「io.net」そして、DePINとは?
「io.net」は、AI(人工知能)及びML(機械学習)企業向けに、十分に活用されていないGPUリソースを統合して集約するDePIN(分散型物理インフラネットワーク)プロジェクトだ
目覚ましい発展を遂げている人工知能(AI)の分野において、特に最新の機械学習モデルでは、パフォーマンスを最適化したり、より大規模なデータセットやモデルに拡張したりするため、複数のシステムにまたがるマルチコアのパワーを活用することが極めて重要となっている。しかし、従来のクラウド・サービス・プロバイダーには、可用性の制限、選択肢の少なさ、高コストなどの課題がある。
そこで「io.net」は、主に大規模計算を必要とするAIスタートアップのために、非常に大きな計算能力を持つ、エンタープライズグレードの分散型コンピューティングネットワークを構築し、提供している。
この記事では、「io.net」の日本コミュニティマネージャー、JPNinja(Samurai)氏が「KudasaiJP」にて今年4月に日本ユーザー向けに行なったAMA(Ask Me Anything)の内容をお届けする。
AIコンピュートDePINの構築を目指す「io.net」とは(本編)
Q:自己紹介を兼ねて、あなたの経歴やチームについて教えていただけますか?
「io.net」のコミュニティマネージャー(日本担当)のJPNinja(Ssamurai)です。私は大学を卒業後、10年間SIerを経験後、暗号通貨の世界に飛び込みました。CEXやL1チェーン開発会社、さらに多くのメジャーなDAppsでコミュニティ管理やマーケティングの経験を積んできました。現在は、日本企業に勤務しながら、コミュニティマネージャーとして活動しています。
「io.net」は、2022年に米国の株式市場と暗号通貨市場の両方向けに機関投資家レベルの定量取引システムを開発する会社としてスタートしました。創業者兼CEOのアフマド・シャディドは、クオンツ・システム・エンジニアとして豊富な経歴を持ち、金融モデリングとクオンツ取引システムのためにハイパフォーマンス・コンピューティング・システムの計算能力を活用するソフトウェアとアルゴリズムの開発と最適化に注力しています。
※クオンツ:高度な数学の知識を活かしてデリバティブ商品を開発したり、トレーディングにおけるリスク管理のツールを作ること
Q:「io.net」について紹介してもらえますか? 既存のソリューションが解決できていない問題を解決できるのでしょうか? また競争上の優位点は何ですか?
「io.net」は、クリプトカテゴリで現在、最も急速に成長し、最も期待されている分野である、DePIN(分散型物理インフラプロジェクト)の1つです。私たちの革新的な分散型コンピューティングネットワークは、データセンター、クリプトマイナー、FilecoinやThe Render Network®のような他のハードウェアネットワークなど、さまざまなソースから利用されていないGPUコンピューティングパワーを集約し、機械学習エンジニアが簡単に活用できるスケーラブルなコンピューティングパワーを提供します。
なお「io.net」はソラナ(Solana)ブロックチェーン上に構築されており、ジョブや支払いを容易にし、計算の完全性を証明します。
Q:競合プロジェクトはあるのでしょうか? 機械学習には使用されていないようですが、分散型GPUレンダリングプラットフォームのThe Render Networkは類似プロジェクトになるのですか?
結論としては、競合プロジェクトはありません。
The Render Networkは、余剰リソースを収集し、レンダリング作業をするアーティストなどにGPUを提供するプラットフォームです。彼らは、「io.net」を使用することにより、収集したGPUをAIの力を使って束ねてパワーを強めることができます。
したがって、競合というよりは、The Render Networkや分散型ストレージネットワークであるFilecoinのサービスをよりよくするために、「io.netはと協業できると考えています。
Q:このプロジェクトのためにチームが構築した技術やプロトコルはありますか? または、チームが適用している注目すべき技術はありますか?
「io.net」は、直接通信のアプローチを採用して待ち時間を短縮し、相互アプリケーションの応答時間を改善します。さらに重要な情報パケットに優先順位を付け、高度な圧縮技術を採用することで、データ転送を最適化しています。
また、「io.net」のプラットフォームは、不正アクセスやサイバー攻撃の脅威からデータ転送を保護するため、堅牢な暗号化と認証メカニズムを統合しています。
これらの技術とプロトコルは、「io.net」の簡素化されたアーキテクチャの一部であり、スループットを最大化しながらオーバーヘッドを最小化し、低遅延と高速転送を保証することを目的としています。
Q:GPUパワーを顧客に貸し出すときに遅延があると使い物にならないため、高速にデータ転送できる仕組みを開発したということでしょうか?
「io.net」でGPUパワーを借りて使えるようになるまでの時間は、約90秒です。即席ラーメンすら作る暇がないくらい速いです。つまり、AWS(Amazon Web Service)など既存のクラウドサービスと比較して、同等の性能のサービスにかなり低コストでアクセスできるということになります。
Q:これまでに達成した主なマイルストーンと、目標とするマイルストーンをスケジュールとともに簡単に説明してください。
「io.net」は、シリーズA資金調達ラウンドで3,000万ドルの資金調達に成功し、ネットワークのノード数が12万を突破しました(参照)。
なお、4月9日現在ノード数は40万にまで増加しています。Discordのメンバー数は50万人を超えており、注目の高さに感謝しています。
実は、「io.net」のチームもノード数がそこまで増えるとは想定しておらず、テストネットのシステム設計は5、6万ノードを対象としたものでした。そのため、現在テストネットが少々不安定になっているようですが、4月下旬に本番環境に移行するため、テスト環境はそのままにし、本番環境に向けた調整を行っています。
もうひとつの重要なマイルストーンとして、4月28日に予定されているトークン・ジェネレーション・イベント(TGE)があります(追記:TGEを当初の4月28日から5月の初旬に変更しました。私たち(io.net)は一日でも早くIOをローンチしたいと考えており、スケジュールの連絡を待っています)。
クラウド・コンピューティング業界は、AmazonやGoogleといった巨大企業が支配しているのが現状です。しかし、私たちはニッチな分野を切り開く決意を固めています。
私たちの目標は、今後2年半から5年の間に、世界のクラウド・コンピューティング市場で少なくとも10%のシェアを獲得することであり、これは業界の主要プレーヤーになるという私たちのコミットメントを示すものです。
Q:これまでのプロジェクトで苦労したことはありますか? それをどのように解決しましたか?
私たちのプロジェクトでは、多様な分散型ソースからGPUを調達すること、ネットワークの安定性を確保すること、ユーザー間の信頼を確立することなど、さまざまな課題に遭遇してきました。
これらの課題に対処するため、GPUを集約するために様々な視点から分析し、強固なソーシング戦略を実装しました。また、安定性のために弾力性のあるネットワークプロトコルを開発し、ユーザーコミュニティ内で信頼を築くために透明性と信頼性を優先しました。さらに、ユーザーからのフィードバックと市場のダイナミクスに基づいてソリューションを継続的に反復し、継続的な改善と課題への適応を実現しています。
Q:「io.net」のトークンのトークノミクスと、有用性について教えてください。
トークノミクスは今月発表される予定です。
IOコインは、「io.net」におけるネイティブな暗号通貨で、IOエコシステム内の主要な支払い手段として機能し、サービスへの支払い、モデルの推論、サプライヤーへの報酬、モデル開発、トレーニング、デプロイのプロセスを管理するために使用されます。また、「io.net」エコシステム内でのアプリケーション開発を促進します。
IOコインは単なる通貨ではなく、プラットフォーム内の運営、取引、開発を推進する極めて重要な役割を担っており、エコシステム内のすべての参加者にとって、透明性、公平性、相互利益を保証します。
詳しくは、ホワイトペーパーのリリースをお待ちください。トークノミクスについても、とてもわかりやすく説明されています。
Q:運営を維持するための収入源はどのように確保していますか?
「io.net」チームは、主にマシンラーニング・アプリケーションの作成、実行、スケーリングのために設計された分散型GPUクラウドプラットフォームを通じて収益を得ています。
このプラットフォームは、GPUコンピューティングのための分散型マーケットプレイスを特徴としており、企業や個人にとってよりアクセスしやすい、手頃な価格となっています。また、プロビジョニング、監視、課金が自動化されており、ユーザーはオンデマンドでコンピューティング・パワーにアクセスできます。
さらに、「io.net」はベンチャーキャピタルの投資家から多額の資金を確保しており、事業と成長を支えています。
Q:現在の投資家やパートナーはどのような方々ですか?
最も有名な投資家には、Hack VC、Multicoin Capital、6th Man Ventures、Solana Ventures、OKX Ventures、Aptos Labs、Delphi Digital、The Sandboxなどが挙げらます。
Q:「io.net」に関するニュースや最新情報で、私たちに伝えたいことはありますか?
以下のような取り組みをしております。
◆イグニッション・プログラム
3月初めにイグニッション・プログラムを開始しました。アクティブ・ノード数は、前述の通り指数関数的に増加しています。
イグニッション・プログラムには、3種類の報酬プールがあり、以下を実施することでエアドロップを獲得することができます。
・ワーカーになってGPUリソースを供給する
・galxeでタスクを実施する
・Discordでコミュニティを盛り上げる
上記は個別の報酬プールになっているため、すべてにチャレンジすることもできます。また、ワーカーの貢献度が一番高いため、報酬プールも大きいですが、テストネットも終盤なため、もしも今から参加するのであれば、グラフィックボードを持っていれば参加するくらいで良いと思います。
なお、Discordのロールは10段階あり、2までは簡単に獲得することができます。
・ロール1:Solanaウォレットの提出
・ロール2:毎週水曜日に開催しているAMAに参加する
◆ドバイ・トークン2049
ドバイ・トークン2049に参加します。
◆週次AMA
毎週水曜日にディスコードでAMAを開催しています。
現時点では、多くのパートナーシップを公開できませんが、私たちのX/TwitterやGalxeをフォローして今後の最新ニュースにご期待ください。
KudasaiJPコミュニティからの質問
Q:「io.net」を使うことで、ユーザーはコストの何%程度の削減が期待できますか?
既存のクラウドソーシング・サービスでGPUを借りるより、8〜9割安く借りることができます。
コミュニティの有志が作成した比較表がありますが、これは参考資料で公式の発表ではないことにご留意ください。
Q:JPNINJAさんは、なぜ投資家側ではなく開発者側になったのですか?
運命です。
Q:10日ほどワーカーとして稼働させていますが、報酬はいまだに0であり、アイドル状態が続いています。この状態での実績はどのように見られているのでしょうか。
接続がしっかりできていれば、UIに表示されていなくても計算されているため、エアドロップの対象になっています。安心してください。前述の通り、想定を超えるノードが参加してくれたため、現状、ほとんどのワーカーがidle状態となっています。
Q:「io.net」は具体的にどういった企業が利用することを想定していますか?
AIスタートアップを想定していますが、現在興味をもってくれている、本番環境で利用したいと言ってくれている企業のすべてが、AI企業ではありません。必ずしも高性能なGPUが必要でない企業もあります。
Q:今後CPUでテストネットに参加することは可能になりますか?
今でも可能です。デバイス対応リストを参照ください。
Q:貸し出したGPUを悪用されることはありませんか?
貸し出した瞬間に暗号化されるため、悪用されることはありません。もちろん貸す側も暗号化されます。「io.net」は、サイバーセキュリティ・コンプライアンス・フレームワークであるSOC 2(Service Organization Control Type 2)を取得しており、業界標準を遵守している。
Q:今年はオフラインイベントに参加する予定はありますか?
「io.net」がイベントを開催する予定はあります。JPNinjaの参加については、可能性があるとしたらドバイのイベントになります。
Q:ディスコードでコツコツしすぎる(発言を続ける)とBANされますか?
どこのチャンネルで、何を発言するかによります。例えば、挨拶は挨拶用のチャンネルを用意しているため、会話をするためのチャンネルで意味のない発言をしていたりするとbanされるかもしれません。
Q:ワーカーの人が増えすぎるのは良いことですか? あまり良くないですか?
いいに決まっています!
Q:Discordのロール3以上を獲得するための条件を教えてください。
前述の通り、1-2は誰でも取得できます。3以上は特にルールがありません。この人こそコミュニティの重要なメンバーだと讃えられた人がもらえるものです。
そもそもDiscordのロールは、ワーカーをしたいがリソースがないため、何か貢献する方法が欲しいという要望を受けて設定したものです。そのため、自らコミュニティに貢献する方法を考えて実行し、それらがコミュニティの役に立っていると認められた場合に付与しています。
コミュニティ貢献の例をお話しすると、毎週水曜日に実施しているAMAの内容を参加できなかった人のためにテキストに起こしてくれた人にロールを付与しました。ただし、もうすでに実施してくれている人がいるため、同じことをしてもロールを付与することはできません。
現時点であれば、新しくワーカーになった人たちの質問に回答するなどで貢献できるのではないかと思います。
Q:独自トークンはステーキングできますか?
ここだけの話ですが、できます。詳しくはホワイトペーパーの公開をお待ちください。
Q:GPUパワーがある方が、ワーカーとして使われやすいですか?
現時点ではYesですが、サービス開始後の需要によります。AI以外の企業の需要が多ければGPUパワーはそんなに必要ないかもしれません。
Q:一風堂は好きですか?
近所に一風堂がないのですが、たまに食べに行きます。
Q:仮想通貨業界で生き抜く秘訣を教えてください。
お口と下半身のコンプライアンスは固めでいきましょう。口が軽いのは本当によくありません。
投資に関しては、売らなければ損じゃないので、「ガチホ」しましょう。
Q:Discordのロール10段階の最高位を持っている人はどのくらいいますか?
一人だけいます。「io.net」が出来上がっていく流れの中で貢献した、コミュニティというより、むしろかなりチームに近い人です。
Q:最後に参加者にメッセージをお願いします。
コミュニティイベント(クリエイティブコンテスト)を開始しました。
上位入賞者は、Discordのtier3ロールがもらえます。コミュニティへの貢献以外にロールをもらえるチャンスなので、ぜひご参加ください。
この記事について
スピーカー:JPNinja(Samurai) (日本コミュニティマネージャー)
司会進行:neko
実施日時:2024/4/9 22:00
会場:KudasaiJPテレグラムグループ / ツイッタースペース
「KudasaiJP」について
「KudasaiJP」は2020年に創設された暗号資産コミュニティ。DeFi、NFT、GameFiなどトレンドを重視した情報共有の場として活用され、2022年にはTwitterフォロワー7万人、テレグラムグループ2万人の日本最大級のグループに成長しました。2021年に日本語翻訳付きの質疑応答会を開始し、初期段階にある海外プロジェクトを中心にコミュニティに向けて紹介してきました。2024年時点で250件の実績がある唯一無二のグループです。KudasaiJPコアメンバーは全員がコミュニティ出身であり、KOL(Key Opinion Leader)、翻訳家、エンジニア、デザイナー、リサーチャーなど30人以上で構成されており、AMAのみならず、ブロックチェーンスタートアップの計画・開発からコミュニティ拡大まで、多面的な成長支援ソリューションを提供しています。
※本記事は2024年4月9日に、「KudasaiJP」で開催された「io.net」のAMA(Ask Me Anything)の内容を一部再編集したものです。
※この記事は一般的な情報の提供のみを目的として配信しているものであり、いかなる暗号資産、有価証券等の取得を勧誘するものではありません。また、当社及びKudasaiJP、インタビューイによる投資助言を目的としたものではありません。暗号資産投資にはリスクが伴います。投資を行う際はリスクを了承の上、ご自身の判断で行っていただくよう、お願い申し上げます。