなか、私はクリプト(暗号資産領域)を自分の「MBA」にしようと決めました。
ブロックチェーン技術が金融の技術スタックを変革するのであれば、それは二者択一の結果を導くだろうと考えたんです。もし圧倒的な変革に成功すれば、それは新しいことに挑戦する上で、よりエキサイティングで楽しい道になるだろうと思いました。
そこで私は2018年にBitGoのニューヨーク支社の立ち上げを手伝うことにしました。BitGoではまず北米のセールスリードを担当し、その後はグローバルのセールスリードも担当しました。その後Functionに移ったのです。
–FunctionのCEOとなった経緯を教えてください。
BitGoでは、私は同社の預かり資産(Asset Under Custody :AUC)を1,000億ドルまで成長させることに貢献しました。その過程で、非常に興味深い事実を目にしました。
BitGoのコールドウォレットには、機関投資家によって300~400億ドル相当のBTCが保管されており、それらは何の活用もされず、ただ保管料が支払われている状態だったのです。
そこで私は「ビットコインを価値の保存手段として眠らせておくのではなく、生産的な資産に変える方法があるはずだ」と考えたのです。
当時、BitGoはWrapped BTC(WBTC)を保有していたため、私はその方向性を探り始めました。
その後、WBTCが第三者とのジョイントベンチャーに移行した後のタイミングで、Mirana Venturesから連絡があり、彼らのインキュベーションプロジェクトである「FBTC(by Function)」を手伝わないかと声をかけてもらったんです。
ビットコインを金融商品へと転換する方法を見つけ出すことは、2兆ドル規模の市場機会がある。そう考えた私は、それを進めるべくFBTC(by Function)で働くことに決めたんです。

–ƒBTC($FBTC)とはどんなトークンですか?
FBTCは8つ以上の異なるチェーン上で利用可能なWrapped BTC資産です。その目的は、安全でスケーラブルかつ持続可能な方法で、BTCにユーティリティ(利回り)をもたらすことです。
–Ignition FBTCから「Function」にリブランディングした理由や、それに込めたメッセージは何でしょうか?
ブランド名を「Function」へと刷新した背景には、当社のビジョンと方向性をより明確に反映させる意図があります。
私たちは、「ビットコインがグローバルな金融市場におけるリザーブアセット(準備資産)となり、伝統金融(TradFi)と分散金融(DeFi)の間を自由に流通するようになる」と予想しています。
そのためには、ビットコインが異なるブロックチェーンやエコシステム間を自在に移動できる金融商品となる必要があります。
したがって、関数のf(x)で言うところのf(btc)こそが、Functionが取り組むべき方程式なのです。 具体的には、f(btc) = 流動性(liquidity) + 相互運用性(composability) + 資本効率(capital efficiency)です。

–ビットコインではなくƒBTC($FBTC)を投資家が持つことのメリットは何でしょうか?
ƒBTC($FBTC)を保有することで、さまざまなオンチェーンの利回り型プロダクトを活用できるようになります。現在私たちは、ユーザーがビットコインをカストディアルウォレットに保管したまま、こうした利回り獲得ができるソリューションの開発に取り組んでいます。
–ƒBTC($FBTC)の安全性やカストディアンについて教えてください。
ƒBTC($FBTC)は、裏付けとなるBTCを1:1で保有しており、その管理はMPCマルチシグ方式で行われています。また、資産の再担保(リハイポセーション)は行っていません(資産証明はこちらをご参照ください)。
鍵管理は、4つの機関からなるセキュリティカウンシルによって運営されており、今後さらに参加機関を増やしていく予定です。
多くの機関投資家は、分散型スマートコントラクトモデルよりも、自らがリスク評価・引受け可能な中央集権型のカウンターパーティーモデルの方を信頼する傾向があるのです。
–ƒBTC($FBTC)をマルチチェーン展開するにあたり、どのような基準でチェーンを選んでいますか?
主な基準は、1)ユースケース/実用性、2)TVLとユーザー数、3)利回り機会です。
–他のWrapped BTC(WBTCなど)と比較してƒBTC($FBTC)の優位性や差別化ポイントは何ですか?
ƒBTC($FBTC)は、機関投資家に特化しています。Galaxy DigitalやAntAlpha Primeといった戦略的かつグローバルな機関の支援を受けており、誰もが利用可能な機関グレードのインフラの構築を実現しています。ビットコインが大規模に機能するためには、機関投資家レベルの流動性インフラが不可欠です。
ƒBTC($FBTC)は、静的なラップドBTCソリューションとは異なり、スピード・コンポーザビリティ(構成可能性)・金融ユーティリティを重視した設計となっています。
主な差別化ポイントとしては以下の4点です。
・機関投資家レベルの信頼(Institutional Level Trust):AntalphaおよびGalaxyによる支援のもと、FBTCでは機関投資家が求める高水準のセキュリティインフラを提供します。
・即時流動性(Instant Liquidity):Ethereum、Mantleなどの主要なエコシステムにおいて、FBTCをシームレスに発行(ミント)/焼却(バーン)可能です。
・強力な流通(Strong Distribution):Antalpha、Bybit、Galaxy、Mantleのネットワークを通じて、他に類をみない流通チャネルを提供します。
・高度なDeFi統合(Deep DeFi Integration):Avalon、Babylon、Cianなどでのイールド商品の利用を可能にします。
–$FBTCを入手するにはどのような手段がありますか? また入手したFBTCをどのような方法で運用すれば収益を得られますか?
FBTCを手に入れる主な方法は、Bybitなど取引所経由となります。(その他複数のチェーンでスワップして入手することも可能です)
全リストはこちらからご確認ください。
–日本の投資家にはどのような印象を持っていますか?
日本の投資家はとても洗練されている印象があります。しかしビットコインに関しては保守的だとも感じます。
業界内での一般的なビジネス慣行を踏まえると、BTCは認可を受けたカストディアンに保管し、ステーキング報酬は現物(インカインド)で提供するのが望ましいというのが私の見解です。
私たちは現在、日本の投資家に向けてこの課題を解決すべく取り組んでいます。
具体的には、ビットコインを承認されたカストディアンに保管したままFBTCを発行して、利回りを生む方法を提供し、そのリワードを現物で還元する仕組みの構築を進めています。
—伝統金融のプレイヤーもビットコインについてはある程度理解が進んでいるように思います。しかしそんな彼らの中では、まだ DeFiを敬遠する人と思います。そういった人たちにDeFiの魅力どう伝えれば興味を持ってもらえると思いますか?
TradFi(伝統金融)のプレイヤーにとって重要なのは、リスク管理です。
DeFiは、新しいテクノロジー、金融商品、そしてゲーム理論が美しく融合しながら進化を遂げている領域ですが、TradFiでは、利害関係者が安心できるようにする必要があるだけでなく(リスク、規制、監査、コンプライアンスなど)、顧客自身がそのリスクを理解し、納得できる状態にする必要があることを理解しなければなりません。
とはいえ、TradFiがDeFiを取り入れることは避けられないと私たちは考えています。そしてその中で、ビットコインはプログラマブル経済におけるリザーブアセットとなっていくと確信しています。
だからこそ、DeFiの魅力を伝える起点は、最も信頼され、安全で、最大の暗号資産であるビットコインから始まる必要があると私たちは考えています。
もし、TradFiがすでに理解している資産でDeFi利回りを創出できれば、機関投資家向けに適したアーキテクチャ(インフラ)を構築できるようになるでしょう。
–トランプ就任で暗号資産市場は盛り上がりましたが、現在は下落しています。バブルは終わったんでしょうか? Thomasさんの現在の暗号資産市場に関する見解、今後の見通しを教えてください。
これは、見方と投資の時間軸によって大きく異なる問題です。
現在のマーケットは、極めてマクロ経済に左右されやすく、関税政策にも敏感に反応しています。
トランプ政権は、アメリカを製造業の拠点として再構築し、また、暗号資産、特にビットコインを戦略的準備資産と位置づけ、クリプト大国としての立場を確立しようとしています。
そのため、アメリカがグローバル市場と投資家のセンチメントに敏感になるにつれ、インフレと金利のバランスを取る必要が出てきます。
この環境下では、暗号資産のようなリスク資産は当然ボラティリティが高くなる傾向にありますが、リスクオフの局面ではビットコインが選好されやすいと考えています。
–ƒBTC($FBTC)に関する今後のロードマップを教えてください。
私たちは現在、インフラの整備に注力しており、次の2点を並行して進めています。
1)機関投資家がビットコインを保管したままDeFi商品にアクセスできる機能
2)DeFiプロトコルとの深い統合(ディープインテグレーション)
この2つの基盤が接続されれば、ネットワーク効果が生まれ、インセンティブ構築開始が可能になります。
ぜひともこの機会に、ƒBTC($FBTC)について日本の皆さんにももっと理解していただけると嬉しいです。
インタビューイ・プロフィール
Thomas Chen
Function CEO
Thomasは、ビットコインを価値の貯蔵手段から生産的な資産へと転換することを目指すチーム、FunctionのCEOを務めている。現在、Functionが手がけるWrapped BTC資産「FBTC」のTVL(預り資産)は13億ドルを超え、GalaxyやAntalphaといった大手機関からの支援を受けている。Function参画前は、BitGoにて6年半にわたりグローバルセールスを統括。BitGoにおいて、規制対象のカストディアンが管理する資産を1,000億ドル以上、担保資産を500億ドル以上に拡大させるなど成長を牽引した。それ以前は、フィンテック業界で7年間にわたり経験を積んでいる。バージニア大学マッキンタイア・スクール・オブ・コマース卒業。ファイナンスおよびマネジメントの学士号を取得している。
関連リンク
- function
- FBTC
- Mantle website
- Mantle Official X (EN)
- Mantle Official X (日本語)
- Medium(日本語)
- Mantle Official Discord
- Mantle Official TelegramJP
- Mantle tech docs
インタビュー/編集:設楽悠介(あたらしい経済)
翻訳/編集:髙橋知里(あたらしい経済)