東京で開催されていた「ADVERTISINGWEEK ASIA」5月30日の基調講演に、サッカー選手であり経営者でもある本田圭佑氏と大日方祐介氏が登壇したレポートをお届けします。
またラジオ版はこちらです、合わせてお楽しみください。
スピーカー
本田圭佑氏(サッカー選手・指導者、経営者、メルボルン・ビクトリーFC)
大日方祐介氏(Founder、NodeTokyo )
世界中の誰もが、夢を追い続けられる世界を作ることがミッション
大歓声の中登場した本田氏は「サッカー選手として紹介いただきましたが、今日はサッカー選手としてここにきたわけではないです。今僕はグループで活動しています。そのグループは140人ぐらいいて、今日はこのグループがどんなことをやろうとしているかを話そうと思います」と話し始めた。
まず本田氏が今回の発表に至るまでの経緯を説明した。
「僕のグループのミッションは『世界中の誰もが、夢を追い続けられる世界を作ること』です。
2008年にオランダにサッカーに挑戦に行った頃から、世界中の色々な国に行くことが増えたんです。そしてある貧しい国に行った時に物乞いをしている子供達に出会ったんです。それを見た時にそれまでサッカーしかしてこなかった僕ですが、何かしなければいけないと強く思ったんです。
それがきっかけでまずは子供達に夢を持ってもらうためにサッカースクールを作りました。でも貧しい子供達は幼少の頃から家計を支えるために働いているので、夢を追う余裕もない状況です。サッカースクールだけではダメだと思い、社会のために有意義な活動ができないかと、エンジェル投資をはじめました。
大企業ではなく、テクノロジーや志の高い起業家の、将来国に影響を与えるような企業に投資をして、間接的にも国を変えていきたいと思ったのです。個人でもすでに50社ぐらいに投資していますが、自分のお金だけだと限界があるので、昨年俳優のウィルスミスとVCを作って、そこでもすでに30社ぐらいに投資をしています。
そのような活動を通して、僕たちは挑戦したいひとをサポートしていきたいと思っています。」
ブロックチェーンの思想に共感
そして本田氏は「今後僕らがこのミッションを実現するためにいろいろなことをやっていますが、今回新しく挑戦したいプロジェクトがあってそれが『ブロックチェーン・ファンド』です」と発表した。
ブロックチェーン・ファンドを始めようと思った理由について本田氏は
「日本は通貨が安定しているからわからないですが、自国の通貨が信用できない国は世界中にたくさんある。例えばカンボジアは自国の通貨よりもドルの方が信用があり流通しているような状況だ。そういう問題を僕は解決したいと思っている。
ブロックチェーンと聞いたら(仮想通貨と連想し)投機的なイメージとか、良いイメージがない人が多いと思いますが、そうではなく、ブロックチェーンのポイントは分散型であるということで、だれにも支配されていないということなんです。僕はそのブロックチェーンの思想に共感しました」
そして本田氏は「ブロックチェーンの思想に共感しているけれども、実は全然ノウハウがない」と話し、だからこそ「1年前から勉強しながら仲間を探し、その人とパートナーシップを組んでブロックチェーン・ファンドを立ち上げることにしました」と大日方氏を壇上に迎え入れた。
壇上に上がった大日方氏は「みなさん本田さんの話を聞きに来て、いきなりブロックチェーンの話になったので、一万円払うのでブロックチェーンの話をしてもいいですか?」と本田氏の昨日のツイートを連想させる挨拶で会場の笑いを誘った。
登壇した大日方氏に対して本田氏は「たぶんすごく多くの人がブロックチェーンとか仮想通貨を誤解していて、言葉を選ばず言えば、金を稼ぎたい人たちがどんどん参入してきて訳のわからないトークンを発行してということが溢れてしまって誤解が広がっている。でもベースになっているビットコインやイーサリアムの思想は、もちろん技術もこれからだし、ベイビーのフェイズだけど本当に未来なんですよ」と思いを語った。
そこから大日方氏が会場に向けて現在のブロックチェーン業界の状況を話した。取引所やテック系に関わらない大手企業の実証実験の状況、メディアの状況、スタートアップやイベントの状況など、日本国内でも様々なプレイヤーが参入して盛り上がりを見せる現在の状況を説明した。
大日方氏の説明を聞き本田氏はブロックチェーンについて「ブロックチェーンは出遅れたら取り返しのつかないスピードで動いていると思う。いろいろな専門家と話しても、みんな今のブロックチェーンこの雰囲気がインターネットの出てきたときと似ていると言っています。だからこそ本当に思想を持ってみんなが夢を追いつづけられるような環境作りをしたいということで、ブロックチェーン・ファンドをやりたいと思った」と語った
ブロックチェーンは日本にとってチャンス
また本田氏からの「今ブロックチェーンに一番ホットな国は?」という質問に対し大日方氏は「開発だとシリコンバレーはやはり強いですが、ヨーロッパではドイツのベルリンは大きなコニュニティができているし、そしてアジアでは日本や韓国、シンガポールが盛り上がっている」と話した。
そして「これまでのスタートアップの世界だとシリコンバレーが世界の中心だった。けれど、ブロックチェーンの業界では日本が法律なども世界に先行して整備が進んでいて、注目を集めているのでチャンスがある」と語った。
本田氏はチャンスがあることに対して「ただ今まで日本のベンチャー投資もしてきて、日本の起業家はまだまだ意識が低いと感じている」と話した。「僕がサッカーの日本代表で飯を食ってるときに新しくチームに召集された若い選手がきたときと同じで、ギラギラ感がない」と話した。
「たったの1億2千万人ですよ、それが日本で社会問題になっているように減っていっていて今後の労働力どうするんだとか、みんなでてんやわんやしていますけど、でも世界の人口は増えていて76億人などと言われています。」
「ここを意識しているか、していないかだと思う。それを意識するかどうかで成果は天と地の差になると思っている」と語った。
本田氏は「挑戦しないと人生一回じゃないですか。僕より年配のひとがいっぱいいるなかでこんなことをいうのもおこがましいけれど、もう一回やり始めればいい、自分を変えるのは今日からできる」と話し、そして
「ポイントはサッカーと同じ。僕はもっと大きいことをしようとしていて、そのミッションを達成するにはもっと仲間は必要だ」と話した。
そして最後に会場に向かって「ミッションが近ければ何かできると思っていますので仲間は絶賛大募集です!どこかで一緒に仕事ができればと思っています」と呼びかけた。
サッカー×ブロックチェーンのプロジェクトをやるとしたら?
またイベントの終了間際に取材に来ていた「あたらしい経済」編集部は、会場で本田氏に質問をした。
「去年はサッカーチームのパリ・サンジェルマンがブロックチェーンを導入したりしたニュースがありました。本田さんがサッカー×ブロックチェーンのプロジェクトで、こういうことが出来るのでないかとイメージすることがあれば教えてください。」
それに対して本田氏は「これは実際にやると公約しているわけではなく、あくまでイメージなので誤解をしてほしくないんですが。例えばサッカークラブを分散型で経営したいと思っています」
「ファンってクラブのオーナーになれないのが、すごくおかしいと以前から思っていた。ファンは年間パスとか買って、グッズ買って、むしろ考え方によれば、オーナーよりもオーナーになりたいんではないかと思って。ファンにはオーナーよりパッションある人多いんですよ。でも、みんなオーナーじゃなくて、今はただの消費者なんですよね。」
「でもそれをトークンを保有することで、いわゆるオーナーシップにそれが変わって、そのオーナーシップでクラブの意思決定を投票によって、コミットできる。そんなブロックチェーンの技術が、スポーツクラブ経営とかサッカーとかだけじゃなくバスケやラグビーなど、いろいろなクラブがそういう風な経営スタイルに変えていける未来がくるんじゃないかなとか思っています。やるかわかんないですけど。」と熱く語ってくれた。
まだまだ誤解が多く、認知も広がっていないブロックチェーン業界。ただこのイベントで本田さんが語ってくれたように、それは本当にいろいろな現在の社会問題を解決する可能性のある「未来の技術」である。
本田さんがブロックチェーン業界に参入するということは、大袈裟でなく日本のブロックチェーン業界にとっても大きなフェイズの転換になるかもしれない、そう感じた。
今後もどんどんと素晴らしいプロジェクトを世に出して、ブロックチェーン業界日本が世界で戦っていけるようにを盛り上げていってくれることを期待したい。
(取材編集:設楽悠介/竹田匡弘 写真:大津賀新也)